2024年以降の住宅ローン金利はどうなる?低金利時代が終焉する場合の対策も解説
更新日:2023年12月
2022年~2023年にかけて、日本を除く先進国では大幅な利上げが行われました。2022年1月時点のアメリカ、欧州、イギリス、オーストラリアの政策金利はほぼ0%近辺でしたが、この記事執筆中である2023年11月23日時点では、下記の表のとおり状況は様変わりしています。
2023年11月23日時点 | |
---|---|
アメリカ | 5.25%~5.50% |
欧州(ユーロ圏) | 4.50% |
イギリス | 5.25% |
オーストラリア | 4.35% |
日本 | -0.10% |
先進国が利上げをした主な理由は物価上昇を抑制することです。日本でも目に見えて物価が上昇してきたこともあり、多くの人が「日銀もそろそろ利上げをするのでは?」と思い始めていると思います。
仮に日銀が利上げに踏み切った場合、日本の住宅ローンの金利は今後、上昇していくことになります。そうなると、住宅ローンの新規の借り入れが減少していく可能性があり、その結果として住宅市場が冷え込むことが予想されます。
また、変動金利タイプの住宅ローンの金利が上昇した場合、既に住宅ローンを変動金利で借りている方の毎月の返済額が増加し家計を圧迫する可能性もあります。
このように、日銀の金融政策や金利の見通しは、これから住宅ローンを組む方、既に住宅ローン組んでいる方(変動金利で借りている場合)のどちらにとっても重要な関心事となります。
この記事では日本国内の住宅ローン金利を予想するために着眼すべきポイントと、金利が上がってしまった場合の対策について解説します。
目次
銀行の住宅ローン金利の決まり方
住宅ローンの金利には大きく分けて、変動金利と固定金利があります。一般的に、変動金利は日銀の政策金利の影響を受ける「短期金利」を元に決められます。一方、固定金利は10年物国債の金利に代表される「長期金利」などを元に決められます。
まず、銀行は短期金利または長期金利を参考にしながら、様々な金利タイプの基準金利を決めます。そして、多くの銀行では、基準金利から「引き下げ幅」を差し引くことで、実際に利用者が借りるときの住宅ローンの金利である「借入金利」が決まる仕組みになっています。
2024年以降の変動金利はどうなるのか
今後の変動金利の行方を予想するためには、引き下げ幅と日銀の政策金利に注目する必要があります。
まず、引き下げ幅については銀行同士の競争が続く限り高止まりが期待できます。住宅ローンは、銀行にとって、個人のお客さまに提供している重要な金融商品の1つです。
都市銀行や地方銀行だけでなく、ネット銀行も含めて顧客の争奪戦が続いており、一定の引き下げ幅は維持されるでしょう。仮に引き下げ幅が縮小された場合でも、既に住宅ローンを借りている方の引き下げ幅は変更にならないのが一般的です。
次に物価の情報を確認しておきましょう。総務省統計局が発表した2023年9月分の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は、前年同月比プラス2.8%となっており、実は、日銀の目標であるプラス2%を超えています。
しかも、年2%以上の物価上昇は一時的なものではなく、2022年中から継続的に起きている現象です。下記グラフからわかるとおり、総合指数、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数でも同様の傾向が見られており、データを額面通りに受け取るなら、「日本の物価上昇率は年2%に到達している」と解釈するのが自然だといえます。
この事実を見ると、「既に消費者物価指数は年2%上昇の目標を達成しているのに、なぜ2023年10月の金融政策決定会合で低金利の政策を変更していないの?」と疑問に思う人は多いと思います。
この理由は、まだ日銀は「物価安定の目標」が達成できたとは判断していないからだと考えられます。日銀が求めているのは、消費者物価指数が安定的に前年比2%程度上昇している経済です。
しかし、日銀の2023年10月31日版の経済・物価醸成の展望に書かれている政策委員の物価見通しは、下記の表のとおりになっており、2025年度の消費者物価指数は前年比2%を割り込む可能性があるものとされています。このことが、政策金利が据え置かれている理由だと考えられます。
【消費者物価に対する政策委員の大勢見通し】<>内は政策委員の見通しの中央値
消費者物価指数 (除く生鮮食品) |
消費者物価指数 (除く生鮮食品・エネルギー) |
|
---|---|---|
2023年度 | 7月時点 +2.4%~+2.7% <+2.5%> 10月時点 +2.7%~+3.0% <+2.8%> |
7月時点 +3.1%~+3.3% <+3.2%> 10月時点 +3.5%~+3.9% <+3.8%> |
2024年度 | 7月時点 +1.8%~+2.2% <+1.9%> 10月時点 +2.7%~+3.1% <+2.8%> |
7月時点 +1.5%~+2.0% <+1.7%> 10月時点 +1.6%~+2.1% <+1.9%> |
2025年度 | 7月時点 +1.6%~+2.0% <+1.6%> 10月時点 +1.6%~+2.0% <+1.7%> |
7月時点 +1.8%~+2.2% <+1.8%> 10月時点 +1.8%~+2.2% <+1.9%> |
2023年7月時点の物価見通しと比較すると2023年10月の物価見通しは上振れています。しかし、日銀の植田総裁は、2023年10月31日の記者会見で下記のように述べており、この上振れの原因は、日本における内部要因ではなく、外部要因によるものと判断しているようです。
消費者物価上昇率は落ち着くのか?
