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最近の日本の株価変動と金融緩和政策の効果

早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 教授 米澤康博 氏

早稲田大学大学院
ファイナンス研究科
教授
米澤康博 氏

アベノミクス以来、多少の変動はあったものの比較的安定的に上昇してきた株価が世界的なレベルで下落している。その原因に関しては中国経済のピークアウト、米国の利上げ政策等が挙げられ、わが国の企業業績は堅調であるが、海外要因によって大きく下落していると解釈されている。この小論ではこれまでの日本株の株価に関して、このような認識が正しいか否か、簡単に評価してみることにする。すなわち、これまでの金融の緩和によって企業業績から見て高くなりすぎていた可能性はなかったのか、の視点から検討する。
株価が妥当か否かを評価することは容易ではない。ここでは長期的な一株当たり利益(EPS)を求め、それに基づいて期待株式収益率を求めて評価する。具体的には過去3年間の平均EPSをもって長期安定的なEPSと想定し、それをその月の株価で除して年率換算して期待株式投資収益率とする(※1)。図1にはTOPIXベースでの当期待株式投資収益率が、同じ対象のROE、および10年国債利回りと一緒に記されている。

  • ※1:基本的に「益利回り」と同じ概念である。益利回りが平均半年の期待収益率に対応していると考えられるのでここではそれを2倍して年率換算している。また、ShillerのPERは同様な長期平均的なEPS計算の下で、PERを算出している。http://www.multpl.com/shiller-pe/を参照。
図1 リスク・プレミアム等
  • (出所)日本取引所グループ(JPX)、財務省、新生銀行金融調査部

国債利回りとの差がリスクプレミアムと解釈できるので、それが低くゼロに近い場合は市場でリスクが考慮されていないとの証左であり、バブルの可能性が大となる。逆に一時的にでもそれが高い場合は、金融危機(リーマンショック)等で投資家が過度にリスク回避的になっていることを表す。適切なプレミアムの下、期待収益率の水準よりROEが高ければ企業は設備投資をする誘引を持つので成長経済としての条件を持つ。この点から図1を見ると2013年以降は特段心配する状況にはないことがわかり、さらに、このような堅調な経済はアベノミクスになって以降であることもわかる。
次に、日本銀行によるリバランス政策の一環として行われている株式による買いオペレーションの効果を見ておこう。図2には各月の日銀による株式ETFの購入額が示されている。その目的は株式の期待収益率の低下にあり、それによって資本コストを下げ、設備投資を促進させることにある。

図2 日銀ETF購入額とTOPIX期待収益率
  • (出所)日本取引所グループ(JPX)、日本銀行、新生銀行金融調査部

その効果は厳密には統計的な分析を必要とするが、ここでは図から直感的に判断しよう。確かに昨年11月よりの第二段の金融緩和以降の多額の購入は期待収益率を下げる効果を持っていたように見える。しかし2011年以降の全体で評価すると下げる効果は見られない。
以上、暫定的にまとめると「株価が堅調であった本年の前半においても株価が高すぎたとの危惧は見受けられない」と筆者は考える。

各稿は各執筆者が執筆時点の経済その他の状況ならびに見解を踏まえて作成したものです。 また、各稿は情報提供を目的としたものであり、お客さまに特定の投資方針や相場観等を推奨するものではありません。 各稿は執筆時点の信頼できると思われる情報に基づいて各執筆者が作成しておりますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。 ご投資にあたっては、お客さまご自身の責任と判断で行っていただきますようお願いいたします。

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