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2014年日本経済の展望
〜足元を固めて着実に前進する年に!〜

横浜商科大学 商学部教授 (株式会社新生銀行 社外取締役) 可児 滋 氏

横浜商科大学 商学部教授
(株式会社新生銀行 社外取締役)
可児 滋 氏

日本経済とアベノミクスの3本の矢

あけましておめでとうございます。

わが国の景気は、現状、個人消費や公共投資が堅調に推移して、緩やかな回復基調を辿っています。特に、個人消費は、シニア層を中心とする活発な消費行動に加えて、全体としての消費者マインドの向上から、総じて好調を維持しています。一方、民間部門の設備投資は、非製造業に加え、ここへきて製造業も改善の兆しがみられています。そして、こうした状況の下で、企業収益が顕著な改善をみており、また、労働市場の需給がタイト化する中で、賃上げの可能性も強まっています。

このように、景気回復の基軸となる生産・所得・支出の好循環が始動していますが、これを安定的に持続させるためには、どのような要素が重要となるのでしょうか。周知のとおり、アベノミクスで3本の矢が放たれましたが、今後の日本経済の展望はこの3本の矢の行方にかかっているといっても過言ではありません。そこで、以下では、本年の日本経済をみるにあたって、3点に絞ってみることにしましょう。

金融の動きはどうなるか?

第1の矢は、大胆な金融緩和です。日本銀行は、量的・質的金融緩和政策に沿って、長期国債、ETF、J−REIT等の資産の買入れを行い資金を供給しています。そして、こうした政策実行の下で、全体として金利、資金調達コストを抑制し、また予想インフレ率に働きかける効果が表れて、実体経済にも、また人々のマインド面でも好転の動きがみられるようになっています。
日本銀行では、今後とも、2%の物価安定の目標実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を継続する、としています。

もちろん、経済の先行きには内外のリスク要因が潜伏しており手放しの楽観は禁物ですが、大胆な金融緩和による景気回復の後押しは、今後とも変わることはないものとみられます。

財政の動きはどうなるか?

第2の矢は、機動的な財政政策です。これは、当面は機動的な財政運営を行いつつ、中期的には財政再建を指向するという政策です。大幅な財政赤字が続くなかで政府が抱える債務残高が高水準にある状況下、明確な財政健全化計画の下で、財政構造改革を強力に推進していく必要があります。これに関して、政府はすでに中期財政計画を決定しました。この計画では、2015年度までに基礎的財政赤字の対GDP比を2010年度に比べて半減し、2020年度までには黒字化、その後、債務残高の対GDP比を漸減させるとしています。

仮に、こうした財政健全化に向けて腰が据わっていないとマーケットがみるようなことにでもなれば、それが国債金利の上昇圧力となって働いて、第1の矢である金融政策の効果に悪影響を及ぼす恐れがあります。

今後、財政再建が、この中期財政計画に沿って着実に推進されることが期待されます。

成長戦略はどうなるか?

さて、最後になりましたが、アベノミクスで最も重要と考えられる第3の矢である新たな成長戦略についてみましょう。この成長戦略は、民間活力を最大限引き出し、また女性が働きやすく、若者、高齢者が能力を存分生かせる環境を整備し、さらにグローバリゼーションの戦略的実行を指向するという政策です。

少子高齢化等を背景として、経済は大きく変容し、そのなかで新たな市場を創出するさまざまなニーズがマグマとして潜在しています。そして、企業はそうしたニーズを掘り起こし、それをビジネスに結び付けていく戦略を構築することになります。このような展開を実現して経済基盤の強化を図るためには規制・制度改革等、企業が活動しやすい環境を整えるのが何よりも必要です。

第1の矢により日銀から金融機関に流れた資金が、そのまま金融機関の手元にとどまっている限りは所期の効果は十分に発揮されず、ダイナミックな経済活動による資金需要の増加から金融機関から企業部門に資金が流れることが必要です。そのためには、金融機関自身が培った目効きを働かせて、企業のビジネスチャンスを掘り起こして需資を創出することが重要です。もとより、こうした展開は短期的に指向すべきではなく、長い目で見て着実に遂行すべき施策となります。

着実な成長を目指して

アベノミクスにより1本の矢ではなく3本の矢が放たれたのは、頑強な屋台骨をベースにして力強く前進する日本経済を再構築する狙いがあるからです。そのためには、一歩一歩着実に前進することが重要です。本年の経済は消費増税の影響で、駆け込み需要とその反動があり、多少でこぼこした道程になることが予想されますが、さまざまな内外要因が交錯して影響を及ぼす経済の先行きに一直線で急角度の回復を期待することはできません。

「人の一生は、重荷を負うて遠き路を行くがごとし」

本年の日本経済が、足元をしっかりと固めながら着実に前進する年になることを願って、この小稿の筆を擱くこととします。

各稿は各執筆者が執筆時点の経済その他の状況ならびに見解を踏まえて作成したものです。 また、各稿は情報提供を目的としたものであり、お客さまに特定の投資方針や相場観等を推奨するものではありません。 各稿は執筆時点の信頼できると思われる情報に基づいて各執筆者が作成しておりますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。 ご投資にあたっては、お客さまご自身の責任と判断で行っていただきますようお願いいたします。

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