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「新たなマーケットでの資金調達の枠組みを協働して創り上げることができた」カナディアン・ソーラー・アセットマネジメント様、新生銀行対談(2018/2/20)

カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人 執行役員/カナディアン・ソーラー・アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 大竹 喜久

株式会社新生銀行 プロジェクトファイナンス部 部長代理 木内 一孝

株式会社新生銀行 シンジケーション部 営業推進役 實川 忍

Question 1

2017年10月、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人は東証インフラファンド市場へ上場されました。日本のインフラファンド市場について教えてください。

大竹社長:まずインフラファンドとは、複数の投資家から集めた資金をもとに、発電所や空港などの社会基盤(インフラストラクチャー)に対して投資を行い、そのインフラ資産から得られた収益を分配する仕組みをいいます。制度上はREIT(Real Estate Investment Trust、不動産投資信託)をベースにしていますが、インフラファンドが直接売電をする仕組みではなく、SPC(Special Purpose Company、特別目的会社)等が売電した収入に基づき賃料を収受する仕組みとなっています。そのため、インフラファンドの収益はSPCを運営するオペレーター(運営事業者)に依拠する部分があり、インフラ資産の運営が適切かつ安定的に行われることを担保するための上場要件や、インフラ資産の運営を担当するオペレーターに関する情報開示制度などが追加的に整備されています。
また、投資対象のインフラ資産については、原則、稼働済みの安定的な収益が創出されている施設に限定されているなど、開発リスクを投資家に負担させないシンプルな商品設計が義務づけられています。

インフラファンドは資産を保有・運営しますが、実際の運用はアセットマネジメント会社(資産運用会社)が行うルールになっております。私自身も投資法人では執行役員、アセットマネジメント会社では代表取締役社長という立場です。
インフラファンド市場ですが、海外ではインフラ開発に際して民間資金を積極活用する仕組みが普及しており、上場・非上場を問わず、大規模なインフラファンドが多数存在し、40兆円程度の市場があると試算されています。特に豪州、米国、カナダ、英国、シンガポールなどの先進諸国において、相応のマーケットが形成されており、上場インフラファンドとしては2016年4月時点で時価総額15兆円となっています。さらには経済成長の基盤として多額のインフラ投資が見込まれるアジア諸国でも市場成長が見込まれています。一般的に景気の影響を受けにくく、長期的で安定した収入が期待できることから、年金資金等の運用手段としても利用されています。

日本でも、今後少子高齢化が見込まれる中で、政府支出による社会基盤の維持・整備にも限界があり、民間資金の活用期待から、2015年4月に東証のインフラファンド市場が創設されました。究極的には、コンセッション方式(公共施設の運営権の取得)によるPFI(Public Fund Initiative、民間資金等活用事業)案件の資金需要にも広く対応したいという政府の意向があって作られたものですが、まずは再生可能エネルギー発電所、中でも太陽光発電所を投資対象とするファンドが立ち上がっています。
市場発足後の2016年6月にタカラレーベン・インフラ投資法人さんが初の上場インフラファンドとなりました。当初は配当金の損金算入が可能となる非課税期間が実質10年に限られていて、FIT(Feed-in Tariff、固定価格買取制度)期間の20年に満たないものでしたが、2016年4月1日に施行された「租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令」により、上場インフラファンドは税務上の導管性※が20年間と認められたことから、以降徐々に上場を目指す動きが活発化していきました。

当投資法人は2017年10月に4番目のインフラファンドとして上場しました。スポンサーが世界中で事業展開をしているカナディアンソーラーグループであるという強みを活かして、インフラファンド初のグローバルオファリングという形を取りました。

※投資法人から投資家に対して支払われる配当等の額を投資法人が損金算入できる制度。税務上の導管性が認められることにより、投資法人での課税と投資家での課税の二重課税が排除されることになる。

