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日本におけるインドビジネスの第一人者。銀行員時代のインド赴任経験などを活かし、1997年に株式会社インド・ビジネス・センターを設立、代表取締役社長に就任。日本企業のインド進出に対するコンサルティング、インドの業界調査などを行う。著書に『インドビジネス―脅威の成長力』(祥伝社新書)など多数。 |

| 2007の総括 キーワードは「逆転」。しかも再逆転の可能性は低い | ||
| インドの強み(1) 成長の大きな「伸びしろ」。経済発展のカギはインフラ | ||
| インドの強み(2) 民主主義と政治的安定が生むゆるやかで持続的な成長 | ||
| インドの強み(3) 質の高い人材と、豊富な労働力による層の厚さ | ||
| インドに投資する際のリスク 魅力と表裏一体の課題。「10年後のインド」を視野に | ||
インドだけでなく新興国全体にとっての2007年は、一言で言うと「逆転」の年でした。
経済面で象徴的だったのは、日本のある自動車メーカーの4〜9月期の日印での販売台数。インドでの販売台数(約33.6万台)が、日本国内の販売台数(約31.5万台)を上回るという「逆転」が起きました。そして昨年1月末には、インドの鉄鋼会社が欧州の鉄鋼会社を約1兆5000億円で買収するという、新興国と先進国という立場を「逆転」させてしまうM&Aなどがありました。
政治面でも新興国の影響力拡大は顕著で、これも一種の「逆転」と言えます。昨年12月のCOP13(国連気候変動枠組み条約・第13回締約国会議)では、インド・中国の積極的な参加がなくては温暖化対策が進まないことが明らかになり、今年1月にはフランスのサルコジ大統領がG8に中国やインドなど5カ国を加えG13にするのが妥当との見解を発表しました。 このように、世界の経済・政治は、新興国を無視できない状況となっています。かねてから新興国の影響力拡大は予想されていましたが、「逆転」という形ではっきりと表れたのが2007年という年でした。その上、新興国の成長可能性は十分あると期待されますから、これらの「逆転」が「再逆転」される可能性は低いのではないかと考えています。 世界経済の新興国への注目は日に日に高まっています。中でもインドに対する期待はたいへんなものです。その背景には、次のような理由が挙げられます。
インド経済が軌道に乗り始めたのは、ここ十数年以内のことです(図1)。

経済の自由化が1991年で、1998年の核実験に伴う日本などによる経済制裁が解除されたのが2000年と比較的最近です。そのため、経済成長の「伸びしろ」はかなりあると思います。 インドの経済計画の立案などを担当する計画委員会(委員長はシン首相)のアルワリヤ副委員長などは、「インフラさえ整えば、誘致活動などしなくても外資は自然とやってくる」と強気です。鉄道や道路、電気、ガス、水道などの設備といったインフラの整備は課題である半面、経済発展の起爆剤となります。そのため、政府はインフラ分野への投資額を今後5年間でGDPの9%にまで増やす意向です。現在、政府主導のインフラ整備プロジェクトが、インド各地で進められています(図2)。

インドと中国の比較で言えば、政治の安定度ではインドが勝ると言えるでしょう。インドは世界最大の民主国家(議会制民主主義)で、政治と軍治(事)が分離しています。選挙による政権交代はあっても、クーデターのような政治リスクが起きる可能性は極めて低いとの見方が一般的です。
一方、政治のスピード感は、中国よりもゆっくりとしています。それは、民主主義国家であることに加え、インドの政治、金融、経済などのリーダーが基本的に、「実力以上のことをやらない」という慎重な姿勢だからです。ですが、その慎重さが底力となり、持続的な成長のエネルギーにつながっています。2007年度、インドの予想経済成長率は約9%。その気になれば二ケタ成長も可能な潜在能力を秘めていますが、現実と将来を見すえた持続的な成長を重視していると見ています。
また、現在のインドは、経済成長に占める内需の割合が高いため、サブプライムローン問題のような国際金融市場の混乱が及ぼす実体経済への影響が比較的軽微なことも特徴の一つです。
多くの国際優良企業のトップをインド人が占めていることが、人材の質の高さを象徴しています。世界的な金融グループや飲料メーカー、IT関連の大企業などの経営者として多くのインド人が活躍しています。理工系人材の数の多さ、質の高さは特に有名ですが、他分野でも「国際的に通用する起業家を育てよう!」と、大学などは意欲的に取り組んでいます。親の教育熱もたいへんなものです。
人口の半分は25歳以下の若者で、その上、就業や技術の習得に非常に積極的です。日本のある自動車メーカーが、工場で働く技術者を養成する工業専門学校の入学希望者を募集したところ、定員60人に対し、なんと5000人の応募があったそうです。この層の厚さという点もインドの大きな魅力でしょう。
インドには、これまで述べたような魅力がある一方、表裏一体の課題もあります。インフラについては手付かずになっている部分がかなりあること、 人材については初等教育環境の整備と底上げ、産業については第1次・第2次産業の基盤整備と育成による生産性の向上と雇用創造などです。
これらの課題は、長期的展望の下で少しずつ解決に向かっていくと考えられますが、短期的にはリスク要因となります。従って、インド関連の投資信託などに投資する際は、短期の値動きに一喜一憂することなく、「10年後、20年後のインドという国と、その経済を丸ごと買う」という、長期のスタンスが大切だと言えるでしょう。