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ダーチャ(Дача)は、「別荘」を意味するロシア語です。日本では「別荘」を持っている人はそれほど多くないと思いますが、ロシアのダーチャは一般庶民にも身近な存在となっています。まだソ連時代だった1960年代以降に、当時のソ連政府が一般庶民にもダーチャの保有を認め、土地を配給したためです。最近の各種世論調査によると、ロシア全国の都市に暮らす世帯の40%近くが郊外にダーチャを保有しているといわれています。さらに、建物はないが郊外に土地だけ持っている世帯を含めると過半に達するといわれています。
ただし、ロシアのダーチャは、日本人が抱く「別荘」のイメージからはややかけ離れたものとなっています。最近は、ロシアでも富裕層が増加しているので、プール付の豪華な別荘も登場してきていますが、一般庶民が保有しているダーチャは、大抵が手作りの質素な木造小屋で、電気はかろうじて通っているケースが多いものの、上水道設備があるのは全体の4分の1程度となっています。また、下水道にいたっては整備されているケースは極めて稀です。したがって、トイレは普通、汲み取り式となっています。ちなみに、私が訪問した知人のダーチャのトイレは、「ポリバケツ式」でした。
このように、ロシアのダーチャは、極めて庶民的なものなのです。
ロシア人がダーチャを利用するのは、原則、春から夏にかけての暖かい時期です。この時期の毎週末にダーチャに出かけるというのが、最も一般的なダーチャの利用方法となっています。このため、春から夏にかけての時期、モスクワなどでは、金曜日の夕方はダーチャに向かう車で郊外方面の道路が大渋滞になります。逆に、日曜日には都心部方向の道路が大渋滞となります。郊外電車でも同様の現象が観察されます。日本のお盆やお正月の帰省ラッシュに似たような現象が、週末ごとに起こっているのです。
ダーチャに到着してからの過ごしかたは人それぞれで、読書にふける人もいますし、スポーツに興じる人もいます。ただ、ひとつだけ、老若男女の別なく、ほぼ全員がダーチャで共通に行う作業が存在します。それは家庭菜園での畑仕事です。ほとんどすべてのダーチャには家庭菜園があり、野菜や果物の栽培が行われているのです。家庭菜園といっても、結構本格的なものであり、そこで育てられた野菜や果物は、それぞれの家庭で消費される他、近所や友人におすそ分けされます。その他、中には、道端などで、家庭菜園で育てたジャガイモやリンゴを売って小銭を稼ぐ人もいるようです。つまり、ダーチャはロシアの一般庶民にとって、貴重な食料供給源であり副収入源でもあるのです。ソ連時代末期やソ連解体後に経済が大混乱に陥ったにもかかわらず、ロシアの食料事情が意外に良好であったのは、このダーチャの家庭菜園のおかげだという説が有力となっています。ダーチャは、ロシア経済を支えるパワーの源のひとつなのかもしれません。
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