インフラファンドの仕組み

Question 2

東証インフラ市場における御投資法人の特徴について教えてください。

大竹社長:当投資法人は、国内の太陽光発電施設13物件、取得価額総額約304億円、時価総額約180億円で上場しました。上場当時指摘されていた、時価総額が小さいが故の流動性の乏しさというインフラファンドの一つの弱点を解消するため、当投資法人は資産規模を意識的に高めた点が特徴です。中でも、主要資産である熊本県の益城町発電所はパネル出力47.6MW(メガワット)となっています。従来は、比較的小規模な太陽光発電施設を束ねて資産ポートフォリオを構成するケースが多く、成長性にやや懸念があったかに思われますが、上場REITと同じような資産規模の大型発電所を入れることで、今後の成長期待にも繋がっています。
それ以外にもう一つ大きな特徴として、カナディアンソーラーグループのビジネスモデルである「垂直統合モデル」があげられます。これはグループで太陽光モジュールの製造から太陽光発電所の開発、資産の所有、管理・運営までを一貫して行うものであり、当投資法人は資産の所有・運用を担っています。このモデルを活用して、日本国内でも豊富な実績を2013年から積み重ねてきました。本インフラファンドの資産規模としては、早期に1,000億円まで増やしていきたいというのが目下の目標です。
おかげさまで新生銀行様をはじめ多くの金融機関のサポートを受け上場することができましたので、外部からの情報も増えてきており、インフラ資産の取得についてもこれまで以上にやりやすくなると考えております。

CS益城町発電所

Question 3

今後の成長戦略についてお聞かせください。

大竹社長:今回、インフラファンドとしては初めて、グローバルオファリング(レギュレーションS)という手法を取りました。これは米国を除く海外の投資家の方々に直接アプローチし、株式公開に参加していただくというものですが、海外の投資家の方々はインフラ投資に非常に慣れていらっしゃり、また日本市場についての知識もお持ちで、日本のFIT制度が諸外国から見ても投資に非常に有利な制度であるということを十分に理解されていました。私共はFFO(Funds From Operation)※からの配当を重視するという、欧米ではメジャーな仕組みでご説明しましたが、それに対する理解も深いと感じました。また、カナディアン・ソーラー・インクが米国ナスダック市場に上場しており、世界的な知名度も有していることから、比較的スムーズに受け入れていただいたと思っています。
※当期純収益から物件売却して得た利益等を除き、実際には支出を伴わない減価償却費を加えたもの。
日本の投資家の方々にもご理解をいただいたのですが、ESG投資(Environment、Social、Governance)という観点でもご説明をさせて頂いたところ、そこにも強く共感していただいたと感じています。

木内:国内機関投資家にとっては、比較的新しく成長途上の市場として映っていると思いますが、実際の反応はいかがでしたか?

大竹社長:国内機関投資家の方々にとってのJ-REITとの違いの一つとして、日銀の買い入れ対象資産になっていないという点があげられます。成熟しているJ-REITと似てはいるものの、異なる市場であり、J-REIT投信の運用対象にもなっていないということを指摘された方もいらっしゃいました。一方、インカムゲインを重視されている機関投資家の方々が多く、当投資法人の魅力も理解していただきました。再生可能エネルギーの普及と地域社会への貢献という投資理念に賛同いただける機関投資家の方々も多くいらっしゃいました。全般にJ-REITと較べると、歴史が浅く、まだ資産規模が小さいことから、機関投資家の方々にとって、まだなじみがないのだろうと感じました。

木内:今後は、投資家層の裾野拡大や市場の広がりも期待できるということでしょうか。

大竹社長:そうですね。市場の成長性が理解され始めており、実際にタカラレーベン・インフラ投資法人さんも、日本再生可能エネルギー・インフラ投資法人さんも増資を成功されています。市場規模として、現時点では時価総額約450億円という状況ですが、さらに成長していくものと思います。インフラファンド市場の活性化のため、東京証券取引所さんからも力強い後押しをいただいており、IRフェアなどの場で幅広い投資家の方々向けに情報発信する機会をいただいています。現状、個人投資家に対する知名度もまだそれほど高い状況ではないといえます。それでも最近メディア等で取り上げられている影響もあり、高い利回りが注目され始めています。機関投資家から個人投資家の方々まで幅広くビジネスをご理解いただけるように引き続きIR活動を行っていきたいと思います。
なお、J-REITも2001年創設時には2銘柄でしたが、現在では60銘柄弱と順調に増えてきました。その間どういったことが起きたかというと、J-REIT投信ができインデックスができ、投資に対する判断基準ができあがりました。インフラファンドも、我々を含めて新しいファンドができてきて、発展途上の段階にあります。個別に投資する方だけではなく、投資信託といった形で投資する方もどんどん増え、投資家も多様化し、グローバルオファリングも増えていくかと思います。今、英語で情報開示しているところは我々含め2法人だけですが、今後は開示の透明性も広がっていき、外国投資家も増えていくのではないかと思っています。

