
しかし、北京の生活は至って平穏である。まず、雪害に関して直接的な影響はまったく見られない。それでも物不足に陥っているのではないか。そう思い、北京の街を歩いてみた。まず、目に付いたのが、トラックで果物を売っている人々。いつも通り、路上販売を行っていた。自由市場で買うみかん(ただし、金柑よりも少し大きいぐらいのもので、日本では販売されていないと思う。これが非常に甘くてうまい。)は通常500グラムで3元(1元=15円として、約45円)。だが、ここでは通常4元で販売している。ただし、この時点では値上がりして6元となっていた。50%も値上がりしているわけだが、雪害の影響ではなさそうだ。毎年春節の時期にはこれぐらい値段を上げているようである。ちなみに、かれらは、「春節明けにはまたもとの値段に戻さないと売れないだろう」と語った。


自由市場に出かけてみたが、まず、その入り口で、いろいろな野菜を売っているのを発見した。売り場をはみ出してまで売る商品があることに安心するのであるが、そこではすでに竹の子、とうもろこしが売られていた。スイカもそうであるが、これらの農作物がこの時期の北京で採れるはずがない。こうした必需品と思えない商品ですら市場に流れ出ている様子を見る限り、流通は健全であるといえよう。
肝心の自由市場の様子はまったく通常通り。商品は無造作に高く積み上げられている。ただし、値段は確かに上がっている。キュウリは500グラムで4元。通常よりも50%上がっている。ねぎの値上がりが一番激しく、通常では500グラム1元で買えるものが、3.5元に急騰している。ほかには、トマト、シイタケなどが50%〜70%上昇している。しかし、ジャガイモ、白菜、ニンジンなどはまったく値上がりしていない。
店員に聞く限り、雪害の影響ではなく、春節という特殊な状況下で、価格が変化しているに過ぎないようである。春節では、ちょっと高級な野菜の需要がいつもより高くなる。夏の野菜であるキュウリやトマトが高く売れるのである。しかし、ねぎの急騰は不思議だ。かれらの話では、「春節にはどの家庭も餃子を作るが、その材料としてねぎは大量に使われる」とのこと。需給に合わせて価格が柔軟に変化しているのである。

最後に、カルフール方庄店(スーパーマーケット)をひとまわり。ここの商品は春節であるからといって値上がりはしていないようである。ただし、ヨーグルトの値段についてはちょっと気になることがあった。
この夏以降、原材料である牛乳の値段が上がったので、ヨーグルトの値段も上昇傾向にあった。この日買った蒙牛ブランドの280グラム入りヨーグルトは5.5元。夏ごろと比べれば、20%程度上がっているようだ。しかし、2つ買うと180グラムのヨーグルトがおまけとして付いてくる。
乳製品の競争は非常に厳しい。業界トップは、蒙牛。第二位が伊利、第三位が光明、第四位が三元。それ以下に小さな企業がたくさんある。夏以降のコストアップを価格に転嫁できたのは、第三位の光明まで。三元製品の価格はほとんど上がっていない。こうした厳しい競争下の中で、トップブランドの蒙牛は30%以上増量することで、事実上の値下げ攻勢に出ている。
ミクロで見た物価変動は生き物のようである。その動きのひとつひとつには“ドラマ”がある。少なくとも、雪害だから価格上昇などという単純な発想では計り知れない世界が広がっているのである。
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