
株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品を説明するページをご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。

ロシア経済は「産油国経済」とよく言われます。2007年の輸出総額のうち、原油、石油製品、天然ガス、石炭の4品目で輸出の60.1%を占めているからです(右表参照)。このため、ロシアは中東の産油国と同じように2002年以降の原油価格高騰の恩恵を享受し、貿易黒字は2002年の463億ドルから2007年の1,320億ドルへ2.9倍に急増しました。
この貿易黒字の急増が政府・企業・家計を潤し、企業の設備投資・公共投資・住宅投資からなる総固定資本形成と旺盛な個人消費が経済成長をリードしています。この結果、2008年1〜3月におけるロシアの実質GDP成長率は前年比8.0%で、中国、インドに続く高度経済成長を謳歌しているというわけです。
ちなみに、ロシアは2002年にサウジアラビアを抜き、世界最大の産油国となりました。ただ、中国、インド、ブラジルでみられるように、ロシアでもインフレの抑制が大きな課題となっています。そのために、中国の人民元がそうであるように、ロシアでも中央銀行がルーブルの切り上げでインフレ抑制を目指す傾向があります。
為替については、米ドルとユーロの2通貨を対象とした通貨バスケット制が採用されており、「1ルーブル=0.55×米ドル+0.45×ユーロ」の関係になるようロシア中央銀行は市場で誘導しています。したがって、ルーブルは本来なら米ドルとユーロの中間の動きになります。
しかし、ロシア中央銀行は2007年8月までインフレ抑制のためルーブル切り上げを実施してきました。また、その後も、市場でルーブルが「0.55×米ドル+0.45×ユーロ」を上回って推移するのを容認し、緩やかなルーブル高を実質的に促してきました。(このため、チャート上ではルーブルが米ドルとユーロの中間的な動きになっているようには見えにくいかもしれません。)
最近の為替市場では、世界的に株価が高くなるとリスク資産選好が高まって低金利通貨の円が全面的に売られ、株価が安くなるとリスク資産回避が強まって円が全面的に買われる傾向があります。このため、ユーロがドルより強いというこれまでの傾向が変わらなければ、ルーブルは円高の時には米ドルほど売られず、円安の時には米ドルを上回ってさらに買われるといえるでしょう。
また、インフレ抑制のため、ロシア中央銀行は2008年末までにルーブルの切り上げを再開するとみられています。
ロシアの主要な48銘柄(ドル建てRTS指数の構成銘柄)の時価総額は5月28日現在で約121.2兆円に達しています。このうち、天然ガスの独占企業ガスプロム(時価総額37.4兆円)、石油最大手ロスネフチ(同13.0兆円)、石油第2位ルクオイル(同9.5兆円)など、石油・天然ガス企業には時価総額で日本企業を上回る、あるいは肩を並べる企業もあり、株式市場に与える影響が非常に大きくなっています。石油・天然ガスの主要上場企業は全部で8社あり、時価総額は70.7兆円でRTS指数の58.3%を占めています。
中国本土を除くと、世界の株式市場は米国市場に追随して動く傾向があり、これはロシアの株式市場も同じです。しかし、ロシア市場では石油・天然ガス企業が時価総額に占めるウェイトが大きいため、米国の原油(WTI)先物価格との連動性が高いという特徴も持っています。したがって、世界の株式市場が波乱含みの展開になったとしても、原油価格が堅調であれば、ロシア市場は強さを発揮する傾向がみられます。
ちなみに、原油先物価格は堅調でしたが、米国のサブプライム問題で世界の株式市場が大きく動揺した2008年3月を振り返ると、BRICsの主要株価指数は軒並み下落するなか、ロシアのRTS指数は0.5%安にとどまりました。ブラジルも相対的に小さな下げ幅にとどまりましたが、これは同国も資源国であることが寄与したものとみられます。
そして、原油先物価格が過去最高値の更新を続けた5月をみますと、23日までの月間騰落率は、他の市場が小動きのなかロシアのRTS指数は14.7%高を記録しています。5月のロシア株が大きく値上がりしたのは、市場の信頼が厚いプーチン前大統領が新首相に就任し、経済政策の継続性が確保されたことが好感された面もありますが。
以上の結論として、ロシアの経済・株式市場とも今後の原油価格がその先行きを大きく左右することをご理解いただけたかと思います。その原油価格は、5月21日現在、米国のWTI 先物で前年末比40.2%高の134.59ドルをつけています。原油先物価格が上昇トレンドに入った2002年以降の年間上昇率を大きい順に見ますと、2002年が57.3%、2007年が57.2%、2005年が40.5%、2004年が33.6%となっており、2008年は既に第3位の実績に並ぶ高い上昇率といえます。原油先物市場では200ドルを目指す動きとも言われていますが、これまでの経験則から考えれば、最も高くなっても150ドル程度で、その後は調整に向かう可能性があるのではないかと思っています。
2007年9月からの米国の大幅な利下げ実施を受けて、主要国の長期国債利回りは大きく低下しており、行き場を失った資金が原油先物を中心とした商品先物市場に集中していることが、大幅な資源高の背景にあります。その米国が利下げ打ち止めに踏み切った可能性が高まっており、上値追いを続けている商品先物市場が、夏場にかけ自律調整に転じる可能性は出てきていると思います。
ただ、原油の需要は着実に伸びています。国際エネルギー機関(IEA)によれば、先進国で構成される経済協力開発機構(OECD)の需要は2008年に前年比0.3%減と3年連続のマイナスが見込まれていますが、中国などの新興国を中心とした非OECD諸国の需要は前年比3.7%増と高めの伸びを維持する見込みで、世界全体では同1.2%増(100万バレル増)の日量8,680万バレルと着実な需要増が予想されています。
これに対し、OPECの4月の生産量は日量3,190万バレルで、原油生産設備の稼働率は90.8%に達しており、増産余力が大きいとは言えません。サウジアラビアの生産能力が2009年末に現在の日量1,090万バレルから1,250万バレルへ160万バレル増加しますが、世界全体から見れば、逼迫気味の需給関係が大きく改善されるわけではないでしょう。しかも、世界最大の産油国であるロシアでは2008年1〜4月の生産量が前年実績を下回っています。このため、中東の地政学リスクが原油の供給不安につながりやすい環境は変わらず、中期的に原油価格が強い基調を維持する可能性は高いといえるでしょう。2008年内については、原油先物価格の200ドルまでは上昇しないとは考えていますが、価格が上下の変動を繰り返しながら、2009年から2010年にかけ200ドルの大台乗せが実現してもおかしくはありません。したがって、中長期的にロシアの株式市場には強い追い風が吹きやすい環境が続くと考えています。
IEA(Oil Market Report April.11.2008)
本資料は、リッパー・ジャパンに所属するアナリストの考えであり、リッパー・ジャパン全体やリッパー・グループ全体のものではありません。またリッパー・マーケットは、情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の選択や投資時期の決定は、必ずご自分の判断でなさるようお願いいたします。 さらに本資料は、信頼できる情報源から得た情報に基づき作成されていますが、内容の正確性・完全性についてはこれを保証するものではありません。 そして本資料のいかなる部分も、一切の権利はリッパー・ジャパンに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わずいかなる目的であれ、無断での複製または転送等をご遠慮ください。
本稿は執筆者の作成日現在の考え方を紹介するもので、新生銀行が特定の金融商品を勧誘・推奨するものではありません。 本資料は情報提供を目的としたものであり、いかなる有価証券の売買等を勧誘するもの、新生銀行の投資方針等を示唆するものではありません。 投資される際は、お客さまご自身の責任と判断で行っていただきますようお願いいたします。