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史上最高益なのに株安な日本の「なぜ?」
日本の全企業ベースで集計された法人企業統計(財務省)においても、上場企業での統計でも、日本企業の収益は1980年代のバブルのころの水準を大きく上回っています。それにも関わらず、株価は1989年12月の半分以下のレベルにしかありません。株価は企業の成長力を映す鏡であるはず・・・

※データは2008年3月時点のものであり、将来の傾向・数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
注:Datastream、「会社四季報」よりフィデリティ投信作成
日本株が上がらない本当の理由
さまざまな要因が挙げられていますが、一番の問題は需給関係
昨年の秋以降、世界的に株価は下落傾向を続けています。米国におけるサブプライム問題に端を発する「信用収縮」と「景気後退への懸念」から株価が売られる局面となっているわけですが、各国の株式市場と比べてみても、わが国の株式市場の不振は際立っているように思います。例えばニューヨーク・ダウの昨年高値からの下落率がおおむね15%で済んでいるのに対して、日経平均の昨年高値からの下落率は30%を超えています。
日本株の極端な不振は、次のような原因があります。
- 輸出主導の経済回復が個人消費の拡大につながっていない経済ファンダメンタルズの弱さ
- 円の対米ドルレートの高騰
- 原油を始めとする資源価格の高騰など
しかし、より直接的には「株式需給の悪さ」が大きく影響していると考えられます。
振り返ってみると・・・
日本の金融機関が不良債権処理に追われて株式の保有をなかば強制的に縮小せざるを得なかった2002年〜2003年春にかけて、日経平均は下落を続け2003年春には7,607円にまで下落しました。
銀行等が保有株式を売るという「需給悪化要因」によって、株価は全体としてファンダメンタル・バリュー(経済実態を反映した株価水準)を下回る水準にまで売られてしまったといえます。当時の株価下落は、最終的にりそな銀行への公的資金注入という政治決断を受けて止まりました。
現状の需給悪の原因は・・・
主として外国人投資家の売越し基調です。2003年春に至るまで日本の金融機関が日本株を売却した局面で、買い方に回ったのが主として外国人投資家だったわけですが、彼らはその後も積極的に日本株を買い続けました。特に2005年夏以降は小泉政権の改革路線への期待もあって、大幅な買越しを続けました。
その結果として保有が過大となり昨年来の世界的信用収縮過程で保有している日本株を売却せざるを得なくなってきたのではないかと考えられます。
- 東証一部株式の保有主体構造の推移

当面は売り圧力にさらされるが、立ち上がりの局面ではこんな銘柄に注目
当面の日本株相場を見通すと・・・
率直な私の見方では、以下のような理由から売り圧力にさらされながら進む相場となるだろうと考えています。
- 外国人投資家の売越し基調に起因する需給の悪さ
- 経済ファンダメンタルズの不透明
- 企業収益の減益懸念等が消えないこと
そして、この傾向は今後数ヵ月は続くかもしれません。
しかしながら、個々の銘柄を見ると、現在の企業収益力が持続するとすれば、十分に割安な株価水準に到達していると考えられるものが多いと思われ、個々の銘柄ごとに順番に大底を確認して出直って行く展開となるでしょう。したがって、向こう数ヵ月〜1年をかけて徐々に株式ポートフォリオを構築していく運用を始めるならば、非常に魅力的な相場局面と言えるのではないかと思います。
市場ごとに相場状況を分析すると・・・
東証一部市場については昨年の夏ごろを直近のピークとしてその後下落という推移になっています。これに対して、ジャスダック、マザーズ、ヘラクレスなどのいわゆる新興市場は、2006年初頭の「ライブドア・ショック」以降下落相場となっています。
しかしながら、新興市場は東証一部市場よりも先に調整局面を脱するのではないかと考えます。
というのも、特に市場参加者の構成を見ると、現状では東証一部市場は外国人の売買シェアが恒常的に過半を占めるという状態になっています。これに対して新興市場では、依然として個人が売買において主導権を持っています。
今後数ヵ月間は外国人の売越し基調が続くと想定すると、東証一部市場の株価立ち直りは相対的に鈍いものとなる恐れもあります。その間にすでに先に調整を終了した新興市場が上昇に転じる可能性を考えておいてもいいかもしれません。
経済ファンダメンタルズを見れば、日米の金利差の縮小などから円高傾向を想定せざるを得ないわけですが、いわゆる新興市場に属する企業の多くは内需に依存するものであり、円高がむしろメリットとなるタイプの企業群となっています。このことも相場立ち直りの順番を想定する際のポイントとでしょう。
本格上昇への条件
需給の改善
日本株全体としての上昇には需給関係の改善、特に外国人が持つ過剰保有分の解消がもっとも重要です。
2007年3月末時点の東証調べによると外国人は金額ベースで日本の上場株式の28%を保有しています。これらのうち、どれくらいが「過剰分」か明確に示すことはできませんが、2000年3月末時点では外国人の保有は約20%くらいでしたから、その後、主に小泉郵政解散後あたりまでに買った分の8%くらい(時価総額400兆円水準での買いとすると、30兆円程度)を「過剰」だと仮定することができるでしょう。その約8%分を以下のセクターが買うことで、過剰の解消に向かうと考えられます。
- (1)自社株買い→企業による消却
- (2)個人の買い
- (3)M&A(企業の買収・合併)による買い
おそらく、これから来年〜再来年あたりに向けて、上記の買い手が外国人の過剰保有分を吸収して行くのではないかと考えています。実際、既に自社株買いについては、昨年あたりから年間5〜6兆円規模で実施されています。
また、証券税制の優遇策等の対策が採られることも望ましいと思いますし、日本企業の柔軟性、強み、業績の良さ等を個人投資家が認識することも重要な相場上昇の条件となるでしょう。
日本の柔軟性
アメリカ発の金融混乱を見ると日本経済の先行きに懸念を持たざるを得ない状況ではあるのですが、日本の持つ柔軟性を評価すれば先行きを過度に悲観する必要もないのではないでしょうか。
企業の柔軟性の例としては、「卸売業と不動産業に注力してニッチもサッチも行かないように見えた総合商社が資源利権を獲得し、流通の川上と川下を総合的に支配することで収益力を向上させた」とか、「トヨタがグローバル化で巨大企業になった」というように大企業でも潜在的に機動性を持つ企業が存在します。
経済そのものの柔軟性では、非正規雇用の活用によるコストダウン(社会的には不人気な傾向にあるようですが)などを柔軟性の具体例として挙げることができるでしょう。
日本株が総合的に考えて歴史的な低評価水準にあることは確かだと思っています。数年後の株価本格回復を期待して、今後数ヵ月〜1年をかけて日本株のエクスポージャー(持ち高)を徐々に高めて行くことが妥当な投資行動であろうと考えています。

- 証券アナリスト 松下 律
- 日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。1976年から四半世紀にわたって国内系及び外資系運用会社でアナリスト、ファンドマネジャーを歴任した後、現在は証券アナリストとして個人投資家向けの情報提供を中心に活動。著書に「年金がわりの株式投資成功法」(講談社、2001年)、「決算書を見れば『儲かる株』は見分けられる」(共著、こう書房、2002年)、「定年族のための株式投資術」(PHP研究所、2005年)がある。現在、衛星放送チャンネルBS11の番組「TOKYOマーケットTODAY」で木曜日のメイン・キャスターを務めている。
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