Question 4

新生銀行と関わりを持つようになったきっかけを教えてください。

大竹社長:日本法人のカナディアン・ソーラー・プロジェクト社に、御行のご担当者が頻繁に営業に来られ、ファイナンスの相談に乗ってもらっていたことがきっかけです。そこから信頼関係を構築して頂いたことから、資金調達の件についてもご相談させていただきました。御行は大手行であることに加えて、プロジェクトファイナンスで実績を積み上げていらっしゃいます。かつ、業界の知見をお持ちの銀行と感じましたが、今回は上場インフラ投資法人に対する太陽光発電設備の取得資金としての融資を検討してもらいたい、という話であり、上場インフラ投資法人向けファイナンスとしては先例も乏しい中で、御行としても初の試みでのご尽力に感謝しています。
御行には、アレンジャーとして各参加金融機関、特に地方銀行との橋渡し役になってもらったことにも多大な感謝をしています。今回のシンジケーションでレンダーとしては十二分に当投資法人をご理解いただけたと思いますので、今後はエクイティ面でもご出資協力いただけないかどうか、ご相談させていただきたいと思います。
また、スポンサーであるカナディアン・ソーラープロジェクト社も、大分県日出町に建設中である「大分県日出町太陽光発電所」(パネル出力53.4MW)の建設・運用のための160億円のノンリコースプロジェクトファイナンス融資契約を貴社と締結させていただくなどますます御行とのつながりを増していくものと考えます。

實川:シンジケーション担当としての立場ですが、最初に案件のご相談をいただいた際には、先行案件と比較した場合、本件はそのプロジェクトの規模および調達金額が過去最大であり、また、本邦初のインフラ投資法人への無担保・無保証のファイナンスでの大型シンジケーションいう意味では必ずしも簡単な案件ではないと考えました。しかしインフラ投資法人での資金調達をJ-REIT同様に広げていこうとの強いご意思を感じ、弊行としても、インフラ投資法人のデットマーケットの発展にアレンジャーの立場で貢献できるという意味でも、非常にやりがいのある案件と考えました。
再エネ業界ではカナディアンソーラーグループはトップクラスであり、また、大竹社長はじめメンバーの方々がJ-REITマーケットで多くのご経験を有していらっしゃることが、弊行内での安心感に繋がりました。また、これからインフラファンド市場全体を発展させていこうという熱い思いを、我々に対してもそうですが、バンクミーティングや個別IRなどの場でも投資家の皆さまに熱心に語られ、そういった姿を拝見しながら、ぜひご一緒に大型の資金調達を成功させたいとの思いを強めました。

大竹社長:当初から、御行はプロジェクトファイナンスに対する造詣が深いという印象を持ちました。太陽光発電所の特性、プロジェクトとして見た場合の強み、弱みを分析されたうえで、ポイントを的確にとらえ、適切な判断をしていただきました。2017年前半は、インフラファンドのマーケット状況があまりよくなかったこともあり、なかなか進捗しない場面もありましたが、その中でも粘り強く取り組んでいただき、誠意あるご対応にも感謝しております。結果的に、シンジケートローンには多くの金融機関に参加していただき、そのコーディネート能力も素晴らしいと感じました。
上場インフラファンドというのは、多くの金融機関にとって新しいマーケットであり、行内稟議では大変なご苦労もされたことと思います。私共は今後、早期に資産規模1,000億円程度にもっていきたいと考えています。継続したファイナンスを行う必要がありますので、引き続き多くのサポートをいただきたいと思っております。

木内:弊行としてもカナディアンソーラー様とともに、インフラファンド市場の拡大に寄与していきたいと考えています。無担保条件やご融資期間中の資産の追加取得などが通常のプロジェクトファイナンスの枠組みには収まらず、レンダー側として特に考慮が必要なポイントではありましたが、御投資法人の今後の成長性や比較的保守的な財務戦略、カナディアンソーラーグループとしての強固なオペレーション体制などが総合的に評価され、最終的には多くの投資家の理解・サポートを得る形での上場が実現できたと考えています。今後はJ-REITとプロジェクトファイナンスの枠組みを組み合わせたような融資形態として定着させ、御投資法人およびインフラファンド市場の成長をサポートしていければと思います。

大竹社長:J-REITの保有資産である商業ビルやマンションなどと比べると、当投資法人のキャッシュフローはFIT制度に基づいた売電収入から得られる賃料収入から成り立っており、キャッシュフローが安定的かつ透明で分かりやすいことから、プロジェクトファイナンス同様、キャッシュフローに依拠したファイナンスとして検討いただきやすいのではと思っています。

實川:弊行もアレンジャーとしての立場から、まずは裾野が広いJ-REITへの投資家(レンダー)に対するマーケティングを想定しました。他方、弊行が多くのシンジケーション実績を積んでいる国内再エネプロジェクトファイナンスへの投資家市場も視野に入れ、当該投資家層にもご納得いただける説明をカナディアンソーラー様とも綿密に打ち合わせ、インフラ投資法人としての特性を説明させていただくうちに、理解を深めていただきました。その結果、投資家層を広げることができ、申込み超過のシンジケーションに繋がったと思います。御投資法人およびアセットマネージャーの皆さまには、投資家(レンダー)に対する案件説明という点でも、多大なご協力を賜り、ありがとうございました。

Question 5

ESG投資についてお伺いします。ESG投資という見方が投資判断に影響したと感じましたか?

