キャッシュフローファイナンスの活用 「まだ誰も動いていないときに、ともに新しい仕組みを作ることができた」

株式会社レノバ 代表取締役社長 木南 陽介

新生銀行VBI推進部ビジネスインキュベーション室 兼 スペシャルティファイナンス部プロジェクトファイナンス室 川辺雄一郎

Question 1

レノバ様の事業内容と、両社が関わりを持ったきっかけを教えてください。

木南:当社は環境分野に特化した事業会社で、メガソーラー事業、プラスチックリサイクル事業、環境コンサルティング事業が主力の3事業となります。今後は再生可能エネルギーの他の分野への展開を考えています。
新生銀行さんとお会いしたのは、我々が初めてリサイクル事業に大きな投資をする時に、かなり資本の増強を図ったのですが、その時に株主として新生銀行グループから投資していただいたのがきっかけです。その後、東日本大震災の後、当社が再生可能エネルギー事業立ち上げを図っていた時に、川辺さんとお会いしたと思います。

川辺:そうですね。再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まったのが2012年7月ですから、その半年ぐらい前で、メガソーラーに注目するプレーヤーが非常に少なかった時期に、木南社長を紹介いただいてお話しをさせていただきました。その時点で御社はメガソーラーに対するリスク分析を相当進めていらっしゃいましたね。 一方、我々新生銀行も、金融機関としては早いタイミングでメガソーラーに対するリスク分析、マーケット評価を行っていたものですから、これは一緒にやれるのではないかということで、話が始まりました。

木南:我々も当初メガソーラーの発電システムを組み上げることや、日照の分析などはやっていたのですが、ファイナンスをどう組むかということまでには至っていませんでした。特に太陽光は長期のファイナンスを組まなければなりませんし、プロジェクトファイナンスでやらないと我々はそもそも資金調達が難しいと思っていましたので、そういう意味で、制度ができる前からディスカッションに付き合っていただいたことは本当にありがたかったです。

川辺:木南社長とお会いして約3ヵ月後の2012年4月に、当行はVBI推進部ビジネスインキュベーション室を立ち上げ、私は再生可能エネルギー分野の担当になりました。その時期には、固定価格買取制度ができる流れができていたこともあり、経営判断として新しい部署を作って、取り組む分野の一つとして再生可能エネルギー分野にフォーカスしていこうという意思決定があったわけです。これは早い時期に成長分野を見定めた非常に優れた経営判断だったと思います。我々はすでにその時点でメガソーラーのリスク分析をしていましたので、プロジェクトファイナンスという形でこの分野に参入するプレーヤーを支援できるに違いないという確信を持っていました。

株式会社レノバ 代表取締役社長 木南 陽介

株式会社レノバ 代表取締役社長
木南 陽介

新生銀行 VBI推進部ビジネスインキュベーション室 兼 スペシャルティファイナンス部プロジェクトファイナンス室 川辺 雄一郎

新生銀行 VBI推進部ビジネスインキュベーション室 兼 スペシャルティファイナンス部プロジェクトファイナンス室
川辺 雄一郎

新生銀行 VBI推進部ビジネスインキュベーション室 兼 スペシャルティファイナンス部プロジェクトファイナンス室 村上 茂久(ファシリテーター)

新生銀行 VBI推進部ビジネスインキュベーション室 兼 スペシャルティファイナンス部プロジェクトファイナンス室
村上 茂久(ファシリテーター)

木南:我々はその頃、銀行によるリスクの見方とか、金融面におけるノウハウがありませんでしたからね。IRR(内部利益率)の水準、負債の水準、そしてファイナンス期間の水準など、そのような議論に付き合っていただいたということが本当にありがたかったですね。

川辺:当時の御社との議論を通じて、当行は太陽光システム全般のリスク、太陽光モジュールの劣化リスク、土地利用に関するリスクなどに関して勉強させていただきました。我々は金融機関として、プロジェクトを安定的にするためにどのようなファイナンス構造が適切か、プロジェクト関連契約を通じていかにプロジェクトを安定させるかなどに関しての情報を御社にご提供できたと思います。お互いに情報を持ち寄ったことで、御社、当行とも以降の案件にそのノウハウを活用できたのでしょう。まだ誰も動いてない時に、ともに新しい仕組みを作ることができたことが、その後の案件に活かされていると思います。

