マーケット情報(経済)
過去の金利政策から今後の資産形成を考える

株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品を説明するページをご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。

世界的にも例をみない、日本の低金利政策

今年8月、日銀による金利引き上げがほぼ確実と言われていましたが、米国で起きたサブプライムローン問題で年内の金利引き上げは、ほぼ見送られそうです。

日本は2006年にゼロ金利政策が解除され金利が引上げられ始めましたが、いまだ世界的にも例をみない異常な低金利状態が続いています。

<主要各国の政策金利推移 (2006年1月〜2007年12月)>

上の図でも分かるように、海外の先進国と日本との金利差は約3〜5%離れています。ヘッジファンド等はこの金利差を利用して「円キャリートレード」と呼ばれる投資を行なっていました。これは低金利の日本でお金を借りて海外で運用する手法で、この取引が大きくなったために円安状態を引き起こしたといわれています。例えば2007年6月には1米ドル=123円にまで下がりました。


円安で目減りした国民資産

日銀は複数の通貨間の為替相場をもとに、円の対外競争力を「実質実効為替レート」という指標で発表しています。

「実効為替レート」とは円と米ドルという日米2国間通貨での関係でなく、米国やユーロ圏、中国といった貿易取引国全体(2007年1月時点でユーロ圏13カ国を含む27カ国・地域)との関係で、円は国際的にどのくらいの水準かを相対的に判断できるようにした指標です。これは多くの外貨の組合せに対する円の強さを示しています。計算方法は円と通貨間のそれぞれの為替レートを各国・地域との輸出入比率で修正し基準時点(日本が変動相場制に移行した1973年3月)を100として算出します。これを「名目実効為替レート」と呼びます。これだけでは国・地域ごとの物価変動率が異なるため、それぞれの国のインフレ率を考慮して修正したものが「実質実効為替レート」です。

<実質実効為替レート(1973年3月〜2007年11月)>

1973年3月末の円の実力を100として計算しており、1ドル=123円になった2007年6月の「実質実効為替レート」は92.8でした。73年以降、日本経済は貿易黒字等による成長基調にあったため、本来であれば「実質実効為替レート」は大きくなるはずですが、実際には1973年よりも円の実力が低下していることを意味します。

ちなみに円の実力が一番高かったのは1995年4月の165.5です。1995年4月19日、東京外国為替市場では1米ドル=79.75円の史上最高値をつけました。

日銀が金利を引上げたい大きな理由のひとつに、諸外国との金利差を解消し円の実力を上げることがあります。これは、個人投資家の視点で考えた際に、「円の価値の下落=グローバル社会における資産の目減り」を意味するため、国民資産が実質減少していることに対する危機感でもあります。

日銀としては3〜4%ぐらいまで金利を引上げることを検討している可能性もあると私はみています。

米サブプライムローン問題の影響で米国の政策金利は2007年9月に0.50%、10月に0.25%の2回計0.75%引き下げられて4.5%の水準になっています(2007年10月末現在)。英国も同様な理由から金利引下げが検討されています。

日米間の金利差が小さくなったことも影響して「円キャリートレード」の解消等により最近の為替相場は円高の方向に動いています。しかし資源価格高騰で好景気のオーストラリアは11月金利を0.25%引き上げました。欧州中央銀行も物価高騰に対するインフレ懸念のため金利引き上げを検討課題としています。そのためこれらの通貨に対しては今後、円は値下がりする可能性があるかもしれません。

低金利政策で増えなかった家計資産

日銀の金利政策が個人に最も影響を与えるのは「資産形成」に関する点です。

前述のように、実質的な円安で日本人の持つ個人資産は国際的に見れば目減りしています。しかし日本に住んでいるとその実感はあまり感じられません。

では、預貯金金利についてはどうでしょうか?

