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金融検査が変わります

西村あさひ法律事務所 顧問(元金融庁長官)五味 廣文 氏

西村あさひ法律事務所
顧問(元金融庁長官)
五味 廣文 氏

去年話題になったテレビドラマに、「半沢直樹」っていうのがありましたよね。その中に、金融庁の「黒崎検査官」が銀行の「隠し部屋」を見つけ、中においてある段ボール箱を開けてもらう場面がありました。実は、あれに類することが実際にあったんです。もっとも、箱から出てきたのはドラマのようなパーティグッズではなく、不良債権に関連する書類だったのですが。

これまでの金融検査

金融庁には、金融機関に立ち入って、その経営状況を把握するために書類を確認するなど、いわゆる金融検査を行う権限が法律で認められています。ドラマで描かれたのもこの金融庁検査なのですが、1997年秋の日本の金融危機以降、銀行の不良債権問題が終息する2004年頃まで、金融庁による銀行検査は、不良債権の確認がその中心的課題になっていました。

貸出残高と不良債権比率の推移

1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本の銀行の不良債権は急増します。しかしその抜本処理は先送りされ、結果として1995年の住宅金融専門会社の損失処理をきっかけに、不良債権問題が一気に顕在化しました。金融市場は、銀行が本当のところどれほどの不良債権を抱えているのかがわからなくなり、どの銀行がいつ破綻するか、という疑心暗鬼に覆われました。それが、銀行がドミノ倒しに破綻する恐れのある金融危機を招いたわけです。

そんなわけで、当時の金融庁検査は、銀行の不良債権の実態、言い換えれば銀行が実際にはどれほどの損失を抱えているか、を解明することに主眼を置いたわけです。しかし、時代は変わりました。銀行が不良債権問題を克服して久しくなり、日本経済はデフレ脱却の旗印の下、構造改革による成長に挑戦しています。金融検査の主眼も自ずと変わります。昨年9月、金融庁は「金融モニタリング基本方針」を発表しました。

【金融庁検査とは】信用秩序の維持や預金者保護を目的に、銀行法などに基づいて金融庁が実施する検査

これからの金融検査

この「基本方針」は、検査・監督の課題として、デフレ脱却に向けた取り組みを金融面からサポートすることをあげています。そのために、検査を見直して、「個々の金融機関がどうなっているか」という検査から「業界全体としての課題にこれからどう対応するのか」という検査に、さらに、「最低限必要なことができているか」という検査から「ベストに近づくために何をしているか」という検査に、方向性を転換するとしています。要するに、間違いを見つける検査から、成長を後押しする検査にしようということですね。

こうした方向性の下、実際の検査では、金融機関が将来性のある収益を上げられるか、「目利き」によって発展性のある融資先を見つけ出せるか、などを分析し、同時に、小口債権の不良債権認定は金融機関の判断に委ねる、コンプライアンスに関する過度に形式的なルールは見直して「コンプラ疲れ」に対応する、などの手法をとるとしています。金融機関経営の自由度を高めながら、持続的に収益をあげる実力があるかどうかを見極めようというわけです。「過去の損失」ではなく、「将来の収益」に着目した検査になるのですね。

銀行への期待

銀行はリスクをとることで収益をあげます。つまり、リスクは収益の源泉です。銀行がリスクを取って融資をすることで、取引が成立したり技術が商品化されたりして付加価値が生まれます。すると、融資されたお金はまた銀行に戻ってきます。つまり、金融は触媒なんですね。どこに触媒を投入すれば持続力のある収益を生むか、が問われるわけです。

金融は触媒 どこに触媒を投入すれば持続力のある日本の経済成長を生むか、が問われる

経済社会環境の劇的な変化が構造改革を待ったなしにしている今、取るべきリスクも従来とは様変わりしています。人口減少や経済の大都市集中など、銀行の商圏の変化も経営のあり方に思い切った変革を求めます。こうした環境変化に適応した持続力のある収益構造と経営能力が、今後の金融検査では重点的に問われます。銀行が日本経済の構造改革を支え、経済成長を形作っていけるよう、官民協力して頑張っていただきたいものです。私も、こんな検査がしてみたかった。

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