吉田レポート
GSE危機第2幕のシナリオ
2008年8月21日
photo 吉田 恒
1962年、青森県生まれ。
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。 また、投資情報コングロマリット、T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。
財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。 為替ディーラーなど金融市場のプロ向け会員情報「Predictor」の編集責任者。 また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。
2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落など大相場予測をことごとく的中させ話題に。

  18日NYは、この1ヶ月沈静化していた米住宅金融機関、いわゆるGSE(米政府支援機関)問題への懸念再燃をきっかけに、米株急落となった。 まだわからないが、これが7月で一息ついていたGSE危機第2幕のきっかけになる可能性も注目される。

クラッシュは不可避なのか

  18日NYでまず注目されたのは投資情報「バロンズ」の記事で、政府系住宅金融機関、GSEへの公的資金注入の可能性が報じられたこと。 一方で、いくつかの証券会社もGSEの第3四半期中の資本増強は不可避といった見方を示していた。

  では、GSEの資本増強が不可避で、それが公的資金注入といった形になるか。 米政府はGSE支援法案を成立させたため、公的資金注入は実現可能な手段である。 ただ実現は可能だが、現実的にやれるかとなると別といった見方もじつは依然として根強い。

  なぜ、公的資金注入が可能なルールを作りながら、実際にそれを行使するか微妙かといえば、それはきわめて政治的な理由が強い。 キーワードはモラルハザード。 依然として金融機関救済に対する抵抗感も強いため、政治的な「ホンネ」としては、公的資金は注入可能ながら、できることなら注入せずに済ませたいというところだろう。

  注入を見切り発車して、それが11月大統領選挙にどう影響するかは微妙なところ。 そうであれば、誰が見てもやむをえないと納得するような危機が起こらないかぎり、公的資金注入はできないとの見方が取り沙汰されている。

  このように見ると、18日NYの動きは、後から振り返ったら金融市場がGSEへの公的資金注入を試す形の「GSE危機第2幕」の始まりだったとなる可能性もあるものだけに気になるところではある。

公的資金注入のための危機の必要

  普通に考えれば、どうせ公的資金注入が不可避なら、安定した状況の中で速やかにやればいいと思うだろう。 ただ、これはモラルハザードの問題をクリアーしないと政治的には決して簡単ではなさそうだ。 安定した状況の中では、必ずしもGSEへの公的資金注入が無条件で賛成されるかは微妙だからだ。

  このようなことは、政策当局者たちがよくよく理解しているだろう。 したがってうがった見方をすると、以下のような「危機の演出」があるのかもしれない。 公的資金を注入するために、現時点で注入に対して反対している人たちも仕方ないと感じさせるためには、「クラッシュ」が必要だから、それを起こさせる可能性はないだろうか。

  疑って見ると、ここに来ていくつかの証券会社がGSEの資本増強の必要性を指摘、一方で米財務省が資金注入を否定している動きなども、じつは偶然ではなく、公的資金注入を可能にするための意図的な「擬似クラッシュ」ではないかとも感じてしまう。 (Y)


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