「ベンチャー企業がアジアで電動二輪車(EV)のビジネスを展開。この挑戦を機動性でサポートしてくれる銀行があった」

テラモーターズ株式会社 代表取締役社長 徳重 徹

新生銀行 VBI推進部ビジネスインキュベーション室 石川 貴夫

2010年の会社設立当初、渋谷のたった4畳半のオフィスからスタートし、経済成長著しいアジア市場で二輪車のEV(以下、「Electric Vehicle」)の販売を目指して世界へ飛び立ったベンチャー企業、テラモーターズ株式会社(以下、「テラモーターズ」)。同社の徳重社長との対談をお送りします。
新生銀行は、日本国内を中心に活躍する企業から、テラモーターズのようなグローバル展開を見据えるベンチャー企業に至るまで、新生銀行グループのもつ機能と知見を最大限に提供しながら、お客さまの成長を支えていきたいと考えています。

Question 1

今回の出資を通じて、新生銀行の印象を教えてください。

徳重:当社は、EVの製造から販売までを海外で手掛けています。当社のターゲット市場である東南アジアについては、急速な経済発展とガソリン車の普及により大気汚染が急速に進んでおり、EVに対するニーズが極めて高くなっています。日本の高い技術が集積された当社のEVを提供し、アジアのEV市場にイノベーションをもたらすことによって、これらの国々の社会的課題の解決に関わっていきたいと考えています。個人的には、ベンチャー企業が当初からアジアでの事業展開を目指すという、事業として正直無茶苦茶なことに挑戦していると思っています。最近ようやく事業の形ができて自信が出てきましたが、企業として立ち上がったばかりの段階で、新生銀行には融資ではなく投資で、しかも銀行本体から投資をしてもらいました。私自身、大手保険会社に勤めていたことがあるので、ベンチャーキャピタル(以下、「VC」)とは異なるビジネスモデルである銀行がベンチャー投資を行うことの大変さを理解しており、行内では色々な議論を交わされたではないかと推察します。また、銀行は「堅い」というか、決算書を精査し、何枚も稟議書を書くために検討に時間がかかるといったイメージを持っていましたが、新生銀行には、当社の理念、事業内容に加え、当社の海外現地拠点であるベトナムやフィリピンの現場もしっかり見ていただき、従来の銀行とは異なる機動的な対応が印象的でした。

石川:当行はVBI(ベンチャー・バンキング・イニシアチブ)の考え方のもと、「従来の民間商業銀行とは異なるアプローチで、企業が最大限の成長を実現できるサポートをする」というビジョンを掲げています。御社の理念やビジネスモデルに魅力を感じ、まさにVBIのビジョンに合致する相応しいパートナーと考えました。さらに、御社への出資を通じて、アジア地域の環境問題の改善へ貢献できること、また日本の優れた技術力を持つベンチャー企業のグローバル展開を支援できることは、金融機関としてとても意義深いことであると感じています。

テラモーターズ株式会社 代表取締役社長 徳重 徹

テラモーターズ株式会社 代表取締役社長
徳重 徹

新生銀行 VBI推進部ビジネスインキュベーション室 石川 貴夫

新生銀行 VBI推進部ビジネスインキュベーション室
石川 貴夫

Question 2

新生銀行が出資した前後で御社の事業展開はどのように変わりましたか?

徳重:新生銀行本体に出資していただいたお蔭で会社としての信頼度が増し、日本のみならず海外のVCからの出資も受けることができました。当初の目標であった10億円という資金調達の高いハードルも、無事に乗り越えることができました。これから海外事業展開を本格的に開始する時期に入り、特にバングラデシュでの案件が形になりつつあります。資金調達によって、事業展開に必要な市場調査や製品開発、人材の確保や販売チャネル等が整い、各国政府の規制への理解も深まり、事業を遂行するうえでの確度が高まってきました。今年からは売上の数字も見えてくると考えますが、アジアのEVマーケットが拡大していくという感触はかなり確信に近いものになっています。

石川:現状、御社が大がかりな投資をするタイミングではないことを承知していますが、御社の堅実なお金の使い方が印象的です。今は増床されていますが、創業時から変わらないこの渋谷の4畳半のインキュベーションオフィスにもこだわりを感じます。