木南:当時から、モジュールメーカーひとつとってみても、どこが良いかということは判断が難しい問題でした。値段もそれぞれ価格帯があって、品質も保証内容も値段も加味したうえで総合評価を下さないといけないわけですが、御行については、モジュールメーカーの規模、ブランドといったモノサシではなく、性能そのものを見ていただいているという印象は当時から強かったですね。一定のブランドがあると話が通りやすいという世界と、性能そのものの世界は別の話ですよね。そのあたりを分けて考えていただいた点がさすがというか、我々としては非常に話がしやすい相手だなという印象がありましたね。

川辺:プロジェクトファイナンスは超長期のファイナンスになりますので、プロジェクトそのものに内在するリスク、例えば発電システムそのものが故障するリスクを突き詰め、そうならないような措置をとることが大事であり、リスクが発現した際に安易にコーポレート(プロジェクト関係者)の信用力に頼るという発想は正しくないと思います。一義的には、太陽光モジュールを含めた発電システムの安定性評価を最優先評価とするべきだと思います。そのあたりは、当行のプロジェクトファイナンスの取組方針に色濃く現れています。

プロジェクトファイナンス
特定のプロジェクトに対して行う融資で、特に当該プロジェクトから生じるキャッシュフローが中心的な返済原資とされ、かつ貸付人の取得する担保も原則としてそのプロジェクトの保有する物的資産や関連契約書に限定されるファイナンス。内スポンサーなどへの返済を求めることができないローンは、ノンリコースローン、限定される場合はリミテッドリコースローンとなる。
再生可能エネルギー
太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等を利用したエネルギー
再生可能エネルギーの固定価格買取制度
再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で一定の期間電気事業者に調達を義務づける制度。2012年7月1日にスタート。
IRR
Internal rate of return。内部収益率。NPVが0となる割引率。投資に対して得られる将来キャッシュフローがバラバラの場合の平均利回りを示すもの。
モジュール
本文では太陽光発電パネルを指す。

Question 2

初めて新生銀行と案件をご一緒することとなった菊川案件の概要を教えてください。

木南:静岡県菊川市のプロジェクトは、事業規模でいうと二つのサイト(菊川堀之内谷ソーラー、菊川石山ソーラー)を合わせて17MWで、総事業費で54億円ぐらいの規模になります。出資企業としては、当社と共同事業者で出資を行い、新生銀行からファイナンスを実施していただき、2013年11月に調印に至りました。元々の経緯は、我々が菊川市でリサイクル工場をたまたま運営していた縁で接点を持った案件ですが、蓋を開けてみると地権者の数が100人を超えているという非常に難しいサイトでした。ただ、地権者や関係者の方々の誘致への熱意も強くて、難易度が高いなと思いつつも、地権者の方々に背中を押される感じで検討に入りました。
ただ2サイトありますので、2倍の手間がかかりました。両サイトで地権者集会を合計10回以上開いた後、全員の方から無事土地利用に関する承諾をいただくことができました。

プロジェクトストラクチャー図

川辺:最初に菊川の案件でご相談をいただいたのが、2012年の夏頃だと思うのですが、正直、当初、私はこの案件を最後までまとめるのは無理ではないかと思っていました。しかし御社はそれを見事にまとめあげられましたね。御社のプロジェクトメンバー方々の本当に大変なご苦労があったのだと推察します。これまでのメガソーラーのプロジェクトファイナンスは、土地利用権に関する契約や事業開始までの許認可がシンプルな案件が多かったのですが、御社は土地利用権や許認可関連の複雑なメガソーラー案件の展開に新たな可能性を広げました。

木南:ありがたいお話ですね。本当に事業モデルが組みあがるまでには、ご相談してから1年ぐらいかかりました。入り口段階でこれはダメですとおっしゃらず、とことんお付き合いいただきましたので、それで最終的に御行にアレンジャーをお願いしました。

