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2008年8月現在
デフレ環境から急激な物価上昇不安へ・・・。日本経済はこれからどうなってしまうのか。不透明な経済環境のなか、「それでも、日本経済が世界のナンバーワンへ返り咲く道はある」と証券アナリスト・戌渡(いぬわたり)氏は語ります。
日本経済「失われた時代」の道筋を振り返り、今後どのような環境になれば日本の経済復活の土壌が整うのか、氏の展望を4回にわたってお届けします。 日本株への投資を考えている方に必見のコンテンツです。
日本経済はガラパゴス?!

恐竜を例に挙げるまでもなく、地球環境が大変動を起こしたときに、生存戦略を変えることができなかった生き物は滅び、順応できた種だけが残った・・・。そして、新しい環境にマッチした姿に転換した種は、繁栄し勢力を拡げ、たくさんの子孫を残してきました。
各種報道で取り上げられているように、世界の経済環境も、日本が「デフレ・失われた時代」で停滞している間に、大変動の時代に突入しました。
日本だけが、ガラパゴス諸島のゾウガメたちのように、国内要因にばかり目を向け国内の環境に合わせた経済行動に偏っている、世界の大変動に取り残され、保護されることを頼りに生きる「世界遺産」になってしまうかもしれません。
今回のシリーズでは、世界の環境変化のさまざまな側面に焦点を当て、国が、企業が、個人が、投資家がどのような生き残り戦略を描けるか、そしてこの変化をバネに成長・飛躍戦略にシフトできるかを考えたいと思います。
- ガラパゴス諸島
- 南米エクアドルの西約900kmの太平洋上に浮かぶ19からなる火山群島で、ガラパゴスは「ゾウガメの島」という意味です。
1978年に世界遺産(自然遺産)として登録されました。「ガラパゴス」という言葉は、特定の分野で外部と隔絶された地域を指す比喩として使われることがあります。 このコラムでは、世界経済が大変動の時代に突入するなか、「失われた時代」として停滞する日本経済の状況を「ガラパゴス」と表現しています。
環境の変化
世界と日本の経済がどのような変化をたどってきたかを簡単に振り返ってみましょう。
冷戦=イデオロギーの戦い → 経済の戦いの時代へ
日本がバブルのピークを迎えた1989年にベルリンの壁が崩壊し、世界中の国が、武力ではなく経済成長を競う、いわば「資本主義のワールドカップ」で戦う時代に突入した。
1990年代 旧東欧諸国と発展途上国による低賃金・低価格輸出の時代 =ディスインフレの時代
その結果、旧共産/社会主義各国は、まずは安い労働力を活かして安価な工業製品の輸出で外貨を稼ぐ戦略をとった。これは日本の高度成長期の戦略と同じである。
それが非常に多くの国と地域で行われたため、世界的な大増産とディスインフレと言われる工業製品の大競争時代が訪れた。
1990年代後半から2000年代 新興国経済の興隆
これらの国々は新しい産業で外貨を稼ぎ、GDPが成長し、金持ち層が誕生、庶民も生活水準が向上している。
2005年ごろから 新興国経済の成熟化
大競争の結果、あふれかえる工業製品は先進国だけでなく、新たに購買力を獲得した新興国でも大量に消費されるようになり、サービスや食料も大量かつ高度な消費が始まった。
2005年ごろから 新興国による資源の需要拡大
結果的に、「資本主義の工業製品ワールドカップ」に続いて、資源・エネルギー・食料の争奪戦も本格化している。
| 1980年代 | 1990年代 | 2000-2007年 | |
|---|---|---|---|
| 世界の競争 | 冷戦時代終盤 | 経済の時代 | ディスインフレ経済から 資源獲得競争時代へ |
| 資本主義 VS 社会・共産主義 レーガノミクスの勝利 |
旧東欧/途上国などが安い労働力を武器に西側経済にキャッチアップ | 新興国が豊かになり、消費が活発化。 資源の需要急増・高騰 |
|
| 経済成長年率 | |||
