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2013.1.29
シェアハウスという“住まい”の選択肢。
「安く住む」ではなく、“そこでなにができるか”-。

理想の暮らしに近づける!?
シェアハウスという可能性

近年、個人や家族の住まいのあり方は非常に多様化しています。ひとくくりにはできませんが、家族の持ち家、賃貸/分譲マンション・アパート以外に、家族以外の人と共有するシェアハウスや、複数の入居希望者が組織を作って建設から関わるコーポラティブハウスといったスタイルが誕生しており、「こんな暮らし方があるんだ」といった、新しい住まいの形があります。


今回は、20代前半を中心とした若い人の間で増えている「シェアハウス」にフォーカスし、若者たちの実際の暮らしぶりや「住まい」に対する考え方について読み解いていきます。

まずは、住まいに関するこんなデータをご紹介します。
2012年に実施した「サラリーマンのお小遣い調査」の中で聞いた、「現在の月々の住宅費」と、「理想の月々の住宅費」に関する質問です。

条件:全国の男性サラリーマン20代∼50代329名 居住形態は賃貸住宅


これを見ると、20代から50代の男性サラリーマンにおける現実の住宅費は、平均65,909円、理想の住宅費は平均52,438円と理想額が低くなっており、住宅費を節約したいという意向が表れています。


ところが、20代から30代の未婚の男女では、全く逆の結果となりました。

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条件:全国の男女(会社員、パート・アルバイト)20∼30代の独身(子供なし)434名 居住形態は賃貸住宅


20代から30代の独身男女における現実の平均家賃は40,478円、それに対して理想の家賃は54,076円。理想が現実より1万円以上も高くなりました。
この背景として、“実際の生活は苦しい”というデータもあります。同調査の「お小遣いにおける日常生活のゆとり実感」に対する質問では、20代から30代のパート・アルバイト層は、男性は71.5%、女性は67.7%が「苦しい」と答え、サラリーマン全体平均の58.5%を大きく上回っているのです。
つまり、生活は苦しいという現実がありながらも、20代から30代の若者を中心に、「もっといいところに住みたい」というニーズがあるようです。


そこで、今回注目したのが「シェアハウス」という生活スタイルです。
一般的にシェアハウスとは集合住宅の一種で、複数の人がそれぞれ個室を持ちながら、キッチンやリビングルーム、バスルーム、トイレなどの設備を共有する住宅のことを指します。

近年、雑誌などでたびたびシェアハウス特集が組まれたり、マンガやテレビ番組でもシェアハウスの設定が描かれていたりと、シェアハウスは十数年前に比べるとずいぶん馴染み深い言葉になりました。


それに伴い、一人では家賃が高くて住めないような広くてきれいな物件でも、「みんなで家賃を出し合って住まいをシェアしよう」というこのスタイルを、ひとつの選択肢として考える若者は多くなってきたのではないでしょうか。


実際に、若者のシェアハウス事情を探るため、シェアハウスプロデューサーである小原憲太郎さんにお話を伺いました。小原さんは「コリッシュ」というウェブサービスを展開している、若手の起業家です。コリッシュとは、同居人を“特定のコンセプト”に基づいてウェブサイトで呼びかけ、シェアハウスに住みたい人たち同士がつながれるウェブサイトで、20代の若者を中心に、利用者が増えています。

シェアハウスは時代とともに進化。
求めるものは、「安さ」という合理的なものから「コンセプト」へ-

シェアハウスは個人から業者が行うものまで多くありますが、事業者が行なっているシェアハウスは、ゲストハウスと呼ばれていたものの流れを汲んでいます。中短期滞在者を中心とし、「安くても汚い」というイメージや、外国人や留学生が住むといったイメージもあったようです。また、数年前までは、ルームシェアとして、数名の友人同士が家賃を安く抑えたいために一緒に住むという形態が一般的であったように思います。ところが今の若者のシェアハウス事情は全く異なるようです。小原さんは次のように話します。


「シェアハウス自体は昔からありましたが、昨今、シェアハウスの定義がかなり広がっています。どこからどこまでシェアハウスと位置づけるかにもよりますが、徐々に増えてきていることは確かですね。シェアハウス用に大きめの物件を建てる不動産業者も増えています。


日本におけるシェアハウスは、もともと若者から発信した文化です。感度の高い若者たちが、『シェアハウスってどんな感じなのだろう』と思って住み始めました。大学生や新卒生など、20代前半が中心だったと思います。最初の動機はやはり、『都心に住むのに、家賃が高すぎるからみんなで住もうよ』という合理的なものだったと思います。しかし、個人単位でシェアハウスに住む人が徐々に増えてきて、『どうせ住むんだったらなにか面白いことやろうよ』という人たちが出てきました。例えば、『トーキョーよるヒルズ』(*)というシェアハウスを主宰している高木新平さんという方は、家をメディア化しました。家は、誰にでもオープンな場所として、イベントや会議、夜な夜な語り合う飲み会などをする、アクティブに活動する若者が集う場所になりました。
シェアしている住居人以外のたくさんの人が集う内に、著名人の方も遊びに来て、USTREAMの放送企画などにまで発展していました。」
(*2013年1月25日現在では、一旦解散して、別の場所に移転予定。)

