社長メッセージ

代表取締役社長 工藤 英之

一歩先を行く企業グループであるために

新生銀行グループのステークホルダーの方々と対話するときよく聞かれるのは、新生銀行グループは、メガバンクでもない、地銀でもないとすれば、どんな金融グループなのかという問いかけです。それに対して、私はこう考えています。新生銀行グループは、業態の垣根を越え、これから金融ビジネスで起きる動きを先取りする金融企業グループであると。新生銀行グループの資産規模やビジネスポートフォリオを踏まえますと、私どもがそうなりたいと思うと同時に、ステークホルダーの方々からも新生銀行グループに対してそうした立ち位置が期待されているものと理解しています。その結果、私どもはベンチマークとなる金融機関がほかに存在せず同業他社との比較が難しい金融グループとなりますが、金融業界が大きな変革期を迎える中、それが最も勝ち目のある戦略だと思っています。

既存の秩序やパラダイムが揺らぐときは、それに適応している既成勢力にとって脅威ですが、一方でそれは新しいものが生まれる好機でもあります。新生銀行グループが持つ金融機能を、業態の壁を越えてお客さまの視点で見直し、お客さま自身すらも気づかなかった真のニーズまでも掘り起こし、既存の枠を超えた新しいビジネスやサービスの提供を目指すことが、新生銀行グループが構築しようとしているビジネスモデルの根底にあります。

このビジネスモデルを実現し、新しいタイプの総合金融企業グループとして飛躍するために、3つの経営課題があります。CEOメッセージでは、その課題に対する第三次中期経営計画(以下、第三次中計)の1年目の取り組みと成果、そして今後の方針をステークホルダーの皆さまへお伝えします。

