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日本株特集! 注目したい日本企業のチカラ。

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脱ガラパゴス経済・・・ インフレは天使か、悪魔か?

2008年10月現在

ここまで見て来た地球規模の経済環境変化=「40億人の先進国化」に対して、今回はいよいよ日本にとっても最も大きな問題と考える「デフレによるガラパゴス思考」に焦点を当てます。

この原稿を書いている9月前半にかけて大きなニュースがいくつも飛び込んで来ました。福田首相の辞任、米国大手金融機関の破綻・・・。 これまで日本経済にとって追い風だった海外の景気が逆風に転ずるリスクが出てきました。このリスクの中で、日本経済を成長軌道に戻すには、強いコミットメントが必要になります。ガラパゴス思考から脱出して輝く日本の未来につなげるための岐路に立っているといえると思います。。

インフレは天使か、悪魔か?

インフレは天使か、悪魔か?

ピークよりはだいぶ下げたものの、世界的にエネルギー価格は大幅に上昇し、輸入する資源・原材料価格や食料・穀物価格も数年前に比べると数倍という水準です。そして日本のインフレ(物価上昇)率も前年比で2%(総務省発表)を超えてきました。テレビのニュースショーでは「インフレが市民生活に襲いかかっています!」とプロレス中継のように絶叫するキャスターもいます。

年率2%というインフレ率が先進国でも、世界全体で見ても最低水準であることを、頭ではわかっています。しかし、コンビニエンス・ストアやスーパーマーケットに行くと、以前よりも値段が上がっていて、なんとなく損した気持ちになります。これは、私自身の中の、デフレに慣れた「ガラパゴス意識」です。

一方で、燃料や原材料価格が高騰しているのに販売価格が上げられなくて困っている生産者や漁業従事者、製造業の従業員がいます。これは他人事ではありません。

このインフレに対して、日本経済の処方箋としてはどのように考えればよいのでしょうか。

デフレは天使のふりしてやってきた

経済にとって良くないはずのデフレ(物価が持続的に下落していく現象)ですが、慣れてしまうと良いことのように感じてきます。それは物の値段が上がらないからです。そしてインフレと聞くと、「値段が上がらないというメリットがなくなってしまう」「困った」と、一般的な感覚では困惑してしまいます。

あらためて考えてみましょう。デフレ時代は本当に良かったのでしょうか?答えは明らかです。現象を振り返ってみます。

バブルがはじけた1995年ごろ大幅な円高がありました。その円高のおかげで安くなった輸入消費財をバーゲンの目玉として売る商売が当たりました。円高による「価格破壊」です。これが消費喚起のカンフル剤として、価格破壊=価格引下げが広がり始めました。これがデフレの始まりでした。

価格低下は庶民にとっては「心強い味方」。メディアも街の声を取り上げて歓迎していました。評論家なども評価する声ばかりだったと思います。当初は企業も「企業努力で価格を下げました」「雇用は守ります」と余裕がありました。

最初のうちは価格が下がると、安さで人気が高まり急に売れ行きが伸びます。しかし価格による競争は、他社も価格を下げたら元の木阿弥です。消費者の支持を取り付けるにはさらに価格を下げなくてはいけません。麻薬のような値下げ競争が続きます。天使のようにやってきたデフレは、この辺から次第に「悪魔の本性」を現します。

企業は競合他社に対抗して値下げするために、利益を削り、徐々に苦しい状況になりました。当時の経済・金融のさまざまな要因(バブル期の後遺症=3つの余剰=企業借入の余剰、設備投資の余剰、雇用の余剰)などもあり、コストカット、リストラが始まり、雇用が減り、賃金が減りました。雇用と賃金が不安定になれば消費を切り詰めます。そうして日本全体で売り上げが減る。売るためにさらに値下げ・・・。デフレ・スパイラルです。

この間、メディアで繰り返し報道されたのは「リストラに翻弄される家計」「大氷河期の就職戦線」「厳しさを増す日本企業」など。自分自身で経験しなくても、聞こえてくる厳しい現実に、将来に希望を持つことも難しい時期でした。デフレが解消したはずの今でも、政治、企業経営、庶民の心理などに深い傷跡を残しているように思えます。

それでは、インフレは天使なのか?

もし、給料が1980年代のように毎年2〜4%上昇するとしたら、年率2%のインフレはどのくらい大変でしょうか? 別に大変じゃないですよね? 賃金の上昇で稼ぐお金が増えれば、インフレで支払うお金が増えても余裕があるし、安心して生活できます。日本の経済が目指さなくてはいけないのは、そういう状況です。そしてそれは夢でも何でもない、十分に可能な通常の経済です。)

下のグラフを見てください。1995年から2005年までの価格破壊、デフレは企業にとって苦しい時期でした。このため企業は生き残りのために、仕方なくコストや賃金を減らして、なんとか利益を捻出せざるを得なかったのです。

消費者物価と賃金の推移(年率変化%)

ここで、もう一度グラフをよく見てください。1982年〜1994年までは、緑色の消費者物価(インフレ率)と赤色の賃金の棒グラフは大体同じ方向に伸び、しかも賃金の方が長いという傾向が読み取れます。つまり、健全なインフレ環境下で製品の価格を引き上げることができれば、インフレ率以上に賃金を引き上げる、つまりベースアップが可能になるのです。

「しかし、賃金を上げたらインフレがどんどん上昇してしまう。」そういう心配をする人もいるかもしれません。でも、それは取り越し苦労でしょう。デフレから抜け出したばかりの日本経済の現状でそのような心配は、最低5年間は不要と考えられます。しかも、40億人の人口を持つ新興国が、日本をモデルに低賃金で高品質の製品を生産して追いかけて来ています(第2回をご覧ください。)。