徳重:ターゲットとする市場が急拡大するタイミングが見えてきた時に、一気に資金投入して攻めの戦略を取りたいと考えています。今年あたりチャンスが到来すると見ていています。外部の人から見れば、当社は攻める一方のように見えると思いますが、私の中ではかなり堅実な経営を心掛けています。
我々はROI(Return on Investment、投資利益率)を特に重要な指標と掲げていますが、それには二つの意味があります。 一つはかけるお金に対するリターン。もう一つはかける時間に対するリターンです。この二つの面をしっかり管理しなければなりません。シリコンバレーにいた時、私はある日本企業から出資を受け一人で起業しましたが、その投資家からは、今出資している以上の資金的な支援はできませんと言われました。要は、売上がなければ給料はなしということです。自分で生きていくお金は自ら稼ぎ出さなければならないという意識を常に持ちながらやってきたことが原体験にあります。それまでは大企業に勤め安定的な給料を貰えていたのが、MBAを取得して起業してから、将来が何も保証されない環境に一変しました。自分から動かなければ仕事もないわけですから、名刺交換ひとつするにしても知恵が湧きますよね。現在も、プリンターでプリントアウトする時に、なるべくお金をかけずに工夫するよう社員には言っています。こうした経験は、後に起業家を目指す可能性もある当社の社員にとっても価値あることだと思っています。勝負をかけるところや大事なところではお金かけても良いですが、それ以外ではどケチに徹する、これを徹底してやっています。時間の使い方についても同じことが言えます。

テラモーターズは2010年創業のベンチャー企業。設立当初からEVでの海外展開を目指している。
当社の電動バイクA4000iは3元素リチウムイオンバッテリーを搭載することで、航続距離150kmを実現。アジア市場へ進出するフラグシップ商品とし、2014年から本格的に展開していく計画である。

Question 3

今後の海外での事業戦略についてお聞かせください。

徳重:インドのマーケットは面白いと考えています。我々は、世界の競合に対し「日本」の会社であるという大きな強みがあるわけで、インドで当社のEVを1万台でも売ることができれば世界に相当なインパクトを与えることができます。それは、日本人に対して「もっと海外でチャレンジしようよ」という強いメッセージを伝えることにもなります。スピード感ある日本のベンチャー企業が、アジアの現地企業と手を組んで大きく成長することにより、ひいては日本経済にも貢献していくことが私の一つの理想です。

石川:当行としても、御社のような小さな会社でありながら、世界に出て大きな市場を狙いにいくような、志のある企業をどんどん応援していきたいと考えています。このような企業が日本でもっと増えていけばよいと思うのですが、一方で、受け手となるアジアの国々にとってみれば、彼らにとって日本のような海外のベンチャー企業と組むことに対するリスクは感じないのでしょうか?

徳重:アジアの国々では、特に「ベンチャー企業だから」という感覚があまりありません。そもそも彼らにとって、色々なことがこれから始まり拡大していく世界なので、大手企業だろうがベンチャー企業だろうが、これらの国へ進出してくる全ての企業が彼らにとって「ベンチャー」になります。そのような環境下で事業を立ち上げた実績を作った人は高い評価が得られるそうです。実際、日本の大手企業が海外進出する際には、まず2-3人を送り市場調査することから始まります。この規模感から言えば、我々ベンチャー企業が行うことと殆ど変わりません。一方、コミットメントとスピードはベンチャー企業の方がはるかに速いので、現地の企業からパートナーとして選ばれる確率は大企業よりも高くなります。

石川:やる気のあるベンチャー企業は、どんどんアジアに出て戦った方がよいということですね。海外の人材確保の点に困難はないのでしょうか。

徳重:当社の場合は、「EVでイノベーションを興し、クリーンで持続可能な社会を創造する」というビジョンに共感してもらうことができ、現地でもいい人を集めることができています。特に、インドでのEV市場においては、まだトッププレヤーはいなくて戦国時代の様相でありどこが勝つかわからない。日本というブランドを持つ当社のEVで戦えば世界に勝てると見込み、さらにベンチャー企業という小回りの利いた環境下で果敢にチャレンジしてみたいという人が、当社には来てくれています。