前述のとおり、「経済・物価情勢の展望(2023年10月)」を見る限りでは、日銀の消費者物価上昇率は2024年をピークに、2025年度は落ち着きを見せる予想になっています。では、日銀はどのような観点で消費者物価の先行きを見通しているのでしょうか。
それを理解する際に、ここでは「物価上昇の原因」に着目してみたいと思います。ここでは物価上昇の原因として下記2点を取り上げます。
【物価上昇の原因2点】
- 資源や原材料価格の上昇
- 賃金の上昇
資源や原材料価格の上昇
資源価格の上昇は、エネルギー価格の上昇に繋がり、消費者物価指数でいえば「総合」と「除く生鮮食品」の押し上げ要因になります。「経済・物価情勢の展望(2023年10月)」では「除く生鮮食品」の指数の見通しについて下記のとおり予想を出しています。
ただ、2023年9月時点の輸入物価指数(円ベース)は前月比+2.3%となっており、この上昇には、「石油・石炭・天然ガス」が前月比+1.52%の上昇が寄与しています。
同レポートでも、経済のリスク要因として下記の記述があります。
さらに、同レポートでは、物価のリスク要因として、下記の引用文のとおり、原材料コストの上昇を挙げています。
結局のところ、日本は、資源や原材料の多くを輸入に頼っており、為替動向も物価に影響するため、資源や原材料の動向を基に消費者物価上昇率を明確に予想することは難しいものと割り切るのが得策かもしれません。日銀は上記引用文と同じページで下記のような記述もしています。
今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。
日銀自体も相場変動については、先行きを見通すのが難しいと考えていることがわかります。ちなみに、日銀は、輸入物価の上昇が国内物価の上昇に波及する流れを「第一の力」と呼んでいます。そして、賃金と物価が好循環で回ることを「第二の力」と呼んでいます。次の項から第二の力の中心となる「賃金」について触れます。
賃金の上昇
賃金の上昇は、消費者物価指数に2つの意味で寄与します。1つは企業のコスト増として、もう1つは購買力の増加、すなわち需要の増加です。日銀は、賃金が物価にもたらす影響を下記のように発表しています。
今年の春季労使交渉は、ベースアップを含め、昨年を大きく上回る賃金上昇率となった。 適合的予想形成の強いわが国において、これまでの物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらしてきており、企業の賃金・価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きがみられ始めている。先行きについては、現実の物価上昇率がプラス幅を縮小していくなかでも、需給ギャップがプラスに転じ、企業の賃金・価格設定行動や労使間の賃金交渉が変化していくもと、見通し期間終盤にかけて予想物価上昇率が緩やかに上昇していくことで、賃金の上昇を伴う形で、物価の持続的な上昇につながっていくと考えられる。
一見すると、賃金上昇を伴う物価上昇が目前に迫っている印象を受けます。しかし、物価のリスク要因としては、下記のようなコメントもあり、国内の賃上げが継続的なものになるのかどうかは、日銀としてもまだ確信が持ててないようです。
今年の春季労使交渉では昨年を大きく上回る賃金上昇率となったものの、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く残り続ける場合、来年以降は賃上げの動きが想定ほど強まらず、物価も下振れる可能性がある。
ここまでの解説をまとめると、「資源や原材料の価格動向は、為替レートを含め、相場変動の影響を受けるため、日銀としても明確な予想をするのは難しい。」「国内の賃金上昇については、慣行の変化が確認できるまでは先行きは不透明な状態である。」ということになります。日本の労働者の賃金が上昇し、需要の増加により安定的な物価上昇が継続すれば、日銀が利上げに踏み切る可能性があることは、認識しておく必要があります。
固定金利はどうなるのか
固定金利についても、銀行同士の引き下げ幅競争が行われている点については変動金利と同じです。
しかし、変動金利と異なり、固定金利は2022年~2023年にかけて緩やかに上昇してきています。その理由は長期金利(10年物国債金利)の上昇にあります。
前述の通り、固定金利の基準金利は長期金利によって決まります。そのため、長期金利が上昇すると、固定金利も上昇します。下記グラフは、長期金利と住宅金融支援機構が提供する固定金利型の住宅ローン【フラット35】の金利を並べたものです。
