『多くの中小企業から一番に頼られる銀行になってほしい』

株式会社洸陽電機 代表取締役会長 山本 吉大

新生銀行 プロジェクトファイナンス部 森田 知典

新生信託銀行 営業部 柳瀬 伸也

株式会社洸陽電機(以下、「洸陽電機」)は、1993年創業の電気工事業に端を発する会社です。同社は、現在は自ら電力を作り全国規模へ供給する会社への飛躍を遂げていますが、その起点となったのが、新生銀行グループが組成を手掛けたメガソーラー発電へのプロジェクトファイナンスでした。
同社山本会長との対談には、新生銀行グループによる中堅中小企業に対する新規事業支援の一つの形がわかりやすく示されています。

Question 1

現在の事業内容について教えてください。

山本:当社は、建設業の電気工事を請負う会社としてスタートしました。しかし、その後「下請けからの脱却」を図る中で、これからは社員一人ひとりが頭を使って仕事をするやり方へ変えなければならないと思い、省エネルギーサービスや省コスト、省力化に関する自社の技術を使った提案型営業を開始しました。これが、現在のビジネスモデルの源流になっています。
その後、省エネルギーサービスや、デマンドコントロールといった、エネルギーマネジメントに関わる機械の特許を取るなどするうちに、2005年の京都議定書の発効に端を発してエコ意識が広がり、さらに2011年の東日本大震災をきっかけに、国の電力買取制度による再生可能エネルギーの積極的な推進が始まりました。
当社では太陽光発電の建設工事を受注する機会が増えてきましたが、会社の事業拡大や経営の安定を目指す中で、自分たちで発電所を作り、「クリーンなエネルギーを賢く使う」という仕組みを事業のビジョンにして、まずはエネルギーの安定供給が最も実現できそうな地熱発電からスタートすることにしました。
現在は、太陽光発電事業を中心に、自社で発電した電気を主としつつ、外部の太陽光発電事業者(IPP: Independent Power Producer等)から集めてきた電気も活用し、自社で管理してお客さまのもとへ届けるという「スマートエネルギー・コミュニティ」を事業の軸に据え、安価なエネルギーを賢く使う社会へのお手伝いをしていきたいと考えています。

株式会社洸陽電機 代表取締役会長 山本 吉大

株式会社洸陽電機 代表取締役会長
山本 吉大

新生銀行 プロジェクトファイナンス部 森田 知典

新生銀行 プロジェクトファイナンス部
森田 知典

Question 2

新生銀行と関わったきっかけを教えてください。

山本:新生銀行さんとのお付き合いは、2012年に地熱発電事業を行う際に資金調達のご提案をいただいたところからスタートしました。ディスカッションをする中で、「地熱発電を開発するには設備だけでなく地元との調整や地域との共生も必要であり、百聞は一見にしかず、です。現場を一度見に行きますか?」とお話ししたところ、即座に「行きます」とのお返事をいただきました。地元の人達へのヒアリングも通じて、当社の地熱事業の内容やスタンスを正確に理解していただきました。そして、両社で地熱発電の話を進めているうちに、(新生銀行から)「太陽光発電事業には取り組まないのですか?」と聞かれました。それをきっかけに、太陽光発電についての本格的な議論が始まり、当社として開発期間の短い太陽光発電を優先して取り組むようになりました。当社は超大型ではなく小ぶりの太陽光発電所を中心に開発していますが、新生銀行さんからは発電所毎に別々に資金を調達するのではなく、複数の発電所を一つのプールにまとめてプロジェクトファイナンスを組成してみてはどうか、という趣旨のご提案をいただきました。

森田:新生銀行としても、2012年当時は太陽光発電に対するプロジェクトファイナンスの組成を本格的に始めた時期で、社内でようやく第1号案件の貸出承認が下りた段階でした。第1号案件も、その後の進行中案件も、ほとんどがSPC(特定目的会社)を使ったスキームでの組成を検討していました。そのような中で、洸陽電機さんには新生信託銀行による信託スキームを使ったプロジェクトファイナンスの提案を行ったのですが、信託銀行が事業主体となるプロジェクトファイナンスのスキームは国内では先駆的なものでしたので、新生銀行グループにとってもチャンレンジングな取り組みになると考えていました。