低金利政策で預金をしてもほとんど利子が付かない状態が10年以上続いています。

<預貯金金利の推移(1994年10月〜2007年9月)>

上記グラフは日銀が発表している銀行預金の平均金利を表していますが、1995年頃から預金してもほとんど金利が付かない状態が続いています。そのため預金を預けても資産が増えない状態がずっと続いています。

日本には2006年末時点で1,533兆円もの個人金融資産が存在しています。この莫大な「国民の富」に1%の運用利回りがつくだけで約15兆円もの金利収入が得られます。

下の図は個人金融資産の推移グラフです。

<個人金融資産の推移>

1979年の個人金融資産は331兆円でした。2006年末までの17年間でおよそ5倍に増えました。1年ごとの増加率を平均すると、約年6%。大変高い数字に見えますが、1979年から1988年のバブル崩壊までは毎年9〜11%以上増えていました。その後の景気悪化や低金利で伸びかたが下がっています。逆に2000年から2002年の間はマイナスになって資産が減っていきました。

今年3月22日の参院財政金融委員会にて日銀の福井総裁がバブル崩壊後の超低金利によって家計が失った利子所得が331兆円になることを発表しています。日本の人口は約1億2千万人で、1人あたりで計算すると約270万円の損失です。夫婦2人子供2人の家庭であれば1,080万円の損失です。


物価上昇で実質目減りし始めた個人の預貯金資産

日本人の個人金融資産、約1,500兆円のうち、預貯金の占める割合が半分の約770兆円ありますが、低金利政策の影響を受けやすいため利子所得が増えていません。

バブル経済崩壊後、日本社会は「デフレ経済」という物価が下落していく経済情勢であったため利子所得が付かなくて資産が増えなくても実際にはそれ程、個人の資産への影響はありませんでした。

しかし、最近の原油高騰に代表される物価上昇、いわゆる「インフレ経済」では資産が一定のままでは実質資産の目減りが生じます。例えば、1年後にガソリンを買おうと思って1万円普通預金に預けていても、ガソリン価格が3割、4割も値上がりしてしまっては、1年後、同じ量を買うことはできません。

このような状況下では、本来なら日銀は金利を引上げる必要があると思われますが、米サブプライムローン問題や景気への影響を配慮して、上げることが難しいのが現状です。そうなると個人が自ら資産運用等を考えてインフレによる資産の目減りに対処していく必要があります。

実際、FPとして多くの方の資産状況を見てきましたが、年収が同じ600万円の方でも、この10年間、資産運用をしてきた人と何もしてこなかった人とでは資産額に大きな差ができています。

時間をかけて広がる格差社会

世間では「格差社会」がキーワードになっていますが今後、ますます大きくなるのが「資産格差社会」です。特に少子高齢化が加速して年金問題を抱える日本社会では重要な課題です。 これまでは給与・賃金などの「フロー」の格差が議論の対象になっていましたが、今後は資産「ストック」に関する格差が議論の対象になるのではないでしょうか。

今から資産形成について真剣に考えていくことが大切です。

「アリとキリギリス」という童話があります。日ごろから一生懸命働いて節約をしていたアリは寒い冬を問題なく越せましたが、いつも適当に過ごしていたキリギリスは食料がなく寒い冬を越せませんでした。

これを今の時代に当てはめると、このようになります。

普段から働きながらも、お金や経済について一生懸命勉強していたアリは老後を幸せに暮らすことができました。日々、ただ遊んでいるだけで勉強を辞めてしまったキリギリスは、老後、苦労と不安を感じながら余生を過ごしました。

「勤勉」とは「勤」と「勉」と書きます。よく働き、そしてよく学ぶということです。 日本人は「勤勉な国民」と言われていました。最近、この言葉を聞くことは少なくなりましたが、日本人の美徳といわれる「勤勉」の精神が資産形成にも振り向けられることを願います。

※本稿は執筆者の作成日現在の考え方を紹介するもので、新生銀行が特定の金融商品を勧誘・推奨するものではありません。 本資料は情報提供を目的としたものであり、いかなる有価証券の売買等を勧誘するもの、新生銀行の投資方針等を示唆するものではありません。投資される際は、お客さまご自身の責任と判断で行っていただきますようお願いいたします。
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