新興国間でも競争が起きています。便乗値上げしようとしても、すぐに国内外の競争相手が競争を挑んできます。確かに、資源不足によるエネルギーや原材料の価格上昇はすべての国にとって共通の、インフレとなる要因ではあります。しかし、それを超える値上げは、なかなか難しい地球規模の大競争時代なのです。

インフレは時としてコントロールできなくなることもあり、一概に「天使」とは呼べないかもしれません。しかし、財政・金融を管理して一定の範囲内で落ち着いていれば、決して悪いものではありません。悪魔のデフレよりははるかに付き合いやすい相手でしょう。 デフレから脱出したばかりの日本では、年率数%のインフレはとっつき難い相手かもしれません。しかし、日本経済が自信を取り戻したときには、安心して付き合えるのではないでしょうか。

だから、ケインズ財政支出の出番です

だから、ケインズ財政支出の出番です

「給料が増えていないのに、インフレも値上げも絶対に困る!」それが庶民の本音ですよね。だからこそ、適切な財政政策が必要です。

さもなければ、給料が増えずに生活費が上がれば支出を抑えるしかありません。支出が減る=消費をしないということになると企業の売上げと利益が減って、賃金・雇用に悪影響が出ます。すると、景気の悪化で税収が減り、国の赤字がさらに増えます。これはインフレと景気後退が同時に起こる経済の悪病スタグフレーションです。

急いで適切な手を打たないと、せっかくデフレから抜けだしたのに、今度はスタグフレーションに突入してしまいます。

考えられる対策は景気刺激策の王道ともいえる「ケインズ政策」です。大きく分けると財政による景気の刺激と、個人所得の向上による内需拡大の2つが考えられます。以下、個人的な見解ではありますが、日本の例に当てはめてみたいと思います。

1. 財政支出の拡大
火が消えかけた日本の景気には燃料を与えるしかありません。企業の仕事を増やして、経済を活性化するのです。単なるバラマキや無駄な支出を削減するのは当然ですが、差引き総額(真水:直接的に経済効果のある部分)では5〜10兆円単位の追加的な将来を見据えた財政支出を実施する必要があります。
2. 賃金ベースアップの復活
インフレ率を上回る収入増があれば安心して生活できます。インフレを恐れる必要もありません。賃金上昇を浸透させましょう。ここまで史上最高の利益を稼いできた日本企業です。賃金を支払う余力は十分にあります。従業員にお金が回り、安心が広がると、食品も衣料も工業製品も買うゆとりが増えます。
3. 恒久減税
減税も庶民の懐を暖めます。皆が安心して支出を増やせるようにするには、一過性ではなく恒久減税にすべきです。少なくとも数年間続ける必要があります。その間の財源が必要であれば、国債の発行という手段で補うことが考えられます。
4. パート・契約雇用の正社員化の推進
若年層のパートや契約雇用などの非正規雇用の身分の不安定さは、将来の生活設計を難しくし、結婚や出産、子育てをあきらめることにもつながり、社会の不安を増加させます。勤労意欲や、技術・能力の獲得意欲もプラスに働きません。高齢化で今後労働力が不足する日本にとって、貴重な労働力が無駄に失われています。正規雇用を求める20歳代〜30歳代への就労支援、再就職教育支援をさらに強化すべきです。
5. 適正値上げの浸透 
中小企業や個人事業主は、燃料・原材料価格の高騰を製品・サービス価格に転嫁できずに赤字倒産が増えています。健全な資本主義のためには競争の健全性を保つ必要があります。適正値上げを拒む行為を監視・取り締まる制度が必要と思います。

20世紀の初めに、ケインズ政策の有効性を先進国は学びました。景気減速時の歳出削減と増税は、江戸幕府が繰り返した経済政策の失敗を現在に蘇らせるものです。みんなで我慢する倹約は小さな藩の政策としては正しくても、国家の経済政策としては良くない選択肢です。成長軌道にもどる日本の未来像を描くための、大胆な戦略が求められています。

それだけでガラパゴス経済から脱出できるの?

長く続いたデフレ状況の中での内向き・後ろ向きのガラパゴス思考、ガラパゴス経済から脱出する方法を、デフレとインフレをテーマに検討してきました。

地球規模の環境変化を考えると、単に普通の経済に戻すだけでなく、進行中の環境変化を逆手にとって、新たな競争力を獲得する方法があるはずです。景気回復のためのケインズ政策=財政支出をそのような分野に活用できるはずです。例えば・・・

  1. エネルギーを作り出す
  2. 食料を作り出す
  3. 機能的・効率的な国土活用
  4. 高度防災生活基盤の実現
  5. 高齢者が活動的に暮らせる生活基盤・都市環境の整備
  6. 成長を続ける新興国経済のニーズへの対応

現在の日本が抱える諸問題は、新興国が先進国に追いつく流れの中で、将来、地球上のほとんどの国々が遅かれ早かれ共通に抱える問題になります。日本の国と企業が問題解決のために積極的に投資して技術とノウハウを導き出せば、日本企業が世界に売り出す新たなビジネスチャンスが生まれます。

「脱ガラパゴス経済」 次回(最終回)では世界経済の大きな潮流変化の中での、日本企業と日本経済の成長戦略を考えてゆきましょう。

第1回 日本の採るべき選択肢
第2回 始まった、地球規模の「先進国化」
最終回 ジャパン・アズ・ナンバーワンの復活

戌渡根児 氏 (いぬわたり・こんじ)
外資系証券会社などを経て、現在運用会社に勤務する証券アナリスト。資産運用業界での経歴は20年を超え、機関投資家の資産運用のみならず個人投資家の運用についても造詣が深い。

株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品を説明するページをご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。


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