新生信託銀行 営業部 柳瀬 伸也

新生信託銀行 営業部
柳瀬 伸也

新生銀行 大阪営業部 細田 哲也

新生銀行 大阪営業部
細田 哲也

Question 3

信託スキームによるプロジェクトファイナンスを選択したのは何故ですか。

山本:当時は、太陽光発電所の土地を賃貸で調達する発電事業者が多かったのですが、当社は自社の電源として長期的に保有するために土地を購入していく方針を決めました。新生銀行さんの当初提案も、当社の信用力をもとに借入を行うコーポレートファイナンスの提案でしたが、その後、今後土地を保有していくのであれば、オフバランスでの調達を検討した方が当社単体のバランスシートに対する負担が抑えられるうえに、スピード感を持った事業展開を目指すことができるのではないか、とのお話をいただきました。そこで当社の方で監査法人とも相談した結果、会計上オフバランス処理が可能だとわかり、信託スキームを使ったプロジェクトファイナンスを検討することになったのです。

森田:洸陽電機さんはベンチャーのステージにあり、(プロジェクトファイナンス上の)SPCのスポンサーの立場に立つのに十分な資本力を持ち合わせていなかったことに加え、小型で複数の太陽光発電所に対するファイナンスを行うにあたり、一つのプールに纏めてファイナンスを組成した方が、案件組成の手間やコストを抑えることができるという利点がありました。そこで、新生銀行が通常プロジェクトファイナンスで使用するSPCのスキームよりも、信託銀行を使ったスキームの方が相応しいのではないかという結論に至り、新生信託銀行に相談し洸陽電機さんにご紹介しました。

柳瀬:新生信託銀行にとっても洸陽電機さんとの取り組みが初めての発電設備の受託案件でした。新生信託銀行では、2011年頃に茨城県の公営の廃棄物処理施設のレベニュー信託ディールに取り組んだり、2012年に震災復興工事のためのホテル開発プロジェクトを受託したりしていました。私たちには信託を使って社会貢献できないかという問題意識が元々あり、この話をいただく前から自然環境にやさしい再生可能エネルギーに係る発電設備の受託についても、いつでも対応できるように準備をしておりました。そのような時に新生銀行からタイミング良く相談を受けましたので、ぜひやらせていただきたいとお願いをしました。

Question 4

案件を組成する中での苦労話や良かった点について教えてください。

山本:案件組成を開始した頃、今よりもさらに中小企業の色合いが強かった当社からすると、正直言ってそこまでやるのか、というくらい大変な作業を強いられました(笑)。新生信託銀行さんのスタンスは、法令違反にならないような世間一般で行われているレベルのことであっても、細部にわたって厳格にリスク分析をして、一つひとつのリスクへの対策を講じて乗り越えなければならない、というものであり、リスクと法令に対する高い倫理観に大変驚きました。

柳瀬:信託スキームを使う大きなメリットは、その太陽光発電所が信託銀行の審査を通った物件であるという対外的な高い信用を獲得できることです。また、倒産隔離の実務的な観点からSPCスキームよりも信託スキームの方がスポンサーリスクの排除の度合いが強いと投資家様に判断していただけるようです。新生信託銀行の受託基準は法令順守、投資家保護の観点から決められており、自社所有の物件であれば目をつぶるような細かい部分の整理についても対応していただかなければならず、洸陽電機さんには、実務面で多大なご負担をおかけすることとなってしまいました。しかし、洸陽電機さんが新生信託銀行からのさまざまな要求に一つひとつ真摯に対応してくださったことで、万が一の際にも法的に権利が保全されたプロジェクトファイナンスのスキームを作ることができました。案件の取り組み当初は想定していなかった事象が次々に出てきた、非常に難易度の高い案件でしたが、決してあきらめず真摯に対応したくださったことに大変感謝しております。

山本:新生信託銀行さんの目線を学ぶことによって、土地回りの契約条件の付け方を含めて、どのようにしてファイナンスが付きやすい案件に仕立てていくかという視点においてとても勉強になり、見えない落とし穴がある程度見えるようになりました。当社の財務体質からすると、もしコーポレートローンで調達していたらこの第1号案件で精いっぱいだったかと思いますが、一つの信託スキームを完成させることによって、本件以降の案件に応用しやすくなり、当社が第2号、3号案件に取り組む可能性も見えてきました。新生銀行さんとご縁があって本当に良かったと思いますし、当社にとって、この方法を選択する以外にはなかったと思っています。2年もかけて根気強くディールに取り組んでくださったことに大変感謝しています。

Question 5

新生銀行グループで連携したポイントは何でしょうか?

