特集: 社長 × 社外取締役対談

ステークホルダーにとって魅力ある企業となるためには

「ステークホルダーにとって魅力ある企業となるためには」というテーマで、銀行業界の展望や新生銀行グループのポジショニングを踏まえた、中長期視点での企業価値向上について、ドイツ証券株式会社の銀行セクターアナリストである山田能伸氏をモデレーターに、金融および国内外での経験が豊富な当行社外取締役の槇原純氏と、当行代表取締役社長の工藤英之による対談を行いました。

特集: 社長対談 グループ融合

上段左から

山田 能伸(モデレーター)
ドイツ証券株式会社 株式調査部 シニアアナリスト マネージング ディレクター
工藤 英之
新生銀行 代表取締役社長
槇原 純
株式会社新生銀行 社外取締役

ステークホルダーに提供する価値

山田:ステークホルダーの価値をどうやって高めていくかという方法は、どうなんでしょう。最後は利益なんですね。

工藤:もちろんそうですね。最終利益を大きくしないとみんなハッピーにならないという極めてシンプルな事実があります。どうやって安定的にそこを伸ばしていくかということが肝になります。さらに、絶対額を伸ばすだけではなくて、その絶対額が持続して成長するという安心感を、例えば株式マーケットが持っているというのも重要で、最終的にはそれが株価形成上の評価にきいてくるわけなので、この2つの観点から、今やろうとしている取り組みが正しいのか、バランスが良いのかを考えるということなのではないかと思います。

槇原:メーカーと比べて金融機関は特許がないですから、何かうまくいき始めたらほかがまねをしてくる。常に新しいことを考えなければいけないが、新しいことばかりにも頼っていられない。持続的に安定した収入について、一番安定的に収入が見込めると私が思うのは、やはり個人、消費者とのつき合いです。安心して新生銀行からお金を借りられます、安心してつき合えますという信頼感があると、なかなかほかがぱっと横から入ってくるのは難しい。新生銀行の将来の非常に大きな部分というのは、新生フィナンシャルとアプラ スフィナンシャルを含めた消費者とのつき合いだろうと思っています。

山田:今後の業務展開におけるリスク、つまりリスクをとれば収益は上がる、リスクをとらなければ収益は上がらないといった観点から、どうやってリスク管理をされていきますか。

槇原:一つ例をあげると、取締役会全体 は、海外進出に関してリスクが高いという認識が非常に高いので、本当にニッチで、これはいけると思ったもの以外に関しては、海外に行くのはあまり前向きではありません。新生銀行の取締役会は、皆いろいろな海外の経験も持っていますので、それぞれ客観的に見て、リスクと対価を天秤にかけて判断するので、海外の案件が上がってくると結構厳しく見ています。

工藤:これは逆説的ですけれども、取締役が日本人ばかりだったら、日本だけだと成長が限られるから、海外をやらなければいけないという論調になると思うのです。しかし、アメリカ人に聞くと、アメリカのビジネスはそんな簡単にできるものではないという。当行の取締役構成を踏まえると、そういう取締役の皆さんを説得できるだけの材料を整えなければいけないということは執行側も理解したうえで、いろいろな海外案件は見ています。

新生銀行グループの中長期的企業価値向上について、社外取締役に期待される役割、および社外取締役が経営・執行側に期待すること

  

山田:槇原さん、一般の事業法人と比べ て、銀行の社外取締役の役割について、どんな違いがあるのか教えてください。

  
  

槇原: 一般論としては同じだと思います。 やはり会社の監督上、取締役会は保守的になりがちだと思うんです。リスクの方に 目がいく。では、銀行の社外取締役としてどこが違うかというと、見えないリスクが非常に多い。私は、たばこ会社の社外取締役をやっているのですが、リスクもわかるし、いわれたことに整合性があるのかないのかわかるわけです。一方、銀行は見えないリスクが多い。だから、銀行の社外取締役にとって、マネジメントから上がってく情報と、マネジメントとの情報のやりとりが非常に重要になる。良い情報も悪い情報もちゃんと上がってくるようにしないと、だんだん傾いた判断になってしまいます。
また、普通の会社で最も重要なステークホルダーは株主ですが、銀行の場合は株主と監督官庁です。非常に公共性がある業務なので、預金者に迷惑をかけると国の問題です。取締役会として株主の方にも目を向けていないといけないけれども、やはり国の方にも目を向けていないといけない。これも普通の事業会社と違うところです。

山田:その中で、現在の新生銀行のコーポレート・ガバナンスをどうお感じになっているのか、あるいは何か課題があったら教えてください。

  
  

