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2013.3.28
若者世代のコミュニケーション
新・三種の神器とは?

コミュニケーションはツールも相手も“使い分ける”世代

40年前、バブル世代が若者だった時代のコミュニケーション手段は、直接会うか、手紙を出す、固定電話で話すしかありませんでした。しかし、現在では携帯電話やインターネットを利用したコミュニケーションツールが増え、選択肢が広がっています。2012年の「サラリーマンのお小遣い調査」で、最も好きなコミュニケーション手段について聞いたところ、20代では「直接会う」が「携帯メール」でのコミュニケーションに続き2番目に高い結果となりました。子どものときからパソコンや携帯電話が身近に存在し、バーチャルなやり取りに慣れた世代。だからと言って、「今の若者はバーチャルが好きで、直接会わない」ということではないようです。


(条件:全国の男女(会社員、パート・アルバイト)20代782名が対象。他人へのコミュニケーション手段として最も好きなものを単一回答。)

「直接会う」と「携帯メール」。異質に見えるこのふたつが上位に並んだ理由について、「草食系男子」や「おゆとりさま(ゆとり教育を受けて育った、現18歳〜25歳とその前後の世代)」などのマーケティングに詳しい牛窪恵さんは、「理由は、ふたつ考えられます。」と分析します。


「ひとつめは、彼らはメディアとの接触に慣れている世代だということ。mixi(ミクシィ)が新鮮で人気だった数年前であればSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の利用が最も多かったかもしれませんが、複数のメディアを使いこなしている人たちにとってSNSやメールなどは“新鮮なツール”ではなく、すでに“当たり前”のものなのです。今はむしろ直接会うことに、『自分のために時間を割いてくれる』、『メールやSNSの“お義理”の関係とは違う』、『つながっている実感を得やすい』といった価値を感じている人も多いと考えられます。」


こうした事情を踏まえると、この調査結果は、単に「ツールの新鮮さ・おもしろさ」ではなく、「コミュニケーションの質」の好みが反映されていると考えられます。
例えば、直接会うことで絆やつながりを実感したい人や、時間に余裕があって“まったりした空気”を楽しむことが最も好きな人は「直接会う」、短時間で特定の相手とのやり取りを最も好む人は「メール」、多くの人とのつながりや情報交換を最も好む人は「SNS」を選んでいる、といった推測ができるかもしれません。


もうひとつの理由として、牛窪さんは、「このデータが独身・既婚、正社員・パートなど、さまざまなライフスタイルの人たちの総合値である」ことに着目しています。


「例えば育児中のママなら、忙しい合間を縫ってママ友とメールで情報交換を行い、両親に子どもの写真を送る、独身男性なら、通勤電車で趣味の仲間とのSNSコミュニティを楽しむなど、ライフスタイルによって最も便利なツールを選んでいることが考えられます。さらに、働き方や業種によってもツールの選択が変わります。例えば職場で人とつながる機会が少ない人は、友人と直接会うことで安心感を得ているかもしれません。一方で、サービス業の人は友人と休日が違ったりシフトがあったりして、直接会う時間が作りにくいことがあります。そうなるとFacebookで『いいね!』を押してもらうことで自己承認欲求を満たすとか、リアルタイムで加われなくてもみんなのやりとりを知って安心する、ということもあるでしょう。」


牛窪さんの分析によれば、特に20代前半の「おゆとりさま」は、「使い分け」に長けているそう。上述の調査結果は、最も好きなコミュニケーション手段を選択肢からひとつ選ぶ調査設計となっていますが、どれも賢く使い分けていることが想像されます。ワイワイ話すには無料通話・メールのアプリであるLINE、1対1の大事な話はメールなど、人や状況によって最もふさわしいツールを、その都度選択しているのです。さらに、この世代の「使い分け」はツールだけにとどまらないようです。


「おゆとりさまは、友達も使い分けるのが特徴です。彼氏や彼女がいても、その人にすべては求めません。ひとりの人にすべてを求めるのは『重い、ウザイと思われそう』という感覚があり、『ファッションならこの人と話す』、『サッカーの話はこの人』と、話題によって相手を変えるのです。」


