World Report
田代尚機の「中国現地レポート」
2007/11/30
第1回:「やはり上海蟹は美味い!!」

秋は上海蟹の季節だ。9月中旬あたりから市場に出回り始め、11月いっぱいぐらいまでがおいしい時期である。値段はピンからキリまで。北京に駐在していた頃、小ぶりだが1匹150元(約2,250円)ぐらいする極端に割高な上海蟹を食べていた。

もともと蟹は大好物だ。7〜8年前、海鮮市場で上海蟹が売られているのを発見して以来、自宅でも食べるようになった。4年半前に帰国してからも、この時期、北京に出張するたびに、市場で買って、それを友人宅で調理して食べている。

10月後半、北京に出張した際、タクシー運転手に紹介してもらい、北京の南、四環路近くの海鮮市場に出かけて行った。

ここは結構規模が大きく、海産物ならかなりの種類がある。生きたイセエビ、車海老、赤貝、帆立貝、かき、カレイなど。水槽やタライが雑然に並ぶ様子は、東京の築地市場をもう少し猥雑にした感じである。ただでさえ狭い店先に、発砲スチロールの箱が山積みされているが、その中には上海蟹がぎっしりと詰め込まれている。

大きさ、雄雌の違いによって、単位グラム当たりの値段はかなり違う。ちなみに今回買った上海蟹は500グラム当たり42元(雄雌同じ値段)のものを雄3匹、雌4匹。全部で130元。ちなみに、この日の購入量は3人分である。これくらい大きな上海蟹であれば、雄雌1匹ずつで十分だ。

上海蟹は25分程度蒸すのであるが、蒸し始めは蟹が動き回るので、抑えてなくてはならない。ちょっとかわいそうだが、生きることの罪深さを感じる一瞬である。この心の痛みが最後まで残さないで食べようという決意に変わっていき、どんなにお腹いっぱいになっていても最後まで食べてしまうことになる。

蟹には紹興酒が合う。50元も出せば、8年物の花彫(ブランド紹興酒)が手に入る。落花生を塩茹でしたり、市販の四川泡菜(漬物)を用意したり、生姜と角砂糖から姜湯をつくったりすることもある。これらのコストは3人分でも10元程度である。気の済むまで、上海蟹を食べ、紹興酒を飲んでも、一人80元、つまり1,200円程度しかかからない。

中国の海鮮市場も東京の築地市場と同じように、それぞれの店子が同じ種類の海産物を売っているのであるが、売買の様子がずいぶんと違う気がする。中国では、売り手は少しでも高く売り、買い手は少しでも安く買おうと、緊張感に包まれた感じで物が売り買いされている。中国人の値切り方は半端ではない。上海蟹を買うのに複数の店で、蟹の品質、価格を確認する作業を徹底的に行う。そして最後に一番有利な店で買おうとする。もちろん値切り倒そうとする。だからやたらと時間がかかる。

現在、中国の物価は上昇している。10月のCPI(消費者物価指数)上昇率は6.5%に達しており、約11年ぶりの高水準となっている。ただし、だからといって、庶民の生活は非常に苦しくなっていて、深刻な社会問題に発展しつつあるといった見方には違和感がある。

値段が顕著に上がっている食品は豚肉である。中所得者層以上が主要顧客であろうカルフール方庄店(日本ではヨーカ堂、ジャスコぐらいのイメージのスーパーマーケット)では、11月24日現在、500グラムあたりの豚肉(五花肉)は8.8元(約132円)なのに対して、羊は13.6元(約204円)、牛肉は26元(約390円)で売られていた。

羊や牛肉の値段はあまり上昇しておらず、豚肉を食べない消費者には影響はない。庶民の食卓に影響がないとはいわない。しかし、豚肉しか食べられない所得層の方は、豚肉の消費を減らし、鶏の消費を増やすなどで対応していると思われる。

海産物に関しては、価格が若干下がっている。今回紹介した上海蟹は私が買うレベルでは、毎年少しずつであるが、安くなっている。生産量が増えているのと、流通網が発達してきたからであるが、これはほかの海産物にも言えることである。

すべての物価がおしなべて上昇する状態であれば、これは深刻な状態だ。現在の中国は過剰流動性状態に陥っており、そのことが原因で、ディマンドプルインフレ※を招いてしまっているのではないかと心配する研究者は多い。しかし、筆者はそうではないと考えている。中国経済は基本的には生産過剰体質であること。所得上昇は政府によってコントロールされること。目に付きにくい部分で計画経済の痕跡が結構残っていること。・・・。我々の常識では中国経済は語れない。

※ディマンドプルインフレとは、需要が旺盛でその結果、供給が追いつかない場合に起こるインフレのこと。

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