特集: 社長 × 社外取締役対談

ステークホルダーにとって魅力ある企業となるためには

「ステークホルダーにとって魅力ある企業となるためには」というテーマで、銀行業界の展望や新生銀行グループのポジショニングを踏まえた、中長期視点での企業価値向上について、ドイツ証券株式会社の銀行セクターアナリストである山田能伸氏をモデレーターに、金融および国内外での経験が豊富な当行社外取締役の槇原純氏と、当行代表取締役社長の工藤英之による対談を行いました。

特集: 社長対談 グループ融合

上段左から

山田 能伸(モデレーター)
ドイツ証券株式会社 株式調査部 シニアアナリスト マネージング ディレクター
工藤 英之
新生銀行 代表取締役社長
槇原 純
株式会社新生銀行 社外取締役

新生銀行グループが、中長期的企業価値を実現していくうえでの課題、取り組むべきこと

山田:そういった銀行の将来像に対して、新生銀行グループとして、将来を見据え、企業価値を上げるためにやるべきこと、やらなければいけないこと、あるいは、そのリスクについてどのようにお考えになっているか教えてください。

工藤:槇原さんが触れられたことにも関係しますが、サービスをお客さまとのインターフェースの部分と、その後ろのオペ レーションの部分とに分けると、オペレー ションは徹底的に生産性を上げるしかないですね。そこに活用できるテクノロジーは、何でも使うということになると思います。
一方で、お客さまとの接点の部分のつくり込みの仕方、これはお客さまにどう付加価値を感じてもらえるかというデザインそのものですが、そこには日本独自の工夫 が必要だと思っています。
我々にとって必ずしも必須ではないと思っているのは、例えばブロックチェーンのような基礎技術は、間違いなく金融ビジネスにも入ってくると思うものの、一人で頑張ってやるぞという話ではない。それが事実上の標準仕様になってきたのであれば、当然のように取り込んでいくということは想定しています。ただし、それは、我々が率先して技術開発するものでもないだ ろうと考えています。
漠然とフィンテックと一口で言っても、本当に我々自身で注力しなければいけな いものか、世の中にきちんとついていけ ればいいものか、というのは分けて考え ようとしています。やはりお客さまのインターフェースのところに力を集中していきたいと考えています。

山田:AI(人工知能)やフィンテックの使い方については、世界中の金融機関が同じような方向に向く中で、新生銀行グループの特徴、強み、他行との差別化はどのようにお考えになっていますか。

工藤:技術そのものは、どの金融機関でも入手可能なものになると思います。取り込んだことがアピールになるのは初期だけで、その差別化はそれ程持続するものではないと思います。最終的には、それを使ってどういう商品やサービスを提供するのですか、というところになっていくわけです。私としては2つの切り口を考えています。
ひとつは、そもそも今の業態区分が必ずしも消費者の方を向いたものになっていない。銀行があり、カード会社があり、それぞれに規制が存在する世界は、まず間違いなく崩れていくだろう。顧客本意ということを考えると、今の業態のあり方はおかしいはずです。我々としては、業態の垣 根が崩れて、お客さまからみてより統合されたサービスを提供されるのが自然というものを先取りしていく。ここは、他社にはなかなか簡単にはまねができないと思っ ています。というのは、競合相手はすでに 一社一社の規模が大きいものですから、いうほど簡単ではない。今、我々の中でいろいろ進めていますけれども、我々の規模でさえグループ内でそういったものを組 み立てるのに苦労しているのに、ほかの銀行がそんなことを簡単にできるわけがないという意味で、ひとつの差別化の切り口 になると思っています。
もうひとつは、技術の使い方、まさにインターフェースのつくり上げ方、デザインの仕方はやはりお客さまによって大分違うと思っていて、デザインのところは、今後、非常に重要になってくると思います。これはスマホの画面ひとつをとってもそうですし、経験そのもののデザインを意識してつくり込むかどうかで違ってくるのでは ないかと思っています。

山田:今の社長のお話を中心にしますと、個人にとってはある意味、非常に便利の良い、ワンストップショップ的な部分。法人にとっては、テーラーメードといいますか、いろいろな問題に応えてあげるというかたちになっていくのでしょうね。そこに向かうための今の課題についてはいかがでしょう。

工藤:今、個人、法人という分け方をしていただきましたが、法人でも小規模事業者に対しては、個人と同様、大量のデータを処理して、そこからモデルをつくっていく アプローチが活用できるのではないかと思っています。もう少し規模の大きい法人の世界については、お客さまに付加価値を感じてもらうためには、彼らなりの問題を解決するにあたって我々が役に立つという 構造が必要で、我々の規模からすると、ただ何でもかんでもやりますというよりは、本当にニッチな、強い分野をいくつかつくっていく。例えば不動産ファイナンスやプロジェクトファイナンス以外でも、今、 中心的に取り組んでいるニッチなファイナンスのいくつかの分野、事業承継・転廃業支援の分野だったり、あるいは、ヘルスケア だったり、これらは単なる例ですが、そういういくつかの分野を決めていく、それを深掘りしていくということかと思っています。

