インフレとルピー
いま、インドでは13年ぶりの高い水準でインフレが起きています。インフレで最も困るのは、「資産が減った」と嘆く投資家ではなく、低所得者です。生活必需品の価格が上昇するというのは、貧しい人が食べられなくなることを意味します。原油高によってバイオエタノールの原料である穀物の高騰が見られるようになり、昨年から世界各地で暴動が起きたりしています。
では、インドがこのような社会的にも不安な状況になり得るのかということですが、これは、直ちにそうなることは考えづらいといえます。
先日、インド政府はインフレ実態調査レポートを発表し、現在の高いインフレ率の原因となっている品目として鉄鉱石、牛乳、綿花、オレンジ、魚類の5品目を挙げました。このなかに小麦や米などの主要穀物がないことに注目すべきです。インドは農業国であり、穀物を輸出していますが、これらに対し輸出停止など規制をかけることで国内の穀物価格上昇を回避しています。実際、米、小麦に加えて6月にはトウモロコシも輸出停止措置を行いました。一方、輸入を促進することで少しでも物価高騰を抑えています。輸出規制をすると、ますます海外の輸入国からは非難を浴びたりもしますが、インドは自国の低所得者層を守る権利があります。確かに、国際原油の高騰が今後も続けば国の経常収支は苦しくなり通貨にも織り込まれる可能性はありますが、来年は選挙の年でもあり(もしくは今年、前倒し解散総選挙)、現政権はこれ以上のインフレ水準にならないよう最大限のことを行っていくでしょう。1990年代から多くのことを学習しているインドは上手な施策を採れる可能性が高く、ルピー安がさらに進展していく可能性は低いと考えています。
ルピーの価値
現在、インフレと証券投資の引き上げによって対日本円でルピー安気味になっています。
現在、概ね1ルピーは3.0円〜2.5円くらいです。そもそも、インドルピーの価値がどんなものか、100円や1,000円で何が買えるのでしょうか。通貨の価値はまず何が買えるかわからないとピンと来ませんので、まずはそれを紹介してみます。

新聞のバラ売り
デリーメトロ
- ●新聞のバラ売り 2ルピー(5円)
- ●マクドナルドのセット 100ルピー(250円)
- ●雑誌(ビジネス週刊誌) 10〜20ルピー(25円〜50円)
- ●道端で売っているアイスクリーム 5ルピー(12.5円)
- ●125ccバイクが 4万ルピー(10万円)
- ●ノーブランドのポロシャツが 100ルピー(250円)
- ●デリーメトロ(地下鉄)の初乗りが 6ルピー(15円)
- ●バスの初乗りが 2ルピー(5円)
- ●大衆食堂のランチ 30ルピー(75円)
- ●ソニーの大画面液晶テレビが 20万ルピー(50万円)
- ●大統領の月給が 5万ルピー(12.5万円)
- ●路地裏の散髪屋 3ルピー(7.5円)
※1ルピー=2.5円で計算
このようになっています。もちろん地域によって物価に差がありますが、ざっとこんな感じです。
バイク
インフレを超えるラーメン!
さて話は変わりますが、ムンバイの某高級ホテルのランチ・メニューに、値段がなんと1,700ルピー(4,250円)というラーメンがあり、現地日本人の間で有名です。フカひれラーメンならまだしも、普通のラーメンが、しかもインドで4,250円とは常軌を逸しています。なんというインフレでしょう。大統領の給料が5万ルピーですから、大統領でさえ月に30杯も食べられません。
「サブプライム」「バイオエタノールブームによる小麦の高騰」などがこの値段の理由ではないことは確かです。この、意味不明な値付けを見るにつけ思いますが、彼らにとって通貨ルピーの価値とはいったい何なのか?インドの人にとっては、インフレとは何かという話も実はどうでもいいことかもしれません。必要なものが手に入る世の中であれば、彼らはそれでいいのです。そういう意味では、今のインド経済は、ノー・プロブレム(問題なし)なわけです。
シンガポールや香港より高い行くたびに上昇するホテルの宿泊料金、ニューヨークの物件より高い不動産価格については少しプロブレムですが、この極端な値段のつけ方もやはり成長の一過程といえるかもしれません。今後も様々なモノが急騰急落を繰り返し、そして相対的にルピーも安くなり・高くなりしていくと思いますが、外国人向けにラーメンを1,700ルピーに設定してしまう感覚だけはおそらく変わらないでしょう(?)。
今年の1月にはタタ・モーターズ社が10万ルピー(25万円)で超小型車『ナノ』を製造販売すると正式発表し話題になりました。それで、『10万ルピーがどういう値段なのか説明してほしい』とよく言われますが、これを読んで少しはおわかりいただけましたでしょうか?いや、ますますわからなくなってしまったかもしれませんね!
