特集:社外取締役、社長のガバナンス対談

新生銀行のコーポレート・ガバナンスについて、野村證券株式会社の銀行セクターアナリストである、高宮健氏をモデレーターに、社外取締役であるアーネスト M. 比嘉氏と、当行代表取締役社長の工藤英之および当行相談役(前代表取締役社長)の当麻茂樹とのグループ対談を実施しました。(平成27年4月対談実施)

特集:社外取締役、社長のガバナンス対談

左から

当麻 茂樹
新生銀行 相談役
工藤 英之
新生銀行 代表取締役社長
高宮 健(モデレーター)
野村證券株式会社 銀行セクターアナリスト
アーネスト M. 比嘉
新生銀行 社外取締役

高宮:最近はバーゼルなどの規制の議論の中でも、リスクアペタイトフレームワークの考え方が取り上げられてきており、ガバナンスの核として、取るべきではないリスクは取らない一方で、取るべきリスク、銀行として手掛ける事業については積極的に背中を押すという機能も、取締役会には求められていると思います。当麻さん、工藤さんから見て、社外取締役から背中を押された経験はありますか。

当麻:個別案件について取れるリスク、取れないリスクを議論するのではなく、どういう分野でリスクを取るのか、どういう銀行になっていくのかという視座から、取れるリスクや取れないリスクを判断する基準を考えることが重要です。また、従来の感覚では取れないリスクだけれども、取るべきリスクもある。その逆で、従来は取れるリスクだけれども、取ってはいけないリスクもある。こういった課題に思いを馳せ、健全なリスクテイクの文化を育むことが、日本の商業銀行には必要です。そして、その健全なリスクテイクの文化を社員に浸透させていくことが大事です。健全なリスクテイクの判断基準のひとつの例としては、信号機プロジェクトがあります。これは不動産などの市況循環的な事業において、現在の市況が信号機でいう青か、赤か、あるいは黄色かまず議論したうえで、その事業全体の取り組み姿勢を少し前向きにするのか、後ろ向きにするのかを決めて、個別判断に結び付けていくというもので、リスクテイクの判断基準として有効だと思います。

工藤:そもそもリスクを取るということと、何かのビジネスを推進するということは、同じものの表と裏の関係です。当行として、この分野で積極的にリスクを取っていいのではないかという議論は取締役会の中でも当然ありますし、こうした議論はしていかなくてはならないと思います。

高宮:社外取締役として、新生銀行の戦略的な強みをどのようにして株主・投資家にアピールしていこうとお考えでしょうか。逆に、新生銀行の課題は何でしょうか。

比嘉:銀行業界の競争が激しい中で、差別化した戦略が非常に重要です。例えば、新生銀行はどの銀行よりも早くインターネットバンキングを始め、先駆的なイメージができ上がっていることは強みですので、そこの差別化度合いを高めるべきです。ビッグデータと分析をフロントオフィスで活用して、差別化やビジネス成長につなげることを検討してもいいかもしれません。一方、海外でのバンキングや商品開発などについてはまだまだ課題があると思います。

当麻:強みと弱みは裏腹です。例えば当行の規模は小さいですが、今のように変わろうとしている世の中では、新しい分野や商品・サービスへの取り組みを非常に早くすることが可能であるという点で、非常に大きな強みだと思います。一方、課題もあります。ひとつは公的資金の問題、もうひとつはリスクテイクです。リスクテイクについては、与信対象とするビジネスが、世の中を先取りする産業、商品・サービスになるかどうかをいかに見極めるか。そのためには、産業の趨勢、規制、技術そのものを見ていかなければなりません。担保が100万円あるから100万円貸します、という世界ではありません。世の中を先取りする産業、商品・サービスは、たとえ小さいところであっても、成長するにつれて、グローバル化してマーケット規模も大きくなっていくので、成功のリターンも大きくなっていきます。そういったものを先取りする目を、実際の事業や研修を通じて、社内に浸透させています。

工藤:我々はユニバーサルサービスを世の中全員にあまねく均一に提供するのではなく、世の中の課題やニーズを我々なりに絞り込んで、いくつかビジネスの柱を構築していく。その作り込みの中で、当行が有する特質を上手く強みに活かしていこうと思っています。例えば、以前担当していたストラクチャードファイナンスの世界でいえば、キャッシュフローファイナンスやアセットファイナンスなど、一般的なコーポレートファイナンスとは違う切り口で案件の価値を見て、ファイナンスを実行してきました。この手法はさまざまな分野で活用でき、国内ではこれまでなかなか根付かなかったプロジェクトファイナンスについても、再生可能エネルギー分野において急速に広がっていますが、我々なりに先鞭をつけたのではないかと思います。また、当行のリテールやコンシューマーファイナンスの事業は、それぞれ違う経緯で始まりましたが、その相互作用をもっと活かして、もう少し面白いことができるのではないかと思います。ものすごく特殊な思いつきが必要というわけではなく、多くの人に大事な分野だと言っていただいているリテールやコンシューマー関連のビジネスの中に、さらにもっと絞り込んだかたちで我々なりの強みを活かせる部分があるはずです。具体的な戦略は第三次中期経営計画に盛り込んでいくことになりますが、真剣な議論を繰り返し、弱みを強みに転換できるような大きな柱をいくつか作っていきたいと思います。

高宮:比嘉さんから見て、新生銀行がフロントランナーであり続けるために、先取りする目を持つこと、そのために会社組織として、あるいは個々のビジネスパーソンとして何をしなければならないか、アドバイスいただけることはありますか。

比嘉:グローバルで銀行業務ができるような体制になればよいと思います。取締役会では、メガバンクではなく新生銀行にできることは何かということをいつも考えて議論しています。一番大きなチャンスはグローバル化の波に乗るということです。そして、その素地はすでにあると思います。なぜなら、新生銀行では取締役会のすべての議論が日英同時通訳され、資料もすべて日英が揃っているので、外国人の社外取締役であってもすんなり議論に参加でき、取締役会の多様性を確保することができるからです。

高宮:コーポレート・ガバナンスにおける非常に重要なテーマとして、経営陣の交代があります。当麻さんから工藤さんへの社長交代について、取締役会が果たした役割について教えてください。

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