「私たちはこうして暮らしている」。
コンセプトのある、若者のシェアハウス

では、若者はどのようなシェアハウスのスタイルを求めているのでしょうか?コリッシュで実現したシェアハウスとともに、今のトレンドを伺いました。


「コリッシュで多いのは、IT系のコンセプトを掲げる人たちですね。例えば、『プログラミングを学び合おう』といったものや、『新しいウェブサービスを立ち上げよう! じゃあエンジニアとデザイナーとマーケットが得意な人を集めて、シェアハウスの住居人で起業してしまおう』という感じですね。あとは、海外の旅行者(カウチサーファー)をどんどん受け入れるシェアハウスもあります。安く泊まりたい、交流したい、という旅行者が来ては、宿泊していくんですね。あるシェアハウスでは、過去に何十人も迎え入れていて、ホストである住居人たちは、半年くらいで英語が話せるようになっていました。
また、『コワーキングスペース』を設けているシェアハウスもあります。コワーキングとは、個々はそれぞれが各自の仕事をしながら、オフィスを共用して働くスタイルのことです。コワーキング型のシェアハウスでは、オフィスを借りる代わりに住まいを共有し、みんなそれぞれバラバラの仕事をしながらも、すぐ隣に知り合いがいるから、『こんな仕事があるんだけど』、『○○について詳しい人いる?』といった具合に、自分の仕事のヒントになる情報が聞けるというメリットがあります。今までは、フリーランスの人しか味わえなかった仕事のスタイルが同居人と実現できることから、より濃い関係のコミュニティになる可能性もあります。そして企業勤めの人も、家にいながらにして、コワーキングのメリットを享受出来るようになことも面白いと思ってます。」


「安く借りる」ではなく、「コンセプトありき」の住まい。実はほかにも、夢や職種、趣味などの志向が近い人が集うシェアハウスや、そうした物件を紹介している機関があります。いくつかの事例を見ていきましょう。

コネクトハウス

“起業家育成型シェアハウス”と銘打った、新しいスタイルを提案。例えば「コネクトハウス池上」は、「食のプロを育成する」というコンセプトのもと、将来食に関連したビジネスをしたい人を集めたシェアハウスを展開。フードビジネスを行っている人や飲食店の経営者を講師として招いたり、将来事業を行う時に役に立つような経営スキルを磨くためのビジネスレクチャーを入居者向けに無料で定期開催したりしています。また、「コネクトハウス久が原」では、「映像クリエイターが集まるシェアハウス」として、映像試写会を開くなど、若きクリエイターたちが普段から切磋琢磨してお互いを高められる環境を作り出しています。

トキワ荘プロジェクト

NPO法人NEWVERYが運営している、現代版の“トキワ荘”。トキワ荘とは、かつて東京都豊島区に実在したアパートで、手塚治虫や藤子不二雄といった著名漫画家たちが漫画を描きながら生計を立てる上で、お互いに助け合ったりしのぎを削ったりしていました。このトキワ荘プロジェクトでは、有望な漫画家を育てようという目的のもと、漫画家志望の若者を応援。シェアハウス物件を提供しており、有名な漫画家を招いてのセミナーなどを行っています。

元麻布農園レジデンス

高級住宅街、東京・元麻布にある、農園とシェアハウス、農家の方が一体になった、ユニークなシェアハウス。2011年7月にオープンし、農家の方を招いてさまざまな講座を開催。一般の方も参加可能な「農家と作る有機野菜講座」では、住人たちと一緒に一般の方も参加し、農家の方から野菜の育て方を教わり、育てた野菜で料理を作って食の大切さに触れたりしています。「職場に近い都心生活」と「いつも土と食を感じられる暮らし」を両立した、貴重な空間です。

こうした事例を見ると、住まいに対して「+αの価値」を求めてつくられたシェアハウスがたくさんあることがよくわかります。ほぼ、仕事=住まいだったり、そこで暮らすうちに自然に勉強ができたり、という住まいの形が成立しているのです。現在、「シェアハウスは、手段として捉えている人と、目的ありきで捉えている人の二極化が進んでいる」と小原さんは語ります。以前は「都内の“いいところ”に住みたいけど、ひとりでは経済的に厳しいからシェアする」という、手段として住まいを共有ケースが多かったようですが、最近は「みんなで借りたシェアハウスのこの空間を使って、さぁなにをしよう」という、目的として住まいを共有するケースへとシフトしつつあるようです。

