中国経済の今 〜政府のコントロール下で理想的な景気減速、ただ心配は物価上昇率・・・

世界の流れと違う、中国経済

中国GDP成長率の推移

1999年1月〜2008年5月

中国GDP成長率の推移

データ出所:Bloomberg

世界各国は、サブプライム問題に端を発するアメリカ景気後退の影響を強く受けている。特に原油先物価格急騰の影響は大きく、各国で物価上昇を引き起こし、アメリカではスタグフレーション懸念が高まっている。それは、世界中に伝播するかもしれない。

こうした世界経済全体の流れから見ると、中国経済はちょっと様子が違う。

まず、経済成長率の動きをみると、2007年第2四半期をピークに緩やかにペースダウンしている。それでも第1四半期の実質GDP成長率は10.6%である。5月までの月次データを見ても、中国経済は好調そのもの。

固定資産投資は高止まり、小売売上は昨年の夏以降伸び率を加速させ、輸入は増勢を強めるものの輸出も好調を維持、貿易収支を見れば、ここ3ヵ月間、増え続けている。

貿易収支の推移

2000年1月〜2008年5月

貿易収支の推移

データ出所:Bloomberg

小売売上の伸び率

1999年1月〜2008年5月

小売売上の伸び率

データ出所:Bloomberg

中国での心配は物価上昇<

中国で唯一の心配は物価上昇率が高いこと。

もっとも、消費者物価指数はここ数ヵ月は落ち着きを取り戻している。中国では、もともと豚肉の急騰を中心に食品価格が大きく上昇したことが、消費者物価指数上昇の原因だった。食品生産が正常化するにつれて、消費者物価指数も伸び率を鈍化させているのである。ただし、食品に代わって、原材料や燃料の価格が上昇し始めている。そのため、購入価格指数は現在も上昇傾向にある。

物価の伸び率

1994年1月〜2008年5月

物価の伸び率

データ出所:Bloomberg

2008年後半は、中国経済はほぼ理想的な減速をするのではなかろうか。心配される物価上昇であるが、輸入される一次産品の価格はなかなか下がらない。政府は既に、石油精製品、電力価格などの価格を引き上げ始めた。価格の自由化が比較的進んでいる鉄なども、この先価格は上昇しそうだ。全体として物価は高止まりしそうな状況ではある。

ただ、政府がある程度の価格コントロール力を持っていることや通貨「人民元」の上昇速度が加速しており、輸入物価の上昇をある程度相殺できることなどを考えれば、それほど心配することはないだろうと思う。

また、海外からの資金流入については、中国政府が規制しているにもかかわらず止まらない。行政サイドでは、外貨の流入、国内での人民元への交換について厳しく管理し始めているが、過剰流動性はいっこうに収まらない。過剰流動性を抑えるために、金融引き締め政策を続けなければならないところが、中国経済最大の弱点である。

今後の経済見通し

心配な点もあるが、足元を見る限り、投資、消費、輸出のいずれもが好調である。リスク要因も、突然発生したわけではない。これまでの、政府の金融政策、マクロ経済コントロールはうまくいっていると言ってよいだろう。その結果、景気減速はしても、オーバーキル(減速しすぎ)のリスクは少ないと思われる。

なお、北京オリンピックと中国の景気とはほぼ無関係である。2006年における北京のGDPは全国の3.4%、人口は1.2%に過ぎず、北京市の成長率が他の地域と比べて高いという事実もない。また、中国全体では、オリンピックを凌ぐビッグプロジェクト(西部大開発、渤海湾経済開発計画等、いくつもの経済開発プロジェクト)が進行しているのである。
そういったことから、オリンピックが終わったからといって、そのことが要因で経済が減速するということはないはずである。

また、四川大地震については、地震の影響を受けた地域が四川省のごく一部であったため、消費に与える影響は軽微と考えられている。むしろ、復興需要によるプラス効果の方が大きいであろう。

中国株式のこれから 〜株価調整策が効き急落、今後の重要ポイントは政府の姿勢

株式市場をふりかえって

株式市場に関しては、経済とはかなり違う動きを示している。上海総合指数の史上最高値(終値ベース)は2007年10月16日に記録した6,092ポイント。その後9ヵ月弱の間、下げ相場が続いている。ちなみに、7月7日の終値は2,792ポイントであり、高値から▲54%下落している。

確かに今回の下落は大きいが、その前の上昇はもっと大きい。2005年夏から2007年秋にかけて、上海総合指数は6倍に跳ね上がっている。そうした急騰の後の調整である。

上海総合指数とPERの推移

1994年1月〜2008年5月

上海総合指数とPERの推移

データ出所:Bloomberg

さかのぼってみれば、上昇相場の前は4年に及ぶ長い弱気相場であった。

中国本土市場では、個人投資家と個人向けファンドが圧倒的な売買シェアを持ち、また、先物取引や信用取引がないため、どうしても株価は一方向に傾きやすい。本来、そのような不安定さを持つ市場である。

そういった中で、人民元高が進んだこと、企業業績が好調であったこと、過剰流動性の存在などが株価急騰の要因となった。しかし、好材料がたくさんあったにしろ株価は上げすぎたといえる。

その後、政府要人が株式市場のバブルを指摘し、ファンドの新規設立許可をストップしたり、印紙税を引き上げたりした。過剰流動性を抑えるため、金融引き締め政策を強化した。こうした一連の株価調整策が昨年の秋以降、一度に効き始め、株価は急落したのである。

将来の株価を予想する上でもっとも重要なポイント

現在の上海総合指数は、高値から半値以下の水準である。PERは20倍と歴史的には割安な水準となっている。企業業績見通しは、若干弱含み。ただし、通期でも増益は確保できる見通しである。人民元高は加速しており、中国株の資産価値は高まっている。

将来の株価を予想する上でもっとも重要なポイントは、株価に対する政府の姿勢である。今年の2月以降は中立に、4月後半以降はポジティブに変わってきており、株式市場の救済に向けて色々な対策を出していこうという姿勢を見せ始めている。

インフレ、過剰流動性への対応が優先されるため、当面金融引き締め策を続けなければならないが、徐々にそれは薄らぐであろう。その根拠としては、現在行っている資金流入に対する規制の効果がそのうち表れ始めるであろうこと、米国経済が後退期に入れば過剰流動性の緩和も期待されること。また、食品の供給が増加しており、価格がピークアウトの兆しが見えることなど。そういった状況から、本土株式市場はオリンピック前後に底打ちし、秋以降、緩やかな上昇基調に転じると思われる。

中国の強みと環境対策

中国といえば、資源浪費、環境汚染に無頓着といったイメージがあるのではないか。しかし、今後、そうしたイメージは急速に払拭されると思う。政府が政策として、こうした問題に真剣に取り組み始めたからだ。第11次五ヵ年計画の中で、省エネ・汚染物質排出削減が重要な政策課題として取り上げられている。また、今年の全国人民代表大会で、国家環境保護総局が新たに設立された。エネルギー多消費産業、高汚染産業のプロジェクト審査を厳しくしたり、生産効率が悪く、汚染物質を大量に出す遅れた設備を廃棄したり、10大重点省エネプロジェクトを実施したり、都市汚水処理施設、工業排水施設、環境保護などに財政支出を厚くしたり、中央主導で、国をあげて環境問題に取り組んでいる。

とにかく、中国は、変化が速い。そこが日本と一番違うところである。

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