【フラット35】借入金利の推移(最低~最高)令和3年4月から<借入期間が21年以上35年以下、融資率が9割以下、新機構団信付きの場合>
上記資料を基に筆者作成。長期金利は10年物国債の月末時点の金利を使用し、フラット35の金利は資料中の最低金利を使用している。
グラフからも、長期金利とフラット35の金利は概ね連動していることがわかります。一般的に、長期金利(10年物国債の金利)の変動は、債券市場に委ねられています。しかし、日本では日銀が、長期金利をコントロールしています。
この政策は、イールドカーブ・コントロールといわれているものです。日銀が10年物国債を買うことで、長期金利を一定の範囲に抑えています。2022年12月20日の金融政策決定会合までは、日銀は、長期金利の変動の許容範囲を、年0%を中心に年±0.25%としていました。
上記のグラフからもわかるとおり長期金利は、2022年中旬から、日銀が上限とする年0.25%近辺で推移していることがわかります。
しかし、2022年12月20日の金融政策でサプライズが起きました。日銀は、それまで年±0.25%に抑えていた長期金利の変動幅の許容範囲を年±0.5%に広げると発表したのです。
「長期金利は日銀が許容する変動幅の上限近辺に張り付いている」ということは、変動幅の上限を年0.25%から年0.5%に上げれば、長期金利が年0.5%近辺まで上昇することは、容易に想像できることでした。この日銀の発表を、多くの人は「事実上の利上げ」と受け取りました。
実際、上記のグラフのとおり、長期金利は2023年1月に、年0.5%まで到達しています。このことから、国債の金利は日銀の許容範囲の上限まで上昇する傾向があることがわかります。
そして、2023年7月の金融政策決定会合では、長期金利の許容範囲をさらに広げることを示唆する発表がされました。下記は2023年6月16日の金融政策決定会合後の公表文と、2023年7月28日のそれを並べたものです。
<2023年6月16日の金融政策決定会合後の公表文>
長期金利の変動幅を「±0.5%程度」とし、10 年物国債金利について 0.5% の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。
<2023年7月28日の金融政策決定会合後の公表文>
長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、 より柔軟に運用する。10 年物国債金利について 1.0%の利回りでの指値オペ を、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。
一見すると、長期金利の変動幅の許容範囲はそれまでと同じ「±0.5%程度」から変更がないようですが、指値オペを行う金利のラインが0.5%から1.0%に引き上げられています。この発表から、±0.5%程度という言葉は残っているものの、日銀の長期金利の変動幅の許容範囲はある程度は広がったと受け取れます。そして、先述のグラフを見ると、7月以降、長期金利は0.5% を突破し、1%に向けて上昇していることがわかります。
2023年10月31日の金融政策決定会合の内容
2023年10月31日の金融政策決定会合では、日銀の長期金利に対する政策はより柔軟なものになりました。下記は、2023年10月31日に日銀から発表された公表文です。
長期金利の上限は1.0%を目途とし、上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。
長期金利の上限とされる1.0%は「目途」となり、指値オペを実施する具体的な数値ラインの記載はなくなりました。1%という指値オペのラインを厳格にせず、指値オペをおこなう金利水準をあいまいにした、ということです。
このイールドカーブ・コントロールの柔軟化の根拠について、植田日銀総裁は、記者会見における質疑応答で下記のように述べています。
