吉田レポート
米マイナス成長不安は消えたのか?
2008年5月15日
photo 吉田 恒
1962年、青森県生まれ。
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。 また、投資情報コングロマリット、T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。
財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。 為替ディーラーなど金融市場のプロ向け会員情報「Predictor」の編集責任者。 また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。
2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落など大相場予測をことごとく的中させ話題に。

  13日NYで、4月米小売売上高の結果がドル買いのきっかけになったとされている。 これは、極端な言い方をすれば、米第2四半期マイナス成長転落不安が後退したということだろうが、ただちょっと過剰期待の観も残る。

小売売上でドル買いの「真相」

  13日発表された米4月小売売上高は前月比マイナス0.2%。 事前予想コンセンサスもマイナス0.2%だったから、その意味では予想通りの結果だったということでしかない。

  にもかかわらず、ドル買い材料になったとされるのは、変動の大きい自動車を除いた分がプラス0.5%となり、事前予想のプラス0.2%からかなり良かったためだ。

  さらに重要なのは、GDP統計の個人消費に反映されるのは自動車やガソリンなどを除いた分であり、それもプラス0.4%だったということ。 個人消費はGDPの約7割を占めるとされる。

  つまり極端な言い方をすると、「GDP=個人消費」であり、その個人消費の参考になる4月小売売上高はマイナス0.2%ではなく、プラス0.4%だったということ。 米4−6月期GDPはいよいよマイナス成長転落が懸念されていたが、それがこの小売売上の結果を受けてちょっと微妙になったということだろう。

  それでなくても、4−6月期はブッシュ減税の効果が出ることが期待されている。 4月の個人消費が予想ほど悪くなかったということは、4−6月期の個人消費が悪くないという期待になり、それは個人消費のGDPへの影響を考えれば、マイナス成長不安が薄らぐ意味でもあるだろう。 ドル買い反応も、こういったことなら理解できるだろう。

米早期利上げ織り込みは過剰?

  ただ、米景気へ悲観的な見方のエコノミストに、「これで4−6月期マイナス成長転落はなくなったか?」と聞くと「時期尚早。しょせん四半期のうち1ヶ月の結果に過ぎない」といった回答。 その上で、「しかも年内利上げ織り込みは過剰だろう」との説明。

  実際、FF先物は、年内FRB 0.25%利上げを織り込んだ形になっている。政策金利を反映する2年債利回りも、FFレートを上回る状況が定着しはじめた。 4−6月期マイナス成長不安が後退したとしても、それが完全に消えたわけではなく、そういった中で年内利上げが織り込まれているというのは、ちょっと過剰反応のようにも思う。

  その意味では、この小売売上の結果が、新たなドル買いの明確なシグナルかといえば微妙だろう。 そもそも相場の急変につながるほど、ファンダメンタルズが急変することが、そうはないことだ。 (Y)

<参考:FFレートと米2年債利回りの差>
参考:FFレートと米2年債利回りの差

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