夢と現実は違うとよく言いますが、海外生活は楽しいことばかりではありません。海外生活をしていて困ったことを10挙げるとすれば、間違いなく、そのうちの7〜8つは医療に関する問題になると思います。言葉の問題だけでなく、病院で診察を受ける方法や専門医へのかかり方、薬に対する考え方など、日本とは大きく異なり戸惑うことも多々あります。

こちらは、ペンションではなく、診療所です。
まず、病院で診察を受ける手順ですが、オーストラリアもニュージーランドも、GP(General Practitioner)と呼ばれる一般開業医にかかります。かかりつけのGPは家の近所や会社の近くで探す場合が多いのですが、ブリスベンの場合、日本人のGPは1人しかいませんので(しかも週2日の診察のみ)、日本人の先生に診てほしい場合は、必然的にそこに行くしかありません。言葉の問題をクリアできるならば、何人かのGPにかかってみて、自分にあいそうなGPをかかりつけ医にするのがベストですが、医療英語は日常英会話とは異なり、難しい単語も多く、治療方針なども日本と外国とでは違いますので、日本人の場合、日本人のGPにかかっている人が多いようです。
GPは、内科・小児科・皮膚科・産婦人科など、すべての分野の診察を行いますので、大人が風邪をひいても、子どもが怪我をしても、湿疹が出たときも、妊娠したときも、とにかくすべて同じGPに診てもらうことになります。また、通常の診察は事前予約制になりますので、日本の病院のように「初診なのですが・・・」と突然飛び込みで行くことは出来ません。私には2歳の子どもがいるのですが、子どものケガや熱に予約も何もありません。当日急にということになると、よほど緊急の場合以外は2〜3時間待たされることも珍しくなく、よけいに具合が悪くなるなんてことも・・・。そんなとき、本当に日本の病院が恋しくなります。
また、GPでは手におえないとされる病気やケガの場合には、“スペシャリスト”と呼ばれる専門医に診ていただくことになりますが、スペシャリストのところには、救急車で運ばれる以外は、必ずGPからの紹介状を持っていくことになります。スペシャリストの予約は運がよければ1週間後、下手をすると3ヶ月後という混雑ぶりですので、やはり身近なGPは貴重な存在です。さらに、入院や手術が必要なケースや緊急の場合に利用されるのが”ホスピタル“と呼ばれる日本で言う総合病院です。ホスピタルには“エマージェンシー”と呼ばれる救急外来がありますので、夜間や土日などにどうしても診察を受けたい場合も対応してもらえます。

ショッピングセンターの中の医療施設。
そして、最近オーストラリアやニュージーランドで増えてきているのが、“メディカルセンター”と呼ばれる医療施設です。メディカルセンターは、何人かのGPが集まって診察を行っている施設で、ショッピングセンターの中など、利便性の高い場所にあることが多く、医師が交代で診察をしているので、診療時間が長く、週末や夜間も開いているのが特徴です。
気になる医療費ですが、永住権を持たない長期滞在者はメディケア(いわゆる国民健康保険)には加入できませんので、民間のプライベート保険に加入することになります。診察代は一度自分で立て替えて支払い、後日保険会社に請求します。通常の風邪などの診察代は、約50ドルですが、以前子どもがおでこを切ってGPに行ったとき、縫うまでは行きませんでしたが、約250ドルかかりました。週末に40度以上の高熱を出し、エマージェンシーのあるホスピタルに駆け込んだときは、診察代が250ドル、レントゲンの検査費用が80ドル、抗生物質の薬代で20ドルかかり、保険の1日の限度額をオーバーして、100ドル近く自腹で支払うことになってしまいました。また、同じ薬の処方箋でも、薬局によって薬の値段が違うのには驚きました。アレルギーの薬を毎月処方されているので、月ごとに4つの薬局で試してみたのですが、一番安いところが近所の薬局チェーン店で45ドル95セント、一番高いところはシティの駅前にある薬局で69ドル90セントでした。知らなかったではすまされない金額の差です。

薬はスーパーで手に入ります。
オーストラリアやニュージーランドでは、人間ドックや定期健診などは一般的ではなく、本当に症状が悪化した場合に初めてGPに行くようで、予防医療はあまり進んでいないと感じます。そのかわり、子どもの予防接種などは、日本よりも種類がかなり多く、日本では一般的ではない肺炎や髄膜炎、B型肝炎などの予防接種も無料で受けられます。逆に、風邪くらいではなかなか薬を処方してもらえず、自然治癒力を重視する先生が多いのも特徴的です。日本では、風邪で病院に行くと、咳止めや解熱剤、鼻水やくしゃみを抑える薬など、たくさん薬をいただいていましたが、こちらではもらったことがありません。ちょっとした薬ならば、スーパーマーケットでも売っていますので、わざわざGPに行くまでもないと考える人も多いようです。