今回の措置は、先ほど申し上げましたように、内外の経済 や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、イールドカーブ・コントロールの運用において、柔軟性を高めておくことが適当との判断に基づくものです。現状において、 原則として毎営業日 1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなり得ると判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うことにしました。今後は 1%の上限金利のめどのもとで、大規模な国債買入れを継続するとともに、長期金利 の水準や変化のスピード等に応じて機動的にオペで対応することで、イールドカー ブ・コントロールを運用していくことになります。その際、買入れ額の増額や臨時買入れなどの対応は、1%を下回る水準で行うこともあると考えています。また必要 に応じて指値オペも活用することがあると思いますが、その利回りは金利の実勢等 を踏まえて適宜決定致します。長期金利の厳格な上限は設定しませんが、こうした 調節運営のもとで、長期金利に上昇圧力がかかる場合であっても、1%を大幅に上回るとはみていません。
上記の発言を理解する際には、「金融市場は公正に価格形成がおこなわれる場である」という前提を理解する必要があります。
日銀が債券市場において、指値オペをおこなう数値ラインを明確に約束してしまうと、債券市場の自由度が一定程度失われてしまうことになります。
指値オペ実施の水準が長期金利1%ラインで決まっている状態は、国債の価格が一定の水準以下に下がる可能性が極めて低いことを表しています。
金融市場は、「今後どのように変動するかわからない」という不確実性があるからこそ、公正な価格形成機能を持ちます。「日銀が長期金利1%のラインで国債を買う」と約束することは、市場から一定の不確実性を奪っているということです。
今回の日銀の金融政策の決定により、債券市場の不確実性、すなわち変動幅は以前よりは高まったと思われます。
ただ、これまで変動幅の許容範囲を広げる度に長期金利が上がってきた経緯を鑑みると、「日銀の今回の判断は金融引き締めの要素も含まれているのではないか?」と悩む人もいると思います。しかし、日銀は引き締めとは言っていない以上、拡大解釈をするのはためらいます。
今回、日銀が決定した「イールドカーブ・コントロール」の柔軟化については、「市場に公正な価格形成機能を持たせるために、金利を抑えつける力を緩めた」と解釈すると、合点がいくのではないでしょうか。
今後、日本国内の物価や賃金が安定的に成長する状態が恒常化すれば、日銀は債券市場への抑えつけを段々と緩めるものと思われます。その結果、債券市場の不確実性は伴うものの、正常な価格形成機能を取り戻していくでしょう。その後の長期金利の行方は、海外の債券市場の影響も受けるため、明確に予想することは難しいと言わざるを得ません。
安定的な物価上昇は実現するのか
ここまで述べてきたとおり、2023年10月31日時点の日銀の金融政策は、「短期金利はマイナス金利のまま、長期金利は市場への抑えつけを少し緩めた程度」という状況です。他国の中央銀行のように「利上げ」に動くのであれば、安定的な物価上昇が必要です。
では、安定的な物価上昇は日本でもあり得るのでしょうか。
安定的に年2%の消費者物価指数の上昇を実現させるためには、賃金の持続的な上昇が必要です。賃金が上昇することで、需要が喚起され結果的に物価上昇に繋がるからです。しかし、下記グラフを見てわかるとおり、日本の労働者の賃金は、ほとんど上昇していません。下落基調にあった賃金がやっと回復してきた、という程度です。需要が拡大することで結果的に物価が上昇する、といった好景気による物価上昇が起きるためには、日本の労働者の賃金がさらに上昇し続ける必要があります。
賃金上昇の持続性に注目
2023年の春闘においては、下記引用文のとおり、多くの企業が賃上げを実施しました。
平均賃金方式で回答を引き出した 5,272 組合の「定昇相当込み賃上げ計」は加重平均で 10,560 円・3.58%(昨年同時期比 4,556 円増・1.51 ポイント増)、うち300人未満の中小組合 3,823 組合は 8,021 円・3.23%(同 3,178 円増・1.27 ポイント増)となった。
しかし、このような賃上げが持続的なものになるのかはまだわかりません。日本の慣行が変わったとはまだいえないからです。
一方、岸田総理は2023年11月15日の政労使の意見交換で下記のように発言しました。
経済界においては、足下の物価動向を踏まえ、来年の春闘に向け、今年を上回る水準の賃上げの御協力をお願いいたします。
このように賃上げの気運が高まっていることは事実としてあるため、2024年の春闘の結果は注目に値します。
ちなみに、厚生労働省発表の有効求人数に対する有効求職者数の割合を示した「有効求人倍率」は、下記の表のとおり、コロナ感染の経済的影響が大きかった2020年から2023年にかけて上昇しています。このような求職者優位の売り手市場が続くことは、賃金上昇の追い風となる可能性はあります。