森田:本件の鍵は、新生銀行のプロジェクトファイナンス組成チームと新生信託銀行、そして当行大阪支店の密接な連携にあります。プロジェクトファイナンス組成チームと新生信託銀行は東京に所在。一方、洸陽電機さんは神戸に本社があって物理的な距離が存在しましたが、大阪支店が法人営業担当として日頃から会社の営業状況や太陽光発電事業の進捗などをヒアリングし、情報を共有することで、新生銀行グループとしての円滑なチーム連携を図りました。

細田:本件では、プロジェクトファイナンスの前段階としてコーポレートローンでのつなぎ資金融資を検討していました。我々法人営業チームが得た情報を行内に還元し、つなぎ資金融資とプロジェクトファイナンスの両面で案件がうまく組成できるように努めました。案件組成後も、プロジェクトファイナンス室(現在のプロジェクトファイナンス部)ではプロジェクトのモニタリングを、我々はコーポレートクレジットのモニタリングを担うことで役割分担し、協調しています。

柳瀬:新生銀行グループは他行に比べて比較的規模が小さく、互いに顔が見える程度の規模の組織の中に、多様な機能と経験豊富な人材を多く抱えています。本案件のように、お客さまのニーズに合わせながら新生銀行グループ内でうまく連携できる案件を多く作っていきたいと思います。

Question 6

今後の展望を聞かせてください。

山本:当社では、太陽光発電の第2号、3号案件の検討を既に開始しています。また、当社がもともと検討していた地熱発電の話も、太陽光と比べて一段ハードルが高いものだと認識していますが、本格的に進めたいと考えています。当社は、地下資源の探査や発電機のセッティングなどを実施できるスタッフがそろっているという点に強みを持っています。さらに、2016年には電力小売市場の自由化が予定されており、我々みたいなベンチャー企業にとっては、地産地消エネルギーの開発や地域のスマートエネルギー・コミュニティの創出に大きなビジネスチャンスが存在しています。当社でも今後一層地域に根ざした発電事業を行っていく必要があります。一方で、ベンチャー企業の事業を実現させるためには、外部から資金調達を行うことが大前提になり、金融機関が担うべき役割は大きいと思っています。

細田:新生銀行としても、今のところ再生可能エネルギーに関するプロジェクトファイナンスの組成の中心は太陽光発電ですが、風力やバイオマス発電など他の電源での取り組みも既に開始しています。地熱についても高い関心を持っており勉強しているところですが、ぜひ太陽光案件同様、共に考えながら案件を作っていきたいと思っています。

森田:我々もベンチャー・バンキング・イニシアチブの考え方のもと、ベンチャー企業のような色合いを持って新しいファイナンスの仕組み作りに取り組んでいく銀行になるべきだと思っています。太陽光発電事業へのプロジェクトファイナンスのように、一般の事業においても、事業から生み出されるキャッシュを適切に評価し、キャッシュフローファイナンスを設計することによってお客さまの加速的な成長をサポートする仕組みをどんどん考えていきたいと思っています。その仕組みを実現するためにも、一つのソリューションとして新生信託銀行の信託スキームを使うとか、日頃のコミュニケーションや企業分析をしている支店と連携するなど、グループ間の連携を最大限活かした取り組みを目指したいとも考えています。まずは、太陽光の案件をきちんと仕上げていくこと、その上で地熱や水力などの分野も手掛けて、再生可能エネルギー事業の発展に寄与することができれば良いですし、さらには国全体のエネルギー施策にも貢献していきたいと思っています。

山本:第1号案件に取り組んだ際、当社は20億円ぐらいの売上規模だったのですが、今はその何倍にも上る成長を遂げることができ、中小企業の規模ながらエネルギー業界において相応のポジションを確立することができたと自負しています。この案件の成功がなかったら、ここまでの成長はできなかったと思います。新生銀行グループには、多くの中小企業から一番に頼られる金融機関になってほしいと期待しています。

(2015年5月)

以 上