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進む中国の金利自由化

野村総合研究所(北京)有限公司 金融システム研究部長 神宮健 氏

野村総合研究所(北京)有限公司
金融システム研究部長
神宮健 氏

中国の金利自由化の経緯

中国で金利自由化が進みつつある。中国における金利自由化を振り返ると、まず1990年代に銀行間市場の金利が自由化された。次に、金融機関の人民元の貸出金利・預金金利については、2004年以降、「貸出金利は下限を管理(上限無し)、預金金利は上限を管理(下限無し)」という方針で自由化が進められた。つまり、銀行に一定の(概ね3%前後)の利鞘を保証しながら、徐々に貸出金利の下限を引下げ、預金金利の上限を引上げる形である。そして、2013年7月に貸出金利下限は撤廃され、足元では、預金金利の上限を残すのみとなっている。その預金金利の変動上限も2014年11月に、基準金利の1.1倍から1.2倍へと引上げられた。

図表1 中国の金利自由化の経緯
  • (注)*都市・農村信用社は除く。**個人住宅ローンは除く。
  • (出所)中国人民銀行「貨幣政策執行報告」、各種報道より野村総研(北京)作成

金利自由化加速の背景

最近になり、金利自由化への歩みが速まった背景には、市場から金利自由化を催促されていることがある。人民銀行(中央銀行)は、慎重に金利自由化を進めてきたが、逆に言えば、国内金融において自由金利の分野と規制金利の分野(銀行預金)が並存することになった。そして、ここ数年、金融商品の開発手法やインターネットが発達する中で、市場参加者が自由金利の分野を利用し、自由金利の預金に近い金融商品を提供するようになった。一種の金融イノベーションである。具体的には、一時日本でも話題となった中国のシャドーバンキングと、中国金融界で最も注目を集めているインターネット金融があげられる。

図表2 中国の金融の変化
  • (出所)野村総研(北京)作成

中国版シャドーバンキング(※1)とは、2010年以降、金融引締め策が採られる中で、主に銀行が75%の預貸比率規制(銀行は預金100元に対して75元までしか融資できない)の厳格適用等を回避するために行なった迂回融資である。銀行の融資は、不動産開発業者等の発行する債券や信託商品に置き換えられ、預金者は、規制金利の定期預金の替わりに、自由金利だが元本保証のない信託商品やそれらを組み込んだ銀行の資金運用商品を購入した(※2)。こうして、事実上、金利自由化が進んだ。

  • ※1 シャドーバンキングの規模は推計によって異なるが概ね30兆元(約560兆元)とされる。ちなみに金融機関の融資総額は約80兆元(2014年9月末)。
  • ※2 こうした枠組みは銀行が設計し、利鞘もほとんどは銀行が取っている。信託会社や証券会社は、チャネル提供の手数料を取る。
図表3 シャドーバンキング
  • (出所)野村総研(北京)作成

インターネット金融では、2013年6月に中国eコマース最大手のアリババが導入した「余額宝」がある。消費者はネット上の決済サービスを提供する「支付宝」(アリペイ)の口座に買い物用の資金を積んでいるが、「余額宝」はその遊休資金をマネーマーケットファンドに投資し、しかも、いつでも換金可能にしたもので、事実上の自由金利の決済性預金となった。発売1年で規模が約5,700億元(約10.7兆円)に達し、中国金融界に衝撃を与えた。その後、類似商品や各種のインターネット金融による自由金利商品が次々と現れている(※3)。

  • ※3 例えば、P2P(インターネット上で個人対個人の貸借の場を提供するプラットフォーム)等。なお、これらの商品に対しては規制が追いついておらず、現在、当局が規制を検討中である。リスクを防止するために単に禁止するのではなく、新たな金融チャネルの提供という芽をつむことがないように配慮されている模様である。
図表4 インターネット金融
  • (出所)野村総研(北京)作成

預金保険制度の構築へ

預金金利の自由化まであと一歩であるが、その実現には預金保険制度を構築しなければならない。預貸金利の自由化により、預貸利鞘が縮小して経営難の金融機関が現れる可能性があり、預金保険と破綻金融機関の処理のメカニズムが必要となるからである。また、これまで預金保険制度が無かった中国では、逆説的に、銀行で販売される商品は全額保証されるとの暗黙の社会的了解があり、商品を販売する銀行側も、顧客側もあえてリスクに注意しないというモラルハザード(倫理の欠如)が生じていた。その意味では、預金保険の導入によって保証の有無が明白になり、高額預金者等による銀行経営のモニタリングも強まると期待される。
そうした中で、人民銀行は2014年11月に「預金保険条例」の草稿を発表した。このため、今年中に預金保険制度ができると予想されている。保護される預金額の上限は50万元(約940万円)で、人民銀行によれば約99.6%の預金者の預金が全額カバーされる。

日本への含意

中国の金利自由化が視野に入ってきたが、これは日本にとっても他人事でない。中国は、国内の金利自由化を進めつつ対外資本取引の自由化(※4)を進めているからである。中国の金利自由化は、今後、中国の資本流出入がどの程度自由になるか、例えば、日本からの人民元投資がどのようなペースで便利になっていくかを見る上でも重要である。

  • ※4 いわゆる資本勘定自由化。中国では、直接投資に関わる資本の取引は基本的に自由化されているが、対内・対外証券投資や個人の外貨取引等は規制されている。

各稿は各執筆者が執筆時点の経済その他の状況ならびに見解を踏まえて作成したものです。 また、各稿は情報提供を目的としたものであり、お客さまに特定の投資方針や相場観等を推奨するものではありません。 各稿は執筆時点の信頼できると思われる情報に基づいて各執筆者が作成しておりますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。 ご投資にあたっては、お客さまご自身の責任と判断で行っていただきますようお願いいたします。

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