ツールの進化に伴うコミュニケーションの質や選択の多様化が、ツールも相手も賢く「使い分ける」世代の誕生を後押ししたと言えるかもしれません。

“新・三種の神器”は
「ケータイ・ファッション・話題性」

若者のコミュニケーションツールに視点を広げてみましょう。 かつてのコミュニケーションにおいて、社会人の三種の神器は「酒・麻雀・ゴルフ」という時代もありましたが、現代の若者に絞って「新・三種の神器」と定義するならば、何になるでしょうか。


「まずは、『ケータイ』、つまりスマートフォンを含む携帯電話ですね。20代半ばくらいから『アラサー』と呼ばれる世代は、ケータイを手足のように使いこなします。気持ちの表現でもケータイメールを使いますから、会社を休むときに、会社の上司が『なんで電話しないでメールなんだ!』と怒っても、『なんでメールじゃダメなの?』と思う。彼らにしてみれば、電話で上司の時間を取るのは申し訳ないから、気を遣ってメールを選んでいるわけです。それが習慣だし、本人に悪気はありません。」


「ふたつめは『ファッション』。彼らより上の世代から見ると『なんでそんなに身だしなみに時間をかけるの?』と感じますが、若者世代はそれによって自信を持ちたいのです。彼らにとって、ファッション=アイデンティティ。自己表現ツールであり、自分自身の大事な部分なのです。会話のきっかけは『今日キマってんじゃん』、『それユニクロなの?(そうは)見えないね』などがマナー。いきなり政治ニュースなどを持ち出せば『空気読めないやつ』、『面白くないやつ』とレッテルを貼られてしまうリスクもあります。」


彼らより上の世代では、ファッションがコミュニケーションのきっかけになるのは、女性同士に多く見られること。若い世代では、それが男性にも広がっているのが特徴で、ファッションがコミュニケーションにおいて、より大きな存在感を持っていることがわかります。


「みっつめは『話題』。彼らは消費には興味が薄く、物欲が非常に弱い世代です。でも、コミュニケーション欲は強い。対話で安心感を得たり、みんなと盛り上がれたりすることを大切にします。ですから、場を盛り上げるツールとしての『話題性』が重要です。そのネタは『グルメ』よりも『B級グルメ』がベター。『こんなにおいしいもの食べたんだ』、『へえ、おいしそう』という会話よりも、『こんな変なもの食べました』で、『何それ』、『意外においしそう』などとみんながツッコんで盛り上がっていくのを楽しみます。 また、1971年から1976年ごろに生まれた団塊ジュニアとそれより上の男性は『おすすめの店は教えたくない。自分のものにしておきたい』と考える傾向が強いのですが、若い男性はみんなに『いいね!』と言われたいから話題として提供するという傾向も見られます。」


「ゴルフがうまくて、隠れ家的ないい店を知っている男性」よりも、「ツッコミやすい持ちネタが多い男性」のほうが人気者になれる世代。金銭感覚やおもしろさの価値観が近い仲間のあいだで、新・三種の神器を使った「盛り上がるコミュニケーション」を好む世代と言えるでしょう。


牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)

Profile
世代・トレンド評論家。マーケティングライター。 (有)インフィニティ代表取締役。財務省財政制度等審議会専門委員。経産省「おもてなし大賞」選考委員。日経新聞MJ広告賞選考委員。 1968年東京生まれ。日大芸術学部 映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。5年間の編集及びPR担当の経験を経て、フリーライターとして独立。2001年4月、マーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。現在、『日経ウーマンオンライン』『プレジデント』『AERA』ほかに連載、または定期寄稿中。得意分野は、トレンド、マーケティング、世代論、小売流通、ホテル、旅行関連。積水ハウス(株)と2社で結成した「これからの家族を考える会」の代表も兼務。トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。NHK総合「サキどり↑」、朝日放送「キャスト」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」ほかでコメンテーター等を務める。

本稿は新生銀行が2012年4月に実施した「サラリーマンのお小遣い調査」の調査結果や2012年9月に発表した「サラリーマンのお小遣い調査30年白書」などに基づいて作成したものであり、調査結果の分析については、一部推定による内容を含んでいます。本稿は情報提供を目的に、信頼できると思われる情報に基づいて新生銀行が作成しておりますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。本稿の内容は作成時点のものであり、予告無く変更する場合があります。