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来年の経済展望:アベノミクスの6本の矢

横浜商科大学特任教授 可児滋 氏

横浜商科大学特任教授
可児滋 氏

新3本の矢と旧3本の矢

本年9月、安倍首相は、アベノミクスを新たなステージで展開するとして、新3本の矢を政策の軸に据えて推進することを宣言しました。この新3本の矢は、希望を生み出す強い経済、夢をつむぐ子育て支援、安心につながる社会保障です。
これで、アベノミクスは新旧合わせて6本の矢を放ったことになりますが、ここで、改めて旧3本の矢の内容をみてみましょう。第1の矢は、大胆な金融緩和です。これにより、日本銀行は大量の国債等を市中金融機関から買い上げることにより、文字通り大胆な資金供給を実施しています。第2の矢は、機動的な財政政策です。厳しい財政状況の中にあって、政府はメリハリをつけた財政支出により需要を創出しています。第3の矢は、民間投資を喚起する成長戦略です。この成長戦略では、規制緩和等によって、民間企業や個人が真の実力を発揮して持続的な成長につなげることを指向しています。

旧3本の矢と新3本の矢

財政政策と金融政策の違い

ところで、なぜアベノミクスで第1の矢が財政政策ではなく金融政策になっているのでしょうか。周知のとおり、日本は借金大国です。GDP比2倍もの政府債務を抱えている国はどこにもありません。
財政では、総花的な支出、いわゆるバラマキ支出を行う余裕は全くないのです。第1の矢で金融の「大胆な」緩和、第2の矢で財政の「機動的な」出動と各々の修飾語のニュアンスからこれを読み取ることができます。しかし、政府はそうした苦しい台所でありながら、デフレ脱却を目指してまさに機動的な財政政策を実行しています。
こうした財政支出は、景気に直接の影響を及ぼす力を持っています。たとえば、財政支出により公共投資が増加すれば資材の需要増、工事作業員の雇用増等の効果があります。GDPは、消費+投資+政府支出+(輸出−輸入)から構成されていて、その構成項目の1つに政府支出があります。すなわち、財政支出は需要創出にダイレクトな効果を与えることができます。
これに対して金融政策は、財政政策のように景気に直接効果を及ぼすことはできません。イギリスに "You can lead a horse to water, but you can't make it drink"(馬を川辺に連れて行くことはできるが、馬に水を飲ませることはできない)ということわざがあります。日本銀行から供給された潤沢な流動性をもとに金融機関がいくら企業に対する貸出姿勢を前傾化させても、金融機関は企業に無理やり融資するわけにはいきません。

成長戦略の重要性

そこで問題は、どうすれば企業が景気の先行き見通しに自信を持って、在庫を積み増し、またこれまで我慢してきた機械類のリプレースを行う等により運転資金、設備資金の需要が旺盛になるかです。
昨年初の拙稿では、旧3本の矢のなかでも第3の矢の成長戦略が最も重要であることを強調しましたが、それはいまでも変わらないどころか、新旧合わせて6本の矢の中でも、この成長戦略こそがアベノミクスの成否のカギを握っているといってもよい、と思います。そして、成長戦略の中身をみると、規制緩和等により民間企業や個人が真の実力を発揮するため、投資の促進、人材の活躍強化、新たな市場の創出、世界経済とのさらなる統合の4つの視点をベースに構成されています。

規制緩和と投資促進

ここで金融緩和が実体経済に浸透するための重要なキーワードは、規制緩和であり、投資の促進です。すなわち、規制緩和の推進により、企業が機動的にビジネスチャンスを掴むことができ、それが投資の促進につながり、そして投資のために必要な資金需要に結び付くことが期待できます。しかし、規制緩和は容易なことではなく、また、即座に効果が出るものでもありません。米国の歴代大統領の中で国民に抜群の人気があった故レーガン大統領もレーガノミクスの1つの柱に規制緩和を掲げましたが、既得権との戦いで思うような成果をあげることはできませんでした。
しかし、投資の活発化で供給力のサイドを梃入れすることが日本経済の潜在成長力の引き上げには不可欠となっています。

金融経済から実体経済へ

日本銀行は、国債のみならずETFやJ-REITといったリスク資産を買入れることにより量的・質的緩和(QQE)を推進しています。しかし、金融政策でいくら頑張って大胆な金融緩和を行っても、企業の資金需要が本格的に増加する素地ができることが必要です。これにより、金融機関に溜まっている資金が企業に流れて、それをもとに企業活動が活発化するというように、金融が実体経済に対してより強くインパクトを及ぼすことが期待されます。そして、円滑な金融に裏付された企業活動のダイナミズムがあって初めて、新3本の矢のうちの第1の矢である「希望を生み出す強い経済」が実現できるのです。

アベノミクスの本丸となる成長戦略が果敢に実行され、またこれがアベノミクスを成功に導き、さらには持続的な経済成長につながることを祈念して、この小稿の筆を擱くことにします。

各稿は各執筆者が執筆時点の経済その他の状況ならびに見解を踏まえて作成したものです。 また、各稿は情報提供を目的としたものであり、お客さまに特定の投資方針や相場観等を推奨するものではありません。 各稿は執筆時点の信頼できると思われる情報に基づいて各執筆者が作成しておりますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。 ご投資にあたっては、お客さまご自身の責任と判断で行っていただきますようお願いいたします。

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