Question 3

今回の案件を通じて感じられた新生銀行の特長をお聞かせください。

木南:率直に申しますと、常にプロジェクトのすみずみまで理解している方とダイレクトに話ができるというところが一番助かります。我々の部隊はそんなに大所帯ではなくて、少ない人員で複数の案件を同時に動かしていますので、スピードが要求されます。新生銀行さんは、銀行としての意見を早いレスポンスでもらえる、これが非常に助かりました。それから判断についてあまりに細かいところは、事業者としてもどっちでもいい、というレベルのことがありますが新生銀行さんは大くくりで銀行としてのリスクを捉えていて、リーズナブルに判断いただけて、ある意味高次元な話ができた、そういうところは本当に相談しやすかったですね。

川辺:御社と同様、当行も少人数のチームでプロジェクトファイナンスに取り組んでおり、結果として、役割を担当毎に分けるのではなく、各担当者が最初の案件探しからローンの実行まで全部やっています。担当者が担当する案件のすべてのプロセスを理解しているため、アレンジャーとして主体的に案件をコントロールし、関係者間の調整を図り、ディールを決められた期日内にクローズさせる上での強みになっています。

木南:その主体的な視点をもっておられるというところが非常に良かったと思っています。

Question 4

当初の新生銀行グループの出資から菊川市の案件までを通じて、新生銀行グループ全体としての印象はいかがでしょうか?

木南:ポジションを取るところがはっきりされていると思います。ここはやる、ここはやらない、ここは攻める、ここはこれぐらいで止める、といった具合に、割とはっきりされている。いうなれば銀行の方針と、現場の担当の方の行動が、完全に一致しているのだろうという印象はあります。そのため、その方針にそっているかどうか我々が判断することができます。

川辺:初期の段階で、経営層と十分に議論して取組方針を決めましたので、取り組みに対して明確な方針と使命を持っています。我々フロントの社員全員が、相談を受けたらクイックレスポンスを大事にし、かつ、責任を持ってレスポンスするように心がけていますが、その背景にあるのは、経営層と現場の距離が近く、認識を共有していることだと思います。

Question 5

メガソーラーマーケットは黎明期を脱しつつあると思うのですが、その他の再生可能エネルギーを含むマーケットの展望を教えてください。

木南:メガソーラーからいきますと、当面は市場の成長はあると思います。というのも、すでに設備認定を取得した案件や現在設備認定取得に向けて動いている案件が全国に相当数あると思うので、工事、ファイナンスともにまだ数年間は案件数の積み上げが確実に起こると思います。ただ、買取価格(タリフ)がさらに下がってくると、開発難易度がぐっと上がります。そうなると業界全体では参入する会社や開発を継続できる会社の数が減り、知見や実績のある会社だけ残る「プロ市場」になっていくのではないかと思います。現状で年間7〜8GWの導入ペースですが、これが年4〜5GWペースに緩和していくとみています。 一方、国の方向性としても力点が風力、洋上風力、地熱などにシフトしていくと思いますので、これらは今後着実に伸びる市場という気がしています。ただ、いずれも着工まで時間のかかる市場ですので、粘り強く案件開発を行っていく必要があります。

タリフ
本文では、(電力)固定価格買取制度(Feed in Tariff。略称FIT)における電力買取価格を指す。

Question 6

今後の御社の戦略をお聞かせください。

木南:太陽光は、タリフが36円の今年度も案件開拓を進めており、昨年度を超える規模の開発を行うことを計画しています。また、次年度タリフ(32円程度か)になっても当面開発は継続します。ただ、次年度のタリフで本当に収支がマッチする案件がどれくらいあるかは現状未知数です。地熱については、すでにFS(Feasibility Study:実行可能性調査)に取り掛かっています。2MW以上の規模に絞って開発したいと思っていますが、1件目の着工を早く迎えたい。また洋上風力も具体的案件の開拓に入っていますが、ここは国内では事業開発された実績があまりないので、早く実績を作った事業者が先行者メリットを取れるだろうと思っています。このため、なるべく早く初期開発に取り組みたいので、そういうスピード感にぜひお付き合いいただければと考えています。また、海外展開も今後考えたいと思っていますが、日本は残念ながら固定価格買取制度の導入がドイツなどと比べて遅れました。ドイツの企業は固定価格買取制度を先駆けてやったことによって、パワーコンディショナー、架台といったいろいろな部材メーカー、ノウハウをもったファンドやデベロッパーなどが育ち、すでに海外に進出しています。日本においては、我々のようなプレーヤーは今ようやく育ちつつあるところです。しかし、我々はある意味国の制度で育ててもらった会社なので、いずれは日本代表として、成長するアジアの再生可能エネルギーマーケットに参入したいという意識はあります。中期的な課題として、インドネシアで地熱発電をやるとか、フィリピンでバイオマス発電をやるとか、タイで太陽光発電を行うとか、そういった展開をしていきたいと思っています。