新生銀行グループの3つの経営課題

3つの経営課題とは、第一に新生銀行グループの収益力、第二に環境変化に対する新生銀行グループの対応力、第三に資本政策と公的資金返済です。

新生銀行グループの収益力

現在進めている第三次中計を策定する初期段階から、基礎的収益力の弱さと収益変動性の高さについては課題であると認識していました。これまで、新生銀行グループの収益は、過去に積んだ貸倒引当金を取り崩した与信関連費用の戻入益や、過去に投融資を行った投資性業務からのエグジットにかかる収益など、再現性のない利益への依存度が高い傾向にありました。また、全方位的・拡大主義的な事業運営により各事業領域での兵站不足に陥っていたことから、本来伸ばすべき事業分野における潜在的な成長力がフルに発揮されていない状況でした。
新生銀行グループの企業価値を市場にきちんと評価していただくためには、収益変動性の高い要因を抑え、基礎収益力の厚みを増す必要があります。第三次中計では、これまでの全方位主義的な拡大政策を一新し、新生銀行グループが強みや専門性を持つ事業分野と当該事業の市場成長性を掛け合わせ、新生銀行グループが選択と集中すべき事業を特定しました。(詳細は「第三次中計の概要」)
まず、新生銀行グループの経営資源をさらに投入し、成長を牽引する事業として、無担保ローン事業とストラクチャードファイナンス事業があります。ほかの事業に比べ収益性が高く、市場の成長も見込めるこれらの事業分野は、日銀のマイナス金利政策に伴う競争環境の一段の激化にもかかわらず、 新生銀行グループが従前から持つ専門性と優位性を活かし、基礎となる収益力としてしっかり成長しました。
無担保ローン事業は、新生銀行カードローンレイク顧客数の着実な増加に加え、地域金融機関との保証業務の伸長が無担保ローン残高の増加に貢献し、2016年度は、市場の成 長率を上回る、年率12%で成長しました。無担保ローンの市場規模は約8兆円ありますが、日本の人口動態を鑑みれば、5年や10年といった中長期的な視点で考えた場合には、市場規模が今後も同じペースで拡大し続けることは考えにくいでしょう。こうした中長期的なマクロ環境の変化に対し、私どもは2つのソリューションを考えています。第一に、人工知能 (AI)を活用し、今までの基準では取り上げられなかったお客 さまのニーズに対応できるようになることで新規申込数を増やしたり、現在注力している対象のお客さまに対してもより精 緻な与信判断を行ったりすることで、無担保ローン残高を伸ばしていくこと。第二に、私どもの持つシステムやマーケティングの専門性を、日本国内だけではなく、海外、特にアジアにおける小口資金需要に活用していくことです。海外に顧客基 盤を持たない新生銀行グループの戦術としては、顧客基盤を 有する現地の金融機関と提携することで事業を展開できるものと考えています。すでに2016年2月には、タイで携帯電話販売事業やショッピングモール運営などの事業を展開する企業に対して、コンシューマーファイナンス業務のための基幹システムの提供を始めています。また、2016年11月には、ベトナムの大手民間商業銀行Military Commercial Joint Stock Bankと合弁会社を設立し、無担保ローン事業開始に向けた準備を始めています。(詳細は「特集:Shinsei IR Day: 無担保ローン」)
ストラクチャードファイナンス事業は、国内の不動産市況に一部過熱感がみられることから、不動産ファイナンスは選別的な取り組みとなりました。一方で、国内外のプロジェクトファイナンスにおいて、案件取り組みや地域金融機関とのシンジケーションが活発化し、2016年度は、営業資産残高および案件組成にかかる手数料収入などが順調に推移しました。国内のプロジェクトファイナンスはメガソーラーを主軸に推進してきましたが、固定価格買取制度の改定により、メガソーラー以外の電源、例えば、風力、地熱、バイオマスなどを電源とする再生可能エネルギー案件の拡大がより一層重要となってきます。新生銀行グループはメガソーラー案件で蓄積した案件獲得力、プロジェクトリスクの判断能力、地域金融機関との連携力などを発揮し、プロジェクトファイナンス分野におけるパイオニアであり続けるべく、常に新しいソリューションを提供します。(詳細は「特集:Shinsei IR Day:ストラクチャード ファイナンス」)
安定収益分野のひとつである資産運用コンサルティングは、第三次中計のビジネス戦略において最大のチャレンジとみています。マイナス金利政策などに起因する市場の混乱で、個人のお客さまの投資意欲は大幅に停滞しました。2016 年度下期には回復の兆しもみられるようになりましたが、単なる自律的回復のみならず、極めて大きな潜在ニーズを持つ分野であり、国民課題といっても過言ではない事業領域ですが、いまだどの金融機関も真にそのニーズに応えられていない状況です。新生銀行グループは、自らのネットワークだけでなく、グループ外企業との提携やAIを活用することで、資産 形成層における資産運用ニーズを捕捉することができれば、潜在的なビジネス機会は大きいとみています。AIを活用し、お客さまそれぞれのニーズに合った商品を、お客さまにとって便利なチャネルを通じてマーケティングするような顧客分 析モデルの開発や、インターネット、スマートフォン、店舗、コールセンターといった複数のチャネルを連携させた顧客管 理システム(CRM)の刷新にも取り組んでいます。(詳細は 「特集:Shinsei IR Day:リテールバンキング」)
将来性を期待する先行取り組み分野や、業態を超えた新しい発想による顧客価値の創造分野として、決済、中小・小規模 事業者向けソリューション、地域金融機関との協働・連携、事業承継金融を、戦略取組分野と位置づけました。
決済では、株式会社アプラス(以下、アプラス)が中国最大のSNSサービス 「WeChat(微信) 」で提供する中国人向けモバイル決済サービス「WeChat Pay(微信支付)」の日本での決済代行サービスに参入し、WeChat Pay(微信支付)利用店舗の開拓と利用店舗網の迅速な構築に取り組んでいます。中小・小規模事業者向けソリューションでは、昭和リース株式会社(以下、昭和リース)とアプラスが連携して、ベンダーリース事業を開始しました。これは個品割賦事業を展開するアプラスが信用判断機能を担い、昭和リースがリース機能や物件管理機能を提供するかたちで、アプラスの加盟店に対して、物品購入予定の個人事業者の資金調達としてリースを提案するものであり、新生銀行グループとして新たな顧客基盤の獲得強化につなげていきます。
日銀のマイナス金利政策導入後も、第三次中計の基本方針に大きな方向転換はなく、基礎となる収益力を着実に高めるべく取り組んだ結果、成長分野と位置づけた2つの事業は着実に成長し、戦略取組分野ではそれぞれ事業の芽が出始めています。