槇原:どの会社でも、どの個人でも、全く リレーションシップがないということはないわけですから、既存のお客さまにいろいろ新しいサービスを提供するのはいいので すが、新しいお客さまを開拓する際には、必ずもうそこに競争相手がいるわけです。そこをしのいで、競争相手が見えていない何か新しいものを提供するというのは至難の業です。それを考え、組み立てられる能 力を持った部隊が新生銀行グループにはいますが、それをもっと育て、訓練していかなければいけない。どの会社も当たり前の話ですけれども、マネジメントとして、優秀な部隊を育ててインセンティブを与えて、正しい方向に動けるようにするというのが一番の課題だと思います。

工藤:基本的には、既存の競争相手があまり行かないターゲットを定め、また、ターゲットをさらに細分化したレベルでのニッチをつくり込むという方向になっていくのだろうと思います。我々としては、すでに確立された優秀な部隊がいる分野を起点として、そこから広げていくというアプローチになると思っています。例えば先ほど触れたストラクチャードファイナンスの分野は、失敗もしていますけれども、学んだところも大きく、人も育っている。そうした分野に新しい人財を投入して、トレーニ ングしながらチームを大きくしていこう、それをほかに展開していこうということ は、いくつかの分野で可能な状況にはなっていると思います。

槇原:例えば、アセットマネジメント商品、これは誰もが満足するものは今なかなかない。しかし、確かにニーズはある。それを国内だけではなく、海外のアセットマネジャーを連れてきて、その商品を地方の金融機関と提携して提供することはやはりひとつの大きな成長分野になると思 います。では、それが実際にできるか。簡単にできるのだったら、もう誰でもやっていると思います。良い運用会社を見極めて、そこと提携して、良い販売網をつくるというのはなかなか大変ですが、新生銀 行がポジショニングとして結構できるのではないかというひとつの例です。

山田:専門性を追求するとき、一番重要 な問題はコストだと思います。どうしても最初は先行投資が必要になる。企業価値全体の増強という意味では、経費管理をどう考えていくかが重要です。

工藤:既存のビジネスを今のオペレーションのかたちでやっていく分野は、徹底的に生産性を上げるしかないのです。あらゆる切り口を見つけて生産性を上げていく、この努力を継続してやるという癖をつ けないといけないと思っています。日本のメーカーには一部そういうことができている会社もありますが、金融機関はそういうカルチャーがない。一つひとつのビジネスの付加価値が今まですごく大きかったから、そんなことをやっている暇があったら、一発大きいディールをとればいいのではないかというマインドセットがどうしても染みついている。けれども、ここから先の、 特に商業銀行のビジネスはそうではない。オペレーショナルな部分での生産性をあらゆる切り口で徹底的に改善していかなければいけない、というマインドセットをまずつくることが大事だと思っています。
そのうえで、いろいろなことを大きく変えていくうえで投資も必要というのはおっしゃるとおりで、個々の投資が正当化できるかはその背景にある大きなストーリーの 納得性の程度次第だと思っています。力のあるストーリーを経営陣が提示し、中長期に考えてくれる投資家が、ああ、そうだねと納得してくれる。その限りにおいて一定の投資は可能になると思っていて、もちろん単年度損益あるいは資本とのバランス感というのは経営としては考えますけれども、バランスの判断もストーリーの重要さ、蓋然性次第ではないかと思っています。

山田:利益の使い方について一般の事 業法人だと先行投資と株主還元があり、銀行は3つ目として、規制対応があります。この3つのバランスは非常に難しいですが、今後5年、10年を見たときに、どのようなバランスのとり方をされていくのでしょうか。

工藤:3つ目に関しては、当然、我々も対 応はしていくのですけれども、国内基準行ですからもっと先に対応しなければいけない方々が世の中にいますので、幸い、ど ういう方向に行けばいいのか大体見えま す。我々としては、規制コストをなるべく軽 減したうえで、残りの2つのエリアにむしろ 注力したいというのが私の考えです。

槇原:新生銀行は公的資金注入行なので、国という株主がいて、国にお金を返さなければいけない。国、納税者のお金を返さなければいけないので、そのための蓄えをつくらなければいけない。還元についても、将来の蓄えを考えながら還元しなけ ればいけない。普通の規制対応よりも、公的資金について常に考えていなければいけないというのは結構大きいですね。
先行投資プラス公的資金プラス株主還元だと思うのですけれども、これもまた銀 行共通の問題で、先行投資で一番大きいのはIT投資です。当行でも、実際に運用や 更新のために使わなければいけないお金があり、これでやっと使えたなと安心すると、今度はサイバー攻撃への対応も必要といった具合に、ITは常に無限に湧いてくるニーズがある。そのかじ取りはものすごく難しい。当行の場合にはITの専門性を有する社外取締役がいて、彼の知見を活かしています。

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