| 世界平均 | 3.2% | 2.9% | 4.0% |
| 日本 | 3.8% | 1.5% | 1.7% |
| 先進7カ国 | 2.9% | 2.5% | 2.0% |
| 旧ソ連諸国 | 3.5% | -4.8% | 7.3% |
| 新興国 | 3.5% | 3.3% | 6.3% |
| 先進7カ国 | 第二次石油ショック後の 不況から立ち直り |
冷戦後のディスインフレの メリット謳歌 |
インフレのない(2%以下)のちょうど良い経済から、 資源競争へ |
| 日本 | 「ナンバーワン」経済から バブルのピークへ |
バブル崩壊・金融不安(不況)・デフレへ | デフレから、低空飛行の成長・回復期へ |
| 途上国 | 冷戦の影響で、経済よりも政治の時代 | 工業製品等の輸出加速。 技術・資本の導入。 |
貿易黒字国の急増 豊かさを実感 消費拡大 |
(経済成長率のデータは、IMFデータベースによる)
もっとも注目すべきなのは、旧ソ連諸国です。1990年代は旧ソ連の崩壊で、10年間の平均年率マイナス4.8%の大不況でしたが、低い労働コストによる工場誘致など産業基盤の整備、西側資本の導入、エネルギー戦略への転換により、年率7.3%の奇跡的な急成長にシフトしました。
また、新興国も1990年代の低労働コスト・輸出競争時代から、産業基盤の拡大・国内消費者層の拡大により、高成長時代が始まりました。
それに対して先進国は2%台の安定成長路線で、円熟味を発揮(!)しますが、世界経済全体の伸びの中では相対的に地盤沈下が進行しそうです。
変化の中で、日本がおかれた立場は・・・
日本ではデフレ時代の記憶が強烈だったため、企業、政治家、役人、消費者の多くが、世界経済の環境変化を頭では理解してはいるものの行動の変化が伴っていないようです。デフレ恐怖症=企業防衛・批判回避・保身・生活防衛に意識が向いているため、長期の戦略的な対応が遅々として進まない状態がだらだらと続いています。そのことを日本の経済が「ガラパゴス化」していると私は表現しています。
もし、日本経済が外からの敵の侵入を心配する必要がなく、本当にガラパゴスの島のように世界経済から切り離された存在であれば、それでも生き残ることができるかもしれません。しかし、実際には絶海の孤島どころか、エネルギーの約96%、食料の約60%を輸入に頼っており、代表的な日本企業は輸出によって収益をあげているのです。世界的な資源の争奪戦や、世界経済の潮流の影響にもっともさらされている国であると言っても過言ではありません。
しかし、ここでお話ししたいのは、厳しい話ばかりではありません。変化する環境は、縮こまって動こうとしない動物・植物にとってはマイナスかもしれません。しかし、トンネルの先には輝く日本経済の出口の光が小さく見えてきています。日本経済にとって一見厳しく見える環境変化は、世界のすべての国にとっての環境変化です。「変化の一歩先を読んで行動する」それが日本経済がナンバーワンに復活するための鍵です。
次回は、「世界経済環境、特に新興国の経済変化は本物か?」という観点で見てゆきす。
3回目は、このような環境の変化と日本国内の経済のズレについて考察したいと思います。日本のガラパゴス経済のデフレと昨今の急激なインフレの背景を分析します。そして、最終回はいよいよ、ガラパゴス経済からの脱出の方策、日本がどうなればナンバーワンの地位を取り戻すことができるのかを提言していきます。
第2回 始まった、地球規模の「先進国化」
第3回 インフレは天使か、悪魔か?
最終回 ジャパン・アズ・ナンバーワンの復活
- 戌渡根児 氏 (いぬわたり・こんじ)
- 外資系証券会社などを経て、現在運用会社に勤務する証券アナリスト。資産運用業界での経歴は20年を超え、機関投資家の資産運用のみならず個人投資家の運用についても造詣が深い。
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