
去る2008年3月21日、新生銀行本店にてBRICSセミナー「世界を動かす新興国の未来を見つめて〜成長力と課題の挟間で」が開催されました。講師は田代尚機氏、須貝信一氏、門倉貴史氏のお三方。田代氏は中国、須貝氏はインド、門倉氏は新興国全般に精通する、BRICS投資の専門家でいらっしゃいます。
当日はセミナー開始前の控え室から、コーディネーターの大里希世氏を交えて、情報交換大会に。また、皆さんが実際に現地を訪れた際の興味深い体験談なども飛び出し、和気あいあいとしたムードでセミナー開始時間を迎えました。
現在の世界経済は、米国のリセッション(景気後退)という爆弾を抱え、BRICS諸国も成長鈍化が懸念されている状況。以前のような飛ぶ鳥を落とす勢いは影を潜めた感があります。しかしながら、専門家の皆さまに言わせると、BRICS諸国の成長は「まだ、こんなものでは終わらない」とのこと。ここでは、その根拠を大いに語っていただいたセミナーの一部をピックアップして、ご紹介いたします。
東京タワーと夜景を背景に、パネラーの皆さん![]() |
お試しいただいたインドのお菓子も好評(?!)![]() |
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直接的な影響はそれほどないと思われます。ただし、間接的な影響はあるでしょう。というのも、中国にとって米国は最大のお得意さまです。その米国が金融不安で景気後退となれば、輸出の伸びは大きく鈍化するでしょう。当然、その分、経済成長率は鈍化することになります。ハンセン指数、H株指数などは、昨年の秋以降、それまでの右肩上がりの上昇から一転、大きく調整しています(3月下旬時点)が、その要因のひとつは経済成長率が鈍化するだろうという見通しでしょう。しかし、サブプライム問題で中国の金融システム自体が揺らぐわけではありません。成長率は鈍化しますが、経済過熱に苦しむ中国にとって、それはむしろ好都合といえるでしょう。また、企業業績は伸び率が鈍化しますが、依然として国際比較として高い経済成長が続くことに変わりはないと思われます。いずれ投資家はそうした事実に気づき、株価は上昇基調に戻ると予想しています。(田代氏)
インドにもそれほどの影響はないと思います。インドは対米輸出がそこまで多くないので、中国よりもインパクトは小さかったと考えられます。インド政府は、民間最大手のICICI銀行が、サブプライム関連で2億6000万ドル強の損失を出したことを明らかにしていますが、欧米の金融機関に比べれば軽微なものに過ぎません。ほかにも、国内最大規模を誇る国営のインドステイト銀行をはじめ、ほとんどの銀行が無視できるような範囲内の損失にとどまっていますから、あまり影響はないように思います。(須貝氏)
対米輸出に依存している国は、米国のスローダウンでもろに被害を受けるでしょうが、ブラジルは近年対米輸出が徐々に減少しています。ブラジルに限らず、かつて「米国の裏庭」と呼ばれた中南米諸国は、全体的に経済成長が進んでおり、米国との結びつきが薄れつつあります。メキシコだけは例外ですが、他国は昔ほど米国の動向に左右されなくなっていると言えるでしょう。逆に、ブラジルは先般からのドル安・レアル高で対米輸入が増えていますから、サブプライム問題の深刻化でむしろ恩恵を受けたと考えられます。
ロシアにも多少の余波はありましたが、経済成長の妨げになるほどのものではないでしょう。それよりも、ロシアは産油国ということで、このたびの原油高により莫大な利益を得ていますから、基本的には順調と言えます。
南アフリカもサブプライム問題の影響は皆無でしょう。南アフリカはご存じの通り、金やダイヤモンドといった資源が豊富な国ですが、原油は輸入に頼っているため原油高による経常赤字が膨らんでいます。むしろ、こちらのほうがサブプライム問題よりも大きな懸念事項です。(門倉氏)
