吉田レポート
ドル高はまだ続くのか、それとも?
2008年8月18日
photo 吉田 恒
1962年、青森県生まれ。
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。 また、投資情報コングロマリット、T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。
財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。 為替ディーラーなど金融市場のプロ向け会員情報「Predictor」の編集責任者。 また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。
2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落など大相場予測をことごとく的中させ話題に。

  ドル買いが拡大している。シカゴIMM統計によると、2007年2月以来、約1年半ぶりの規模に拡大してきたようだ。 ところで、2007年2月とは、米政策金利が5%を超え、ドルは「高金利通貨」だった。それに対して現在の米政策金利は2%。 ドルの「低金利」を理由に、ドル・キャリー取引の有効性が指摘されていたのは、つい数ヶ月前のこと。 それがドル・キャリーどころか、一転して大幅なドルロングになっているわけだ。 ドルの「低金利」ということに大きな違いがない中では、ちょっと気になる矛盾だ。

低金利ドル買いの矛盾とユーロ「下がり過ぎ」

  それでも、この「低金利」ドルの買いが拡大しているのは、原油価格急落に伴い、原油と連動性の高いユーロが急落していることからすると当然といった見方になっているのかもしれない。 ただそのユーロ安も、移動平均線との関係などで見ると、ちょっと「下がり過ぎ」の懸念が出てきた。

  ユーロドルは、90日移動平均線からのかい離率が±5%を超えると、経験則的に行き過ぎ圏。 ところで、その90日線、最近は1.56ドル程度。 したがって、先週末から1.46ドルへユーロ反落となってきたことで、90日線からのかい離率はマイナス6%程度に拡大してきた。

  このように見ると、ユーロは「下がり過ぎ」、ドルは「買われ過ぎ」の可能性がありそうだ。 相場には行き過ぎが常だが、それがさらにどこまで続くのか、そんな段階に入っているということではないか。

ドル高の転換点となった昨年8月15日、今年は?

  このように、最近はドル高が続いているが、昨年も8月前半はドル高となり、それは15日で終わった。 その主因は、ヘッジファンドの「45日前ルール」期限が8月15日だったこととも関係があったのではないか。 そうだとすると、今年も両者の関係は少し注目したい。

  7月半ばから最近にかけて、ドルの総合力を示す実効相場(FRBメジャーインデックス)は70.03ポイントから74.57ポイントへ6%も上昇している。 ところで、今年ほどではないが、昨年の場合も、やはり同じような7月後半から8月半ばにかけてドル実効相場は上昇していた(7月24日76.78→8月15日78.37)。

  このような昨年の「夏のドル高」について、当時の私のレポートは、「資金供給=ドル高の謎」(07年8月15日付け)と書いていた。 当時ヘッジファンドが解約への対応のため資金調達を急いでいた。 その返還資金は原則米ドルのため、ヘッジファンドなどはユーロなど調達した外貨を米ドルに変換(ドル買い)を急ぎ、それがドル高の主因との意味だ。

  さて、これが実際に当時のドル高のすべての理由だったかとなると、答えはもちろん「藪の中」だ。 ただ結果的に昨年の「夏のドル高」は8月15日で終わった。 8月15日は9月末から45日前で、ヘッジファンドの9月末解約の一つの期限とされていることを考えると、両者の関係はやはり気になるところだろう。

  では今年も昨年と同様に8月15日で「夏のドル高」は終わるのだろうか。 上述のように、今年は昨年以上に大幅な「夏のドル高」になっている。原油価格急落など、昨年以上に「夏のドル高」を後押ししている要因は多いのかもしれない。

  かりにヘッジファンドの「45日前ルール」のドル買いがこの間あったとして、それが8月15日で一巡するとしても、それはいくつかのドル買いの中の一つがなくなる程度の意味かもしれない。 しかし一方で一つの「ドル買いムーブ」が消えるということも確からしいことだろう。 (Y)

<参考:ユーロドル90日線からの乖離率>
参考:ユーロドル90日線からの乖離率

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