川辺:新生銀行の戦略も御社の戦略と似ています。今はメガソーラー中心ですが、洋上風力、地熱などの他の再生可能エネルギー案件、また、環境配慮型のガス火力発電所の案件も検討を進めています。それぞれのプロジェクトの内在するリスクは異なりますが、プロジェクトリスクを評価するノウハウ、そのリスクをコントロールするノウハウは同じですので、我々も御社と同様に開拓者として新しい分野に積極的に取り組んでいきたいと思います。

パワーコンディショナー
太陽電池モジュールからの直流電力を家庭で使える交流電力に変換する機器
架台(ガダイ)
太陽光発電システムの太陽電池モジュールを載せる台や枠のこと

Question 7

レノバ様が今後新たなチャレンジを試みるうえで、新生銀行にどのようなことを期待しますか?

木南:現在、我々の企業規模に比べるとかなり大きなメガソーラー案件を手掛けようとしていることに加え、風力や地熱や他の再生可能エネルギー案件を積み上げようとしているので、相当な資本が必要となります。資本的にはまだまだ足りない状況ですので、成長段階である我々のステージに相応しいファイナンスのあり方をぜひ検討いただけたらありがたいと思います。今回、大分県九重町のプロジェクトのアレンジャーをお願いしましたが、これもそういう部分があります。我々としては資本が限定的な中で適切なストラクチャーでのファイナンスがつくかどうか、が重視するポイントであり、御行からそれに応える提案をいただきました。基本的には、そういうところを一層強化していただけるとありがたいですね。

川辺:成長企業をどう銀行として支援していくか、というのが銀行としての大きな役割でもあり課題でもあると思います。VBIのひとつの柱として、まだ非常にアーリーな段階のステージの会社に、その成長性を評価してエクイティ性の資金を入れるという活動を積極的に取り組んでいます。また、今般のレノバさんとの取り組みのように、事業参画という形で、ファイナンス面でコーポレートではなく、事業のキャッシュフローを評価して、プロジェクトに対するキャッシュフローベースのファイナンスをご提供し、一緒に成長していくという取り組みも積極的に行っています。今後、この両方の取り組みを一層強化していきます。

木南:いいたかったことは、まさにそういうことです。本当の意味でのキャッシュフローベースのファイナンスをして欲しい、ということです。それから、レバレッジドファイナンス。成長段階だと、金利水準そのものへのこだわりよりも、その資本についての対策という方が先立ちます。ぜひ、その観点は引き続きお願いしたいと思います。もうひとつ、新しい分野をこれから開拓するにあたって、地熱でも洋上風力でも、国内にまだあまり例がないので、我々も研究しなくてはなりませんが、資金を提供いただける銀行さんの側でも一緒にスタディし、ファイナンススキームを含めたノウハウを一緒に構築することができれば、ありがたいと思っています。

川辺:新生銀行でも風力や地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーへプロジェクトファイナンスを提供できるよう鋭意研究中で、実際いくつか案件ベースで検討を始めています。また、すでに実績のあるメガソーラーへのプロジェクトファイナンスに対しても、今後、一層洗練させたファイナンススキームを提供したいと思っています。新生銀行としても、ファイナンサーとして、御社とともに再生可能エネルギー業界を盛り上げて、業界の発展に貢献できればと思っています。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

(2014年2月)

以 上

アレンジャー
本文では、融資金融機関の取りまとめ役を指す。ファイナンシャル・アレンジャーは原則として自ら融資を引き受け、スポンサーや借入人と基本的な融資条件につき合意した後、その条件に基づき協調融資する金融機関等を募集し、これら融資団を代表してスポンサーや借入人と利害調整を行う。
コーポレート
本文該当箇所では、コーポレートファイナンス(ローン)の意味。コーポレートファイナンスは、企業(借入人)の信用力に依拠したファイナンス。