シェアハウスに見る、現代の若者像とは

こうしたシェアハウスで暮らしている人たちは、中には30代や40代の人もいますが、基本的には20代前半の若者が多いとか。果たしてシェアハウスに住む若者たちの人物像はいかに?どのような考えを持っている人が多いのでしょうか。
「コリッシュの利用者でいえば、やはり男性が多いですね。シェアハウスというと、一般的に女性は警戒するためだと思いますが、2011年時点では男性が約75%と圧倒的でした。今は男性が66%ほどで、徐々に女性にも浸透してきています。今の20代前半の若者についてですが、人との距離のとり方とか、人への配慮の仕方がうまい人が多いように感じます。ほかの世代とは明らかに違います。特に20、21歳くらいの人は仲間意識が強い。仲間の定義が私たちとは違うんじゃないかというくらい、関係が密接です。破天荒な人は少ないけど、男性も女性もみんな平等に仲間としてみなし、絆を大事にする感性を持っていると思います。」

若者が築いてきたシェアハウス。今後のカタチとは-

シェアハウスは、もともとアメリカ、オーストラリア、イギリスなど欧米で進んだ文化で、ニューヨークでは大学生の50∼60%、カリフォルニアでは70%がシェアハウスを経験している、といわれているほど。海外ではハイスクールを出たら親元を離れる文化があり、若者は資金を持っていないため、「ルームメイトを見つけてシェアハウスしよう」という流れになるそうです。日本も経済状況に明るい兆しが見られない中、若い人は特に生活が苦しいという時代。必要に迫られてシェアハウスを選択する人も、今後はますます増えるかもしれません。シェアハウスの役割や、シェアハウスに対するニーズは今後どのように変化するのでしょうか。


「シェアハウスを考える際に、『どんな家に住みたいか』にフォーカスするのもいいですが、やはり、物件の価値だけでなく『体験の価値』を考えてほしいですね。そして今後は、大家や不動産業者をはじめとした業者側も、コンセプトの中に『学び、成長、楽しさ』があるシェアハウスのスタイルを提案していってほしいです。
すでにいくつか事例はありますが、個人的には、子育て世代を対象にしたシェアハウスを作りたいと思っています。両親だけが育てるのではなく、基本的にマンションみたいな感じで、『ちょっとだけウチの子の面倒を見てて、お願い!』なんて断って急ぎの用事に出ていくとか、助け合える環境が理想です。知り合いのシェアハウスでは、7、8人でシェアして暮らしていて、そのうちの1組の夫婦に子供ができた、という例があります。両親が仕事で幼稚園にお迎えに行けなかったら、同居人の誰かが迎えに行くんですが、実は、面倒を見る側もそれを楽しんでいるようです。自分に子供ができたときに絶対この経験は生かせますし、素敵だと思いませんか?」


きっと、映画『ALWAYS三丁目の夕日』のような世界。昔はごく当たり前だった“向こう三軒両隣”のスタイルが、今後再び当たり前の暮らしになる日がくるかもしれません。


「シェアハウスが広く浸透するにはまだ2∼3年の年月が必要だと思います。でも、仲間意識を大切にする傾向がある今の若者たちがシェアハウスを積極的に利用していけば、全体の市場としては現状の5∼10倍くらいのポテンシャルはあるはずです。これからますますシェアハウスは広がっていきますよ!」と小原さん。


誰と、どんな風に住むか?を考えた、“人が主”となる住まい。若者たちが築く未来は、趣味が合い、同じ夢を持つ人と暮らしたいと考えることが当たり前になっていくのかもしれません。東日本大震災以降、家族の絆、人々との絆を強めようという意識が、私たちの中で自然と強くなったようにも思います。「人とどこかでつながっている」ということが、これからの暮らしのキーワードになるのではないでしょうか。


小原憲太郎(おはら・けんたろう)
Profile
コリッシュ代表/シェアハウスプロデューサー。1983年、神奈川県生まれ。立命館大学政策科学部在籍中に、環境問題やIT関連の仕事に関心を持つ。大学卒業後、友人と共に起業。その後、株式会社インデックスへ転職し、モバイルソリューションなどに携わる。2011年にシェアハウスサービス「コリッシュ」を立ち上げ、代表を務める。
コリッシュ

本稿は新生銀行が2012年4月に実施した「サラリーマンのお小遣い調査」の調査結果や2012年9月に発表した「サラリーマンのお小遣い調査30年白書」などに基づいて作成したものであり、調査結果の分析については、一部推定による内容を含んでいます。本稿は情報提供を目的に、信頼できると思われる情報に基づいて新生銀行が作成しておりますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。本稿の内容は作成時点のものであり、予告無く変更する場合があります。