2020年平均 | 2023年9月 | |
---|---|---|
有効求人倍率 (含むパート) |
1.18倍 | 1.29倍 |
一般職業紹介状況(令和2年12月分及び令和2年分)について
一般職業紹介状況(令和5年9月分)について
金利が上がる場合の対策
ここまでの解説の通り、未来の金利を断定することはできません。ゆえに金利が上がってしまった場合を想定し、対策を取れるようにしておくことが大切です。金利上昇に対しては、以下の対策が考えられます。
- 繰上返済の資金を残しておく
- 借り換えを検討する
繰上返済の資金を残しておく
繰上返済は期間短縮型で行うと返済期間が短くなります。
住宅購入時には、手元の資金を頭金としてめいっぱい使ってしまう方が少なくありませんが、手元資金を残しておくと返済計画に余裕を持たせることができます。
借り換えを検討する
高い金利から低い金利の住宅ローンへの借り換えは住宅ローンの総返済額を減らす効果があります。
住宅ローンの返済時に金利が上昇すると影響を受けるのは、主に変動金利で借りている方々です。一般的な変動金利だけでなく、固定金利選択型で住宅ローンを借り、当初の金利引き下げ期間終了に伴い自動的に変動金利に移行されている人も要注意です。比較的高い金利に変更になっている可能性が高いからです。ご自身の借入金利を確認してみましょう。
適用されている金利が高いと感じる人は、より金利が低い住宅ローンに借り換えを行うことで、総返済額を下げられる可能性があります。
なお、住宅ローンの借り換えの際には、事務取扱手数料や登記関連費用などの諸費用がかかるので、それらを含めても経済的メリットがあるのかを確認しましょう。自身で計算が難しいと感じる方は、オンライン相談を利用するのもおすすめです。
また、事務取扱手数料には、定額型と定率型があります。SBI新生銀行では定額型の事務取扱手数料の住宅ローンを提供しています。このような住宅ローンであれば、比較的諸費用を抑えた借り換えができます。
借り換え時に団体信用生命保険を強化できる可能性がある
借り換えのメリットは、総返済額の削減だけではありません。団体信用生命保険(団信)を強化できることがあります。団信の保障内容は一般的に「死亡・高度障害」です。つまり、病気や高度ではない障害は保障されていないということです。
最近は、ガンと診断されただけで、住宅ローンの残債が保険金によって返済されるガン団信や一定の介護状態になった場合に同じく保険金で残債が返済される介護保障付きの団信も見受けられます。
現在借りている住宅ローンの金利が、高いと感じる方は借り換えによって借入金利を下げるだけでなく、団信を強化できるかもしれません。
金利が上がる前提でシミュレーションをしておく
金利が上がるか上がらないかをいくら考えても、答えは未来にならないとわかりません。
それならば、これから住宅ローンを借りる方は、金利が上がるのを前提に借入額や金利プランを検討しておけば安心です。
金利が上がった場合を想定してキャッシュフロー表を作成する
金利が上がった場合の家計の収支を予測するためには、キャッシュフロー表を作成しておくことが有効です。キャッシュフロー表とは、収入と支出と貯蓄額を時系列で年表にしたものです。
変動金利で借りる方は、金利が上がった場合にどれだけ収支が悪化するかを確認することができます。
固定金利で借りる方は、変動金利で借りた場合と比較することで、固定金利の選択が合理的なのか否かを判断できます。例えば、変動金利で金利の引き上げがあった場合でも固定金利に追いつくほどの金利上昇でなければ、結果的に変動金利が有利だった、ということもあり得ます。
キャッシュフロー表を作成することで、感覚ではなく数字に基づいた選択ができるようになります。
住宅ローンシミュレーションを活用する
住宅ローンを取り扱っている金融機関のウェブサイトでは、住宅ローンシミュレーションを使うことができます。住宅ローンシミュレーションを利用することで、金利が上昇した場合に、どれだけ毎月の返済額が増加するかを計算することができます。
例えば、返済期間中に金利が1%上昇すると仮定した場合、返済開始から5年目で金利が上昇するのと、15年目で金利が上昇するのとでは、毎月の返済額の増加額は前者の方が高く、後者の方が低くなります。残債が多い時期ほど金利が上昇したときの毎月の返済金額の上昇幅が大きくなるからです。
住宅ローンシミュレーションを使えば、先に述べた繰上返済や借り換えによる経済効果も計算することができます。
固定金利と変動金利どっちが正解?