Question 4

御社の事業展開に対する課題を教えてください。

徳重:私の中で事業展開がやや遅れ気味にあるのですが、製造業かつEVという新しい業界特性に鑑み、すぐにはビジョンどおりに進まない点もあると理解しています。これまで事業を行ってきた中での一番の収穫は、商売においてまず「価格」ありきの発想をしなければいけない、ということが肌感覚で分かったことです。売上を伸ばすためにボリュームゾーンを獲得するには、やはり価格が大事です。一方で、品質は日本基準にこだわる必要はないと思います。品質を確保するため上市までに時間をかけている間に、そこそこの品質で進めてしまう米国などの海外企業に追い抜かれてしまいます。日本と米国の企業を同じ業界で比較した際に、時価総額で圧倒的な差が付いていて日本企業は劣勢に立たされていますが、違いはこれから市場が伸びるであろう新興国でどれ程大きなエクスポージャーを持っていますか、という投資家からの期待感の表れだと思っています。日本の企業は従来の発想を変えていかなければいけません。

石川:日本の大企業が海外展開の従来のやり方からギアチェンジしていくには時間がかかるかもしれませんが、だからこそベンチャーが実現できるのかもしれませんね。

徳重:私はアップル、サムスンを超えるメガベンチャーを目指していますが、ベンチャー企業だからこそ成し遂げられることだと思っています。今後、当社の規模を拡大していくためにはボリュームゾーンをますます取り込んでいく必要があります。事業を進めるにあたり、採算が取れるのか、スケーラビリティがあるのかを慎重に見極めながら事業戦略を練っていくことが肝心だと考えています。

石川:徳重社長がご指摘している点は我々金融機関にとっても耳が痛い話です。金融機関が特にローンでファイナンスをする際には、製品の品質や技術の完成度にこだわった観点でも審査してきた経緯があると思います。特に、ベンチャー企業ではその時点で十分でなくても、商品や製品が持つマーケット性を評価しながら、柔軟な資金付けができるような体制を作っていくことが必要だと思います。新生銀行については、従来の伝統的なコーポレートローンでのファイナンスの供与に加え、出資や資本性ローンなど、さまざまな種類のファイナンスを提供することが可能であり、お客さまのニーズに沿った機動的な対応を取ることができるようにしています。

Question 5

今後、新生銀行に期待したいことは何ですか?

徳重:当社は成長するに従って資金需要が拡大していくビジネスモデルであり、その点にも魅力を感じて新生銀行が投資していただいたと考えています。長いお付き合いをしていく中で、当社の細かな事業リスクも見えてくるはずですし、今後はいいタイミングで融資もお願いできればと思います。また、これまで御行の国内の店舗網や取引先のネットワークを活かした営業先の紹介もしていただきました。銀行からの紹介となれば、話が早く進み助かります。

石川:我々は既に出資をしましたが、それで終わりとは思っていません。御社の事業計画を踏まえ、今後見込まれる海外での工場建設資金の手当てなど、将来展望できるさまざまな機会を視野に入れたうえで投資を決断しており、今後もサポートしていくつもりです。さらには、アプラスや昭和リースなど新生銀行グループの持つ法人・個人への販売金融の仕組みや幅広い金融ツールを海外でもご提供できるようにしていきたいと考えています。

徳重:新生銀行は、他の邦銀とは違ったフレバーを持っていると感じています。産業の発展に銀行が果たしていく役割は非常に大きいと思っていますし、新生銀行が今後たくさんの日本のベンチャー企業を育てていくことに期待しています。

石川:海外市場に挑戦する日本企業がますます増えている中で、特に世界に挑戦する多くのベンチャー企業を応援していきたいと考えています。新生銀行の過去の歴史を紐解いても、日本の産業の成長・発展に寄与していくことは我々の使命であり、VBIのビジョンにも掲げられているテーマでもあります。こうした観点からも、お客さまとはさまざまなお取引を重ねることにより、長期的なリレーションを重層構造的に構築しながらサポートしていきたいと思います。御社との間でも新生スピリットみたいなものをこれから醸し出していければよいですね。

(2015年3月)

以 上