環境変化に対する新生銀行グループの対応力

金融を取り巻く環境は、大きな変革期にきていると感じています。金融テクノロジーの発達と異業種の金融業への参入などにより、お客さまの目線でみれば、商品やサービスを提供する主体が銀行なのか、銀行以外なのかといった業態の違いは重要ではありません。業態にかかわりなく、より魅力的な商品やサービスを提供する企業がお客さまに選ばれ生き残っていくのです。この変化は、コンシューマーファイナンスやリースなど、銀行・証券・信託以外にもいわゆるノンバンク領域の事業ノウハウ や顧客基盤を有し、それらを実質的に一体運営しうる新生銀行グループにおいて、むしろ好機であると考えています。
翻って、新生銀行グループとしての組織運営はというと、事業部門制のくくりや業態の壁によるサイロ化が進んでいた結果、現状のままでは、こうした環境変化への対応に限界があるという問題意識がありました。冒頭で述べた新しいタイプの総合金融企業グループであるためには、新生銀行グループとしての組織力が必要です。私どもにとって、新生銀行に加え、新生フィナンシャル株式会社、株式会社アプラスフィナンシャル、昭和リース、新生信託銀行株式会社、新生証券株式会社、新生プリンシパルインベストメンツグループなどのグループ各社が持つ人財、ビジネスの基盤、商品力や開発力を、スピード感を持って、どうやって最大限発揮するかという点が、グループ融合の喫緊の課題です。
グループ融合を推進するためのキーワードは、オペレーションの融合、人の融合、ビジネスの融合です。(詳細は「特集:グループ融合の進捗評価」)
まず、オペレーションの融合の代表例として、長く続いた部門制を廃止したことに加えて、新生銀行グループ各社にある間接機能を実質的に統合した「グループ本社」を2017年4月に設置しました。グループ各社の間接機能を集約します。間接 機能の統合により、オペレーションの効率化や生産性の向上を実現していくことはもちろんのこと、ビジネス部署への高付加価値サービスの提供、グループベースの戦略立案機能の強化など、業務の高度化も図ります。そして、グループ本社設置のその先には、グループのビジネスのあり方を、お客さまとお客さまに提供する機能ごとに再編することを目指しています。この動きも、2017年度には開始していきます。各業態の垣根を越えて新生銀行グループ全体の最適化を実現するような体制を構築したいと考えています。
各業態の垣根を低くすると同時に行うべきは、人の融合です。これは、単なる人事交流やローテーション人事ではなく、新生銀行グループ全体の人財プールから、どの事業にはどの人財が最適なのか戦略的に人員配置を行うことを企図しています。これまでと違う業態や企業文化にいた人財が、ひとつの組織の中で共通の目標に向かって業務を推進することで、今までとは違う新しい着目点や発想が生まれることを期待しています。この点について、新生銀行グループの持つ潜在的躍進力は計り知れず、グループ融合の効果として最も期待している点 のひとつです。実現に向けて、私を含めた経営陣一同は、グループ従業員とのコミュニケーション、およびグループとしての組織運営や人事制度づくりをしっかりと行っていきます。
人の融合が図られると、必然的にビジネスの融合が起こるはずです。従業員それぞれが持つ専門性や業務経験が有機的に結びつき、新しいビジネスが生まれる、もしくは既存のビジネスが今まで思いもよらなかったソリューションにより前進する。それが実現するための仕掛けとして、2017年4月に「クロスカンパニービジネスユニット」を立ち上げました。これは、事業法人・金融法人営業、ストラクチャードファイナンス、個人業務、アナリティクスの分野に関して、ユニットごとにグループ会社の垣根を越えて情報を共有し、ユニットリーダーを中心にグループベースのビジネス推進上のアイデア創出、および推進のために必要な組織再編や機能集約の検討などを行うものです。
オペレーションの融合、人の融合、ビジネスの融合によって、新生銀行グループは、どんな環境変化にも対応する組織力を有していきたいと思います。

資本政策と公的資金返済

近年の着実な利益計上により、公的資金の返済原資としての資本蓄積が進捗していることから、資本運営について、市場とのコミュニケーションの重要性がより一層重要になっていると認識しています。
株主還元については、現在の資本蓄積の状況を踏まえ、1株価値の向上を図るため、2016年5月に100億円の自己株取得を発表しました。公的資金返済については、新生銀行に注入された公的資金は普通株式に転換されていることを踏まえた実現可能性のある公的資金返済プランの検討とそれに向けたステップの構築・実施を進めます。
公的資金の返済原資の確保を意識しつつ、1株当たりの価値向上のため、ビジネスでの資本活用および株主還元のための資本についてバランスのとれた適切な資本運営を行います。

最後に

私どもは、新生銀行グループの基礎収益力、環境変化に対する対応力、資本政策と公的資金返済という3つの経営課題にしっかりと取り組み、その成果をきちんと市場にご説明することが、新生銀行グループの持続的な企業価値の向上に資するものと考えています。また、そのことが新生銀行グループにかかわるすべてのステークホルダーの皆さまの期待に応えることにつながるものと考えています。

今後も新生銀行グループの従業員一同、一層の努力を重ねてまいりますので、引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。

平成29年7月
工藤 英之
代表取締役社長
工藤 英之

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