
人口の増加が激しいブリスベン・オフィス街の
ランチタイム
先月、オーストラリア旅行から帰ってきたばかりという日本に住む知人の話を聞く機会がありました。「とにかく物価が高くてびっくりした」とのこと。彼女は、6年ほど前にも同じ場所を旅したのですが、そのときには、「自然豊かで物価も安く、人々もフレンドリーで、生活しやすそうな素敵な国だ」と思ったそうです。
ところが、今回の旅行では「街なかの普通のカフェに入ってスパゲッティを食べたら28ドル(約2800円)もして、コーヒーを頼んだら30ドルを超えた!」そうです。日本はランチのセットメニューが豊富で、かつ安いですものね。驚くのも無理はありませんが、こちらで生活している私たちにとってはいたって普通の金額です。ただ、資源ブームが始まった2004年以前にオーストラリアを訪れたことがある人にとっては、最近の物価の高さ、人の多さ、車の混雑などの変化には目を見張るものがあると思います。
最近のオーストラリア・ドル(対円)の推移をみてみますと、1990年には120円台をつけていたものの、その後オーストラリアが経済不況になったことや、円高の影響を受けて1995年には60円台まで下落。その2年後、さまざまな景気対策などで100円台にまで回復しましたが、その後は貿易赤字の拡大などによって長期的に下落し続けました。さらに、2000年7月に導入されたGST(日本でいう消費税)の影響でマイナス成長を記録、2000年11月には56円台前半にまで落ち込みました。その後、住宅投資や個人消費が拡大し、景気の回復や資源ブームもあってじわりじわりと上昇、2007年7月には約16年ぶりに107円台に突入。しかしながら、その1ヵ月後には、アメリカのサブプライムローン・ショックで、一気に85円台まで下落。その後はまた急反転し、10月には再び107円台を回復。現在(2008年5月26日)は、99円前後で推移しています。このように、この20年足らずの推移を見てみても、オーストラリア・ドルは、かなり乱高下する通貨であると思います。
現在のオーストラリアの景気は言うまでもなく絶好調なのですが、失業率が4%と34年ぶりの低水準で、慢性的な人手不足です。今日仕事が欲しいと思ったら、明日には就職できるとも言われています。どの業界も人手が不足しているので、必然的に賃金が上昇していますが、賃金の上昇は人々の消費をあおり、結果的に物価の上昇をもたらす、まさしく「インフレ」です。オーストラリアのインフレ率は依然として高水準にあり、このまま放っておけば、物価は上がり続け、人々の生活に悪影響を及ぼすことは容易に推測できるでしょう。
一方、これから本格的なスキーシーズンを迎えるニュージーランドは、不動産価格のインフレの緩和も見られ、経済状態は落ち着いています。ただし、現在はアメリカのサブプライムローンから始まった世界的な信用不安が続いていますので、世界経済の方向性がはっきりするまでは安心できないですし、すでに経済成長という面では減速局面にあるというのが実情でしょう。
特に、ニュージーランド・ドルに関しては、オーストラリア・ドルほど強くないので、今後、資本の流入が減りだすと、為替相場は下落するのではという見方が大方の予想です。それでも、ここ数十年の平均為替を大幅に下回ることはないというのが多くの専門家の意見です。
アメリカの経済が不透明な現在だからこそ、アメリカへの投資を回避するひとつの手段として、金利の高いオーストラリア・ドルやニュージーランド・ドルが買われているということも考えられます。資源大国「オーストラリア」、農業輸出国として確固たる地位を築いている「ニュージーランド」、負債の少ない財務状況が後押ししてこのまま成長を続けるのか、アメリカ経済の影響を受けて経済成長にかげりを見せるのか・・・。最近続々と発表された大手銀行の為替レポートでは、今度の為替の推移について、まったく相反する内容がひしめきあっていました。オセアニアの行く末は、まだまだ目が離せません。