これまでの中国は外需主導で発展してきましたが、今後は、内需主導で発展する形へと経済構造が変化するでしょう。そうした大きな変化の中で、特に有望な産業はインフラ関連です。中国は日本と違って、インフラ投資が活発で潜在需要も非常に大きいと思います。たとえばエネルギー関連では、電力そのものが不足しています。しかし、燃料となる石炭もそれを運ぶ鉄道網も十分ではありません。鉄道網に関しては、貨物、顧客の輸送量も大きく不足しており、現在、全国レベルで、鉄道の敷設が急ピッチで進められています。 また、経済成長とともに所得が増え、消費力の高い中間層と呼ばれる人々が増えてきました。消費関連産業が今後大きく伸び、経済を牽引するひとつの柱となるでしょう。
【中国】GDP経済成長率
出所:Bloombergのデータをもとに新生銀行作成
上記グラフは過去のデータであり、将来の成果を予測、保証するものではありません。
| よく北京オリンピック後に中国経済は失速するのでは…といった質問を受けますが、オリンピックというのは2週間限りのお祭りに過ぎないものです。確かに1つの節目とはなるでしょうが、オリンピック後にも中国はやるべきことをたくさん抱えています。オリンピックを超える大きなプロジェクト、たとえば中西部地域、東北地方、渤海経済圏などで非常に大規模な開発計画が進行しております。オリンピック後に一時的な消費の伸び悩みはあるかもしれませんが、経済全体に与える影響は軽微でしょう。長期的には足元のインフラ整備を牽引役に、中国は高成長を続けるでしょう。(田代氏) | 2008年北京オリンピック会場 ![]() |
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| 撮影:2007年8月29日 |
インドはGDPのほぼ半分がサービス業という、新興諸国の中でも稀有な国です。その代表例がソフトウェアのアウトソーシングサービス。ソフトウェアの技術者不足に悩む欧米諸国は、かねてから英語が公用語であるインドに開発をアウトソーシングしてきた経緯があります。
【インド】GDP経済成長率

出所:Bloombergのデータをもとに新生銀行作成
上記グラフは過去のデータであり、将来の成果を予測、保証するものではありません。
<インド> 道路工事中![]() |
ただし、近年になって雇用吸収力の弱いITセクターに代わり、製造業へのシフトが課題となっています。当面は製造業が発展できるようにインフラを整備する必要があります。これについては、政府主導で民間を活用した『インフラ投資』が経済を牽引する時代が続くと思われます。自動車産業などありますが、製造業全般的にまだまだこれからです。ただし、2億人とも3億人ともいわれる中間層の拡大により経済はさらにスケールを増していくと思います。 |
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| 中国と同じようにインフラはまだまだ不足しています。特に電力不足は深刻で、まだ原発100基に相当するくらい足りないとか。国策として大型の電力開発計画が進んでおり注目を集めています。(須貝氏) |
ブラジル、ロシア、南アフリカに共通しているのは、いずれも資源国であるという点です。この3カ国に限らず、新興国の多くは資源の輸出を拠り所に成長しています。ブラジルは鉄鉱石をはじめとする多くの資源を有していますし、ロシアは原油、南アフリカは貴金属の生産地として知られます。前述しましたが、いずれも今般の資源高による恩恵は莫大なものです。
<ブラジル> カラジャス鉱山![]() |
<ロシア> 油田掘削装置![]() |
ただし、実際にはどの国も、輸出より内需の伸びが成長の原動力となっています。ブラジルでは白物家電の売れ行きが絶好調ですし、ロシアなどは今や消費が世界一活発な国になりました。特に自動車販売数が伸びていて、日本車を含む外車も飛ぶように売れています。南アフリカもやはり消費の伸びが顕著ですが、近年は全人口の約6割を占めるという黒人の社会進出が進み、「ブラックダイヤモンド」と呼ばれる黒人中間層が増えているそうです。この層からの需要が少なからず貢献していることは確かでしょう。つまり、この資源高が終息しても、この3ヵ国の成長がストップする可能性は低いということです。(門倉氏) | <南アフリカ> 経済の中心地 ヨハネスブルグ![]() |
