World Report
脇若浩子の「豪・NZ現地レポート」
2007/11/26
第15回:「11年ぶりの政権交代」

オーストラリアの首都をシドニーだと思っている日本人はとても多いのですが、首都はシドニーではなくキャンベラです。観光地として世界的にも人気のあるシドニー、メルボルン、ゴールドコーストやパースなどに比べると、キャンベラの知名度は格段と低く、観光に訪れる人も少ないのですが、首都として建設された立派な計画都市なのです。首都がなぜキャンベラになったのかということは、あまり知られていませんが、オーストラリア連邦が成立した当初、オーストラリア第1の都市シドニーと第2の都市メルボルンが、 「どちらを首都とするべきか?」という話し合いで大喧嘩をし、収拾がつかず、「それだったら、シドニーとメルボルンのほぼ中間にある場所に新たに首都となるべき街を 建設しよう」ということで、1913年に首都キャンベラがつくられた のです。決して大きな都市ではなかったキャンベラでは、新しい 首都としての街のデザインを決めるのに、なんとコンテストまで 開かれ、世界中から集まったデザインの中から、アメリカ人建築 家のデザインが選ばれ、現在のように区画整理された美しい首 都が完成しました。日本でも何年か前に、“首都移転”構想が論 じられたことがありましたが、完成したものを途中で移すのは 並大抵のことではありません。その点、キャンベラは首都として 新しくつくられた街、現在でも人口は33万人程度、大使館街が 丘陵公園の中に位置し、川をせきとめてつくられた人工湖を見下 ろす丘の上に国会議事堂がそびえたつ美しい都市となっています。

11月24日、オーストラリアでは総選挙が行われました。50歳のケビン・ラッド率いる労働党が68歳のジョン・ハワード首相率いる自由党・国民党の保守連合を大差で破り、約11年ぶりの政権交代となりました。ハワード首相は、1974年の初当選以来はじめて議席を失い、1929年以来78年ぶり、オーストラリア史上2度目の現職首相の落選という結果になりました。早い段階からイラク戦争を支持し、ブッシュ大統領の「最後の盟友」といわれ、5期連続の政権維持を目指したハワード首相は、ついに政界から引退することに・・・。確かに、昨年12月にケビン・ラッドが労働党の党首に就任してから、野党労働党は連立与党の支持率を超える高い支持率を維持してきました。

ただし、オーストラリアの選挙は開票が始まってみないと結果は絶対わからないといわれているように、選挙直前のテレビ局の調査では、一時与党の支持率が逆転したりして、本当に接戦かと注目されていましたが、実際には野党が圧勝という結果になりました。
世界で初めて女性参政権を実現させたのは、オーストラリアの隣国ニュージーランドでしたが、今回ハワード首相から議席を奪った相手も国営放送ABCのニュースキャスターだった女性でした。新しくオーストラリアの首相になるケビン・ラッドは、中国語が堪能なことで有名で、通訳なしに会談が行えるほどだとか。日本の捕鯨を厳しく批判していることでも知られ、ハワード首相が日本を「アジアで最も重要なパートナー」としてきたのに比べると、貿易相手国としては日本を抜いた中国への肩入れが高まるのではないかといわれています。
「すべてのオーストラリア人のための首相になる!」というケビン・ラッドの勝利宣言を、私はパーティが終わって自宅に戻るタクシーの中のラジオで聞きました。「ケビンが勝ったの?」と聞いた時、「ああ、そうだよ」と悲しげに答えるタクシーの運転手さんの言葉がとても印象に残っています。イラクに駐留しているオーストラリア軍の撤退や京都議定書の批准を公約としているケビン・ラッドを選んだのは、アメリカやブッシュから離れたがっている多くのオーストラリア人、変化を求めているオーストラリア人なのかも知れません。

ちなみに、オーストラリアでは選挙の投票は“権利”ではなく“義務”です。選挙権をもつ18歳以上であれば、病気やケガなどやむをえない事情がある場合をのぞいては、投票をしないと20〜30ドルの罰金(選挙の種類によって異なる)が科せられます。

高い罰金とはいえませんが、オーストラリアの選挙の投票率は毎回98%前後ときわめて100%に近く、「自分の国は自分で良くしていく!」というオーストラリア人の強い意志が感じられます。
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