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中東欧は国の数が多いだけではなく、民族も多様であるため、多くの民族問題を抱えてきました。中でも多数の民族が混在しているバルカン半島は「民族の火薬庫」と表現され、この地域の民族問題が二度の世界大戦のきっかけとなった或いは利用されたといっても過言ではありません。
ヨーロッパの安定には、この民族問題の安定を図ることが必要です。
ただ、民族問題というのははデリケートな話題であり、書き物として著すには気が引けますが、中東欧を考える上では。避けて通ることのできない問題ですので、あえて触れてみたいと思います。
ハンガリーは人口1,000万人ほどの中規模の国であり、主要民族はマジャール人です(民族、言語的にはこのような言葉を使います)。
第一次大戦前、マジャール人はオーストリア・ハンガリー帝国の支配民族の一翼を担っていました。しかし、第一次大戦で敗戦すると帝国の領土が大幅に縮小され、多くのマジャール人が現在のルーマニア、スロバキア、セルビアなどにとり残されました。このため、周辺諸国のマジャール人は支配民族から一転、少数民族の悲哀を味わうことになりました。
現在ルーマニア西部のトランシルバニア地方には、ルーマニア全人口の7%にあたる約100万人のマジャール人が住んでいます。モントリオールオリンピックで活躍し、「ルーマニアの妖精」と賞賛された体操のコマネチ選手もこの一人です。
また、スロバキアでは人口の約1割がマジャール人ですが、90年代にとられた民族主義政策により、マジャール語教育が否定され、スロバキアとハンガリーとの間で軋轢が生じる結果となりました。
東欧や旧ソ連には、ユダヤ、ジプシー(ロマ)という国をもたない民族も多数居住しています。彼らは過去に大変な差別を受け、ナチスによる大量虐殺という悲劇も生まれました。現在のヨーロッパはナチス否定の上に成り立っているとはいえ、まだまだ偏見は残っているようです。日本人が中東欧で生活する場合、この話題には気をつけたほうがよいでしょう。
ニューヨークで爆発的にヒットした有名なミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」をご存知でしょうか。これは19世紀ウクライナのユダヤ人の生活が描かれているミュージカルです。ニューヨークにはユダヤ人街、通称リトル・オデッサ(※1)がありますが、ニューヨークで、このミュージカルが爆発的にヒットした理由のひとつは、このリトルオデッサなどニューヨークに住むユダヤ人の心を掴んだことにあるといえるでしょう。
※1:オデッサはウクライナの黒海沿岸の港町です。
バルカン半島にある旧ユーゴスラビア諸国ではいまだに民族問題が深刻です。とりわけ、米軍の空爆まで招いたコソボの多数派アルバニア人の独立問題や隣のボスニア・ヘルツェゴビナの複雑な民族争いなど、旧ユーゴスラビアの民族問題には未だ解決の糸口がみつかりません。日本のマスコミではとりあげられませんが、大きな火種が残っているのです。
しかし、これらの民族問題を先鋭化させないため、EUの中東欧拡大に伴い内外での努力が続いています。EU加盟にあたって、隣接国の民族問題の解決が大前提になっていることもその一つですが、問題の根底には貧困や格差の問題があり、単純な道筋ではありません。しかしながらEU拡大は民族問題解決の壮大な実験でもありますので、期待をもって見守りたいと思います。
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