大竹社長:ESGは、環境、社会、ガバナンスという非財務面の尺度による投資の観点です。欧米の主要な投資家の方々は、もともとESGを投資判断材料として重視しておりますが、最近になって、国内でも持続可能な投資手法として広く認知されてきました。ESGの意識が高い企業や事業からは、長期・安定的なリターンが期待できるという考え方です。
当投資法人も、どちらかというと短期的なキャピタルゲインよりもインカムゲインが重視されていると認識しておりますので、安定した収益を投資家の方々に着実に配分することを最優先に考えています。再生可能エネルギーの普及を目指した当投資法人はまさに環境に配慮した投資機会であり、さらには地域社会の経済発展に寄与するものであると考えております。太陽光発電設備の立地は、今まで有効活用が比較的難しかった場所が多く、そのような地域における雇用機会の創出、税収の増加など地域経済振興にも寄与していると考えています。また、ガバナンスという点でいうと、REITの仕組みを採用しており、多層的なガバナンス体制を敷いています。まさにESGの3つの要素も備えた投資であると評価いただけていると思います。

Question 6

投資法人へのローンに関して、グリーンボンド評価を取得された目的についてお聞かせください。

大竹社長:グリーンボンドとは、気候変動・水・生物多様性対策など、環境に好影響を及ぼす事業活動に資金使途を限定した債券及び借入金のことです。2017年10月に行った13物件の資産取得のための資金調達に対して、日本格付研究所によるグリーンボンド評価を取得致しました。評価項目の1つめは、調達資金の使途の90%〜100%がグリーンプロジェクト(環境問題の解決に資する事業)であるということです。2つめは、管理運営体制がしっかり整備されていて透明性が非常に高く、調達資金がグリーンプロジェクトに対して確実に充当されることが評価されますが、インフラファンドの仕組みからして、この点でもまさに適合しています。以上のことから総合評価で「グリーン1」という最上位の評価をいただいたと思っています。尚、当投資法人は再生可能エネルギーの普及に加えて、地域経済への貢献という目的を持っています。この評価手法は事後検証という点でも、非常に有効な手法でした。
グリーンボンドの発行はインフラファンドの中で初めての試みです。将来性を見据え、機関投資家の方々に加え、個人の方々にもESG要素を評価していただき、投資判断時のベンチマークになっていけばよいと考えています。

Question 7

今後の日本の再生可能エネルギー市場についてお考えをお聞かせください。

大竹社長:日本の再生可能エネルギーは普及が遅れていると言われており、COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)などの国際会議においてもその対応の遅さについて批判を受けることがあります。地球温暖化防止のため、クリーンエネルギーをいかに普及させ、次世代に引き継いでいくかは大きな国家的課題です。また、東日本大震災以降の化石燃料への過度な依存は大きな問題で、安定供給などのエネルギーセキュリティという観点からも改善が必要です。国内の再生可能エネルギー発電設備に対する投資促進が化石燃料比率の低下に繋がると思いますが、マーケットに投下された資金をうまく回転利用するためにも、インフラファンドがあるものと理解できます。

木内:国内再生可能エネルギーの普及のためにも、カナディアンソーラーグループとしてのグローバル展開における競争力が活かされていくことですね?

大竹社長:資源エネルギー庁が事務局を務める「太陽光発電競争力強化研究会」のレポート※においても、日本はプレイヤーの専門性がまだ磨かれていない、すべてのプレイヤーがバラバラにやっているところに原因があるのではないか、と指摘されていました。私たちのビジネスモデルである「垂直統合モデル」という言葉がそこでも使われていて、私共の国際的な運用方法を、本インフラファンドを通じて皆様のご理解に少しでも寄与させていただければ幸いです。また、太陽光発電産業が発展する一助となることを目指したいと考えております。

太陽光発電競争力強化研究会について(経済産業省)

(2018年3月)

以 上