日銀は金融緩和を続けていますが、賃金上昇が安定的な物価上昇に繋がった場合、いつかは利上げの可能性があることは想定しておいた方が良いでしょう。このようにいうと、これから住宅ローンを借りる人は、固定金利を借りるべきか、変動金利を借りるべきか悩むと思います。一般的に変動金利の方が固定金利よりも当初の金利は低いですが、固定金利の安心も捨て難いからです。
固定金利タイプを選ぶ際には、途中から金利が下がるように設定されている「ステップダウン金利タイプ」を選ぶのも一案です。ステップダウン金利タイプであれば、固定金利の安心と、低金利のメリットが両立できます。もし、将来金利が上がった際には、変動金利よりも有利になる可能性がありますし、金利が上がらなかったとしても固定金利よりは有利になります。
最後に
先々の金利を正確に予想できない以上、金利水準が変わらなければ金利上昇リスクがない固定金利を選択したいというのが本音だと思います。
しかし、実際に住宅ローン金利の条件を見ると、固定金利は変動金利の数倍の利率に設定されている場合もあり、最終的には変動金利を選ぶ方が多いというのが実情です。
実際、日本の金利はバブル崩壊以降低下傾向にあるため、リスクを背負って変動金利を選んだ人が、結果的に低金利の恩恵を受けてきました。
「利率だけ見たら変動金利を選びたいところだけど、金利上昇の可能性は怖い」という人は、金利の低下が約束されているステップダウン金利タイプを検討してみると良いでしょう。
または、変動金利と固定金利を組み合わせるミックスローンも有効な対策です。自分では決められないという人は、銀行のオンライン相談を活用することをおすすめします。
- CFP(R)
- 1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品の商品説明書等をご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる元本割れなどの固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。
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- 借入期間は5年以上35年以内(1年単位)、借入金額は500万円以上3億円以下(10万円単位)です。
- 変動金利(半年型)、当初固定金利をご選択された方は、当初借入金利適用期間終了後、ご契約時の事務手数料に応じた変動金利(半年型)が自動適用となります。
- 変動金利(半年型)、当初固定金利を利用されている方は、金利変更時に当初固定金利タイプをご選択いただくことも可能です。ご選択にあたっては、手数料5,500円(消費税込み)がかかります。
- 各金利タイプは、金利情勢等により、やむを得ずお取り扱いを中止する場合もございます。
- SBI新生銀行ウェブサイトにて、借入金額や借入期間に応じた毎月の返済額を試算できます。
- 事務手数料は、定額型をご選択された場合55,000円(消費税込み)、定率型をご選択された場合、借入金額に対して2.2%(消費税込み)を乗じた金額となります。それ以外に抵当権設定登録免許税、印紙税*、司法書士報酬、火災保険料等がかかります。*電子契約サービスをご利用の場合、印紙税は不要ですが、別途電子契約利用手数料5,500円(消費税込み)がかかります。
- ご融資の対象物件となる土地、建物に、当行を第一順位の抵当権者とする抵当権を設定いただきます。
- パワーコール<住宅ローン専用>、SBI新生銀行ウェブサイトにて商品説明書をご用意しています。
- 当行の住宅ローンを既にご利用中のお客さまにつきましては、当行で借り換えをすることができません。
- 住宅ローンのご融資には当行所定の審査がございます。審査結果によっては、表示金利に年0.10%~年0.15%上乗せになる場合がございます。ご希望にそえない場合もございますので、あらかじめご了承ください。
[2024年1月22日現在]