
ベトナムでは、著しい物価上昇(インフレ)が続いています。インフレの原因はベトナムの景気が良いことに加え、世界的に資源高が進んでいること、米ドルに連動しているベトナム通貨ドンが米ドルに引きずられて安価になり、輸入価格が上昇していることなどです。
今回のインフレはベトナム人の身近な所まで大きな影響を及ぼしています。例えば家計。ある家庭の1日の食費が1年前には5〜6万ドン(340円〜400円程度)あれば済んでいたところ、今では倍近くになっていて、事情を知らない夫と食品売り場で毎日頭を悩ませている主婦の間で喧嘩になったというニュースも出ているほどです。一般的な夫婦共働きのベトナム世帯からすれば、住居費と食費と子供の学費で、2人分の給料がなくなってしまうような状況です。
一方で、金利上昇も著しく、1月中旬に中央銀行がインフレ抑制のため、強力な金融引締め策を発表しました。基準金利が引き上げられた上、中央銀行が大量の国債発行を決定。市中銀行は割り当てられた国債を強制的に買い取るために大量の資金を確保しなくてはならなくなりました。このため、銀行間で預金獲得合戦が勃発し、預金利息が急上昇したのです。なかには13%以上の金利を設定する銀行も。
株式市場から資金を引き揚げて預金する人が出るようになって、株価下落の一因となりました。それに対して、中央銀行は預金金利12%を超える銀行には行政処分を行うとの異例の発表をしました。
インフレの波は不動産価格にも波及しています。ホーチミンの不動産価格は100uで1,700万円〜1,900万円前後で推移しており、ベトナムの庶民から見ればまさに高嶺の花となりつつあります。
また、工業製品にも同じようなことが。マンションの原材料となる鉄鋼や砂などを含む建設資材の価格は旧正月前(2月上旬)より20〜30%上昇しているといい、50%上昇した品目もあるとのこと。業者によっては販売価格をにらんで製品の売り惜しみをする代理店もあるほどで、今までは納品後の入金が可能だった物が、現在は入金を完了しないと物が受け取れないといった状態になっています。借入金利が17〜18%に達しているので、企業は簡単に資金調達ができず計画していたプロジェクトを遅らせる企業も出てくる有様です。

その他で打撃を受けているのは、水産に代表されるような輸出業者です。輸出企業の場合、コストはドン、売上は外貨(主に米ドル)ですが、中央銀行は市中に出回るドンの量を減らそうとしており、外貨のドンへの転換がしづらくなっています。
このため、外貨をドンに換えられない輸出企業は、新しい商品の買い付けや生産規模拡大のために、高利のドンを借り入れなければなりません。ところが、ドンの借り入れは非常に高い一方で、米ドル等外貨の預金金利はドンに比べ大幅に低い状態です。すでに締結した契約を実行するために、この高い金利差を支払うのもいたし方ないとして、赤字覚悟の企業も出てきたほどです。


さて、ここでこのような厳しい景気引き締め策と株式市場の関係を考えてみましょう。
一般的に景気引き締め策は、景気が実際にスローダウンし、インフレ懸念が収まるまで続けられます。したがって当面は引き締めの状態は続く見通しで株価への影響も続きそうです。
ただ、これまでに書いてきたように、引締め策の影響でプロジェクトを遅らせている企業がでてきているぐらいですから、景気のスローダウンから、そう遠くない将来に金融緩和方向に向かう必要性が出てくるものと考えられます。
また、もう1つのインフレの原因となっている物価高については、こちらも世界経済が減速してくれば需要の減退に伴って落ち着いてくるはず。米国株価の落ち込みを見ていると、それも遠い話ではないのではないでしょうか。
株式市場は旧正月明けから下落局面が続いており、VN指数はついに2007年3月の高値1,170ポイントの半分、573ポイントをつけました。
しかし、ここまでに書いてきたことを考えると、もうしばらく苦しい局面が続きそうですが、金融緩和、そして株価回復局面への出口も、まったく先が見えないというわけでもなさそうです。
株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品を説明するページをご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。
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