強気の発電会社、その秘密は政府の方針転換!
たとえばタタ・パワー(発電会社)では積極的な発電所の計画・建設を実施しています。今後、新しい発電所が次々に稼動、2006年末に2.7ギガワット(270万キロワット)の発電能力を2012年には4倍の10.3ギガワットに拡大する計画に沿って、着々とそれを実施しています。さらに主要な燃料の石炭についても、安定供給を確保するためにインドネシアの炭田開発に参加し、調達リスクの軽減を戦略的に進めています。
「そんなに電力需要は伸びるのだろうか?投資したけれど需要が追い付かなければ大変じゃないか?」そんな疑問がわいてきますよね。私もそう考えたので調べてみました。
インドの一人当たり電力消費は中国の約半分、日本の1割以下。ピーク電力の不足が10%以上あり、それがGDPを2%引き下げる要因になっているという分析もあります。 今までは、政府が電力を含めた、道路、鉄道、通信などの公益部門の方針・計画を策定して、設備投資を行っていました。
しかし、計画が非効率的であり、また財政赤字によってインフラ整備に足かせがはめられて、なかなか進まないという状況が何十年も続いてきました。 しかし2000年前後を境に政府の方針が転換しました。すなわち、民間がインフラ投資の主体となり資金調達をする代わりに、設備投資からの収益(たとえば道路の通行料)で資金を回収することを政府が容認・後押しすることになりました。その結果、政府の財政赤字そのものがインフラ整備の足かせではなくなり、加速が始まりました。2007年度から始まった第11次5ヵ年計画では第10次5ヵ年計画(2002-2007年度)に比べて倍以上の投資が見込まれています。
認可を受けて事業主体となった民間企業にとっては、資金回収までの行程に過当競争の心配が少ないことはメリットです。たとえば、タタ・パワーのようにインフラ投資を確実に実行する実力と実績が伴えば、事業リスクが小さく、大幅な成長の機会となっています。ちなみに、インフラ投資事業に関しては外資系企業も事業認可を受けることが可能で、最近の日本企業を含む事業体が主要幹線道路の整備事業を提案したと報じられていました。
強気の発電会社、その秘密は政府の方針転換!
ところで、インドは貧富の差が大きいと言われています。例えば70% の人口が住む農村部のうち、10% 程度の地域ではまだ電力が届いていません。また、電力が届いている地域でも貧しい世帯では電気を引くことができず、灯油ランプの生活をしているそうです。一説には国民の約半数が電灯のない生活をしているとか・・・。
しかし、そのような人達にも経済成長の恩恵が届いているという統計があります。 1983年の貧困比率44%が93-94年には 36%、1999-2000年26%と大幅に低下しているそうです(財務省「インド経済の諸問題と対印経済協力のあり方」2006年3月)。一人当たりの電力消費が中国の半分ですが、一人当たりGDPも中国の約半分というのは面白いですね。インドの現状を、中国の経済発展を10年ほど遅れて追いかけているようだという専門家もいます。
「経済発展や規制緩和が貧富の差を拡大させる」という論調が日本では多いのですが、インドの実情と経済発展に対する力強い対応を見ていると、経済全体が伸びると結果的に貧困層も富裕層もともに生活水準が向上するというのが実態に近いように思えます。日本のように、貧富の格差を縮めようとして規制や役人の関与で経済の活性化を抑えてしまうと、結局は貧困層、富裕層どちらも向上できずに、かえって経済の課題克服を困難にしている・・・それが、実は日本の低迷を長引かせている最大の要因のひとつのように思えてきます。