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先日、チベットで暴動事件が起こりました。私はその直後に中国本土を訪れていますが、マスコミはこの事件をまったく報道していませんでした。こうした報道規制をはじめ、他の先進国とは異なる特殊な部分が現在の中国には依然として存在しています。高成長の持続には国家の安定が欠かせません。少しずつ民主化、自由化していくことが重要です。共産党体制が一度に崩壊するということはないにせよ、幹部の腐敗、内外の民主化運動の高まりなどによって、徐々に弱体化してしまうリスクはあるでしょう。(田代氏)
インドは新興国の中では例外的に、目立った資源がありません。もちろん原油も7割以上輸入に頼っているため、貿易収支、財政収支は原油価格の動向に大きく左右されるでしょう。また、隣国のパキスタンとの間には、長きにわたって未解決のカシミール問題という火種が介在していることから、テロや暴動が起こる可能性も少なくありません。いまだ8億人の貧困層を抱えているため、先進化にはかなりの時間を要することも覚悟すべきでしょう。(須貝氏)
ブラジルは財政再建の途上にあり、資金不足の状況。そのため、インフラ整備に手が回らなくなっている部分がネックです。
ロシアは先日の総選挙で、プーチン路線を継承するメドベージェフ氏が新大統領に就任したことから、目先の政治リスクは解消されたと思われます。ただ、人口の減少などから、経済成長の鈍化リスクが懸念されているため、対策が待たれるところです。
南アフリカは正直に言ってリスクだらけの国。他のアフリカ諸国と同様に国民のHIV感染率が高く、治安にもまだ不安が残ります。インフラも不完全で、大規模な停電が頻発しているのが現状。もちろん、その分魅力的なリターンは期待できますが、それだけのリスクがあることは認識しておいてください。(門倉氏)
現在の株価は、香港、上海、深センの3市場とも調整段階に入っています。大きく上がったら大きく下がるというのは相場の鉄則ですから、特に異常な事態ではないと思っています。長期的に見れば、むしろ今は買い場ではないかと私は前向きにとらえています。(田代氏)
中国 上海総合指数(1997年12月末〜2008年2月末)
出所:Bloombergのデータをもとに新生銀行作成
上記グラフは過去のデータであり、将来の成果を予測、保証するものではありません。
世界的な株安で、過熱していたインド市場は多少落ちつきを取り戻しました。特にインフラ関連セクターなどは、割高と思われる水準まで値上がりしていたものの、ここへ来て適正水準まで調整しているように思います。(須貝氏)
インド SENSEX指数(1997年12月末〜2008年2月末)
出所:Bloombergのデータをもとに新生銀行作成
上記グラフは過去のデータであり、将来の成果を予測、保証するものではありません。
もともとブラジル株は中国やインドに比べて出遅れていました。最近多少上がってきたものの、まだまだ割安水準と言っていいのではないでしょうか。資源関連の大企業が多いため、これらが牽引役となって、株価は上昇していくと予想しています。
ブラジル ボベスパ指数(1997年12月末〜2008年2月末)

出所:Bloombergのデータをもとに新生銀行作成
上記グラフは過去のデータであり、将来の成果を予測、保証するものではありません。
ロシア株も同じく割安と思われます。現在、国内市場の拡充を図っている真っ最中で、海外に上場しているロシア企業も、そのうち国内市場に戻っていくかもしれません。銘柄の充実に期待大です。
ロシア RTS指数 ドルベース(1997年12月末〜2008年2月末)

出所:Bloombergのデータをもとに新生銀行作成
上記グラフは過去のデータであり、将来の成果を予測、保証するものではありません。
南アフリカの株価水準は、今のところ適正と考えられます。ただ、インフレ圧力が強まっていることもあり、株価にとっては重しになることもあるかもしれません。(門倉氏)
南アフリカ TOP40指数(1997年12月末〜2008年2月末)

出所:Bloombergのデータをもとに新生銀行作成
上記グラフは過去のデータであり、将来の成果を予測、保証するものではありません。