槇原:新生銀行は、コーポレート・ガバナ ンスは非常に強いと思います。取締役会 は社外取締役の方が多い。かつ、それぞ れ個性を持って、強く意見をいう。取締役 会は5時間、6時間に及ぶので、細かくいろいろなものを議論します。もう時間なので次にいきましょうということを聞き入れない人が多いから、それぞれとことん議論を尽くしているので、そういう意味でのガバナンスは強いと思います。情報提供にしても、良い情報も悪い情報もどんどん取締役会に上がってくるので、それもガバナンス的に良いと思います。新生銀行はガバナンス優等生なんじゃないですかね。
また、海外を長く経験しているフラワーズ氏と私、また比嘉氏も海外も国内もよく見ておられるので、やはり海外のスタ ンダードと日本のスタンダード、両方とも一長一短あるので、それを全部交ぜて議 論できる。可児氏と富村氏も、またそれぞれ違う視点からコメントできます。いろいろな専門領域を持っている社外取締役が揃っていて、それも非常に重要だと思います。当行の取締役会では、上がってくる数字でもレポートでも何でも、ちょっとでも疑問があればどんどん掘り下げていって、その場で議論になります。経営陣に緊張感を与えるというのもガバナンスのひとつの役割だと思います。銀行経営陣にとっては十分緊張感があります。

新生銀行グループの中長期的企業価値向上について、社外取締役に期待すること

山田:工藤社長は、社外取締役にどんなことを期待されているのでしょうか。

  
  

工藤: 社外取締役にお願いしたい役割は2つあります。ひとつは、槇原さんにおっしゃっていただいたことを、ちょっと違うい い方にするだけですけれども、「非常にレベルの高い素人」でいいと思っています。別に銀行業務について知悉している必要は全くないと思っていて、ただし一人ひとりがそれぞれの重要な切り口を持っている。ある人はITだったり、ある人はガバナンスだったりする。銀行を運営するうえで 重要な切り口をそれぞれの取締役の皆さんがお持ちで、その切り口については徹底して執行側を詰める。普通の会社だと、執行側の説明を聞いて、取締役会がちょっと質問をします。それで、こうこうこうですと答えて、わかりました、で終わるんですが、新生銀行の場合、そこで終わらない。その答えは何でだと、もう一回聞かれる。それで、さらに答える。重要な切り口については徹底して詰めていただくというのは非常に重要な役割だと思っています。そこまで真剣勝負をやらないと、取締役の数だけ揃えても意味がないです。
もうひとつは、社長を選ぶことです。社長が退任したときに、あらゆるネットワークを使い、あらゆる知見を総動員して、今 後数年間、一定期間の経営を任せる人を選ぶということが取締役の非常に重要な役割で、それには当然、今の社長はだめだから代えようという判断も含むわけです。これが2つ目の非常に重要な役割だと思っています。逆にいうと、そういう者をちゃんと選ぶからこそ、銀行業務についてよく知っていて細かい執行の話一つひとつに入り込む、というような必要はないだろうと、そこはセットで考えています。

新生銀行グループの中長期的企業価値向上に向けた意気込み

山田:最後に、社長として、今後の中長期 的な新生銀行の戦略、あり方、課題について総括をお願いします。

  
  

工藤:新生銀行グループには、たまたまという部分もありますが、非常に有利な条件がいくつかあります。例えば、クレジットカードや信販にせよ、無担保ローンにせよ、グループ会社に、グループの中長期戦 略を考えるうえで私が必要だと思う機能があるわけです。
また、我々はどこか特定の地域とかを背負っているわけではないし、別に日本のマクロ経済のことを心配する必要もない。純粋に、どこが我々の生存領域なんだということを探せるような立場にいて、非常に自由自在にグループ内をデザインして、お客さまのニーズに応えられるようなものをつくれる立ち位置にいる。なおかつ、ここ何年間かずっと収益を上げてきましたので、例えば一定の成長投資をしようと思えばできるだけの資本もあるし、株主還元も少し増やせるようになってきた。いろいろな意味で、すごく動きやすい状態にあります。
この動きやすい状態を、どれだけ早く現実の競争上の優位性につくり上げていくかという極めて重要な時期にいると思っているのです。ほんの2、3年の勝負だと思います。そこで、しがらみにとらわれている競合者に対して、あるいは銀行以外の潜在的競合との関係で、どれだけ先取りして動けるかということがとても大事だと思っています。そのためのいろいろな布石を打っているつもりです。
将来の新生銀行グループの姿、あるいはグループのビジネスのあり方は、今とは少し違う形のものになっていく可能性は高いと思っていますが、それを最終的に評価するのはお客さまですから、お客さまから見て、これはいいね、面白いねと思ってもらえるものを早く実現したいと考えています。その後ろでは、オペレーションの徹底した生産性の向上があり、経費効率が非常に高く、表ではお客さまにとって面白いサービスをやっているといった姿を、新生銀行グループのいろいろな